女たちの官能の世界 『アデル、ブルーは熱い色』
鮮烈で激しい一つの恋の、始まりと終わりを描いた作品。
恋なんて、自分自身が定まらない多感な時期に、まるで事故みたいに起きたものこそ忘れられない。いい大人になってしまった後ふと思い返してみると、自身が成熟する前の時期のものが一番真剣だったし、そうならざるを得なかった。大人になってほんの少しだけマシに恋が出来るようになっても、どこか忘れられず心のどこかでずっと残ってる。あの頃のみずみずしいほど赤裸々な思いは、痛くて、その頃の自分に戻りたくはない。けれどもし戻れるなら、もっと違うやり方をしたのに。痛々しい、自分が未熟であるが故の恋。アデルにとっても強烈な出会いであり、その後の自分をすっかり塗り替えるような経験。アデルの気持ちを思うと、とても切なくなるラスト。
恋は性別を超えたもので、何ら違いはないものとして描かれている。男同士の恋愛はいくらでも描かれるのに、女性同士の恋愛なんてほとんど語られない。本当にマイナーなものだ。女性二人のセックスシーンは強烈にセクシーだった。「女性の官能というのは、男性より深いのだろうか?」という会話が出てくる。また男性による、「セックスしていると女性が、いつも別の世界に行ってしまうんだ」なんて言う台詞もある。“女性のオーガズムには終わりが無い”とはよく言われることだけれど、どんな違いがあるのだろう。
私も女性の官能の世界に興味を持ったことがある。まずファーストキスが女だった。「キスの練習」と称して、中学1年生の時にふざけて同級生とキスした。さらに二人目も女だった。中学3年生の時で、これまた仲良しの友達。その後、初体験をしてさらに何人か男との経験をした後、女性と寝てみたことがある。同棲中の部屋に泊まりに行くような間柄の親友で、彼女はセックスレスに悩んでいた。可哀想になって、何となくこちらから。興味があったのだと思う。彼女はセクシーな人だったし。さらにもう一人別の友人ともしてみたことがある。大学の卒業旅行の時に、女性8人で行ったのだけれど、中の一人がレズビアン行為に興味がある、と言い出した。私もある、経験もあるよと言った。2人部屋だったので、別の友人と部屋を変えてもらった。彼女はそう言えば、レア・セドゥみたいに、ボンヤリした顔のふくよかな肉体の持ち主だった。ガリガリで骨ばっかりの肉体の人だったら、興味が無かったかも。私は痩せていたけど。二人で、2晩連続一睡もしなかったな。3日目の完徹はさすがに辛かった。旅行中で朝から晩まで観光だったから。女性の官能について、少し分かった気がした。その後は経験はないけれど、一度バイセクシャルの人に口説かれたことはある。しなかったけど。
余計な話はさておき。女性の官能の奥深さは、誰しも疑問を抱くものだと思う。ここで描かれた性描写は、驚くほど生々しくて、よくぞここまでやったものだという強烈なもの。女性のセックスが、ただ単に男を欲情させるべく作られたものであってはいけなかったのだ。さらに、単に絵に描いた餅のような、抽象的なものであってはならない、そんな考えだったのだろう。私は支持する。女性の官能の奥深さ、これを単に美しいイメージ映像で捉えてはいけなかった。しかし、カンヌでこの功労者の女優二人から強烈にdisられた、ケシシュ監督。真理の瞬間を捉えるまで、執拗に追い続けたのだろう。だからこその苛烈な物語。
アデルが最後に来てたみたいな、フェルメール・ブルーの服が欲しくなったな。
’13年、フランス
原題:La vie d’Adele
監督:アブデラティフ・ケシシュ
原作:ジュリー・マロ 『ブルーは熱い色』
脚本:アブデラティフ・ケシシュ、ガーリア・ラクロワ
撮影:ソフィアン・エル・ファニ
キャスト:
アデル・エグザルコプロス(アデル)、レア・セドゥー(エマ)、サリム・ケシュシュ(サミール)、モナ・バルラベン(リーズ)、ジェレミー・ラユルト(トマ)、アルマ・ホドロフスキー(ベアトリス)他
関連記事
-
-
『キャロル』 女性の心理はファッションに表れる
行間こそ映像力!…と、最近思う。 物語の合間に立ち昇ってくる何か。 こ...
記事を読む
-
-
『三人の結婚』 恋愛はいつだって修羅場ゲーム
恋愛の駆け引きはゲームに見せかけて、真剣勝負。 ドワイヨンの恋愛活劇は...
記事を読む
-
-
『アタラント号』 夫婦は何かを乗り越えるべし
「映画史上の傑作」特集にて、ようやく鑑賞が叶った作品。何故見たかったか...
記事を読む
-
-
『コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って』 ロープウェイ映画の傑作
バフティヤル・フドイナザーロフの、『少年、機関車に乗る』に続いての長編...
記事を読む
-
-
『ラブバトル』 男と女はいつも泥沼
齢70歳にして、これですか〜… いやあ、フランス人はさすがだな! 私の...
記事を読む
コメント(15件)
前の記事: 嫌味の無い感動作 『あなたを抱きしめる日まで』
【TIFF_2013】『アデル、ブルーは熱い色』 (2013) / フランス
原題: LA VIE D’ADELE CHAPITRES 1 ET 2 / ADELE : CHAPTERS 1 & 2
監督/脚本: アブデラティフ・ケシシュ
原作: ジュリー・マロ
出演: レア・セドゥ 、アデル・エグザルコプロス 、サ…
初日に行かれたんですねー。
確かに、強烈を通り越して「苛烈」って表現がぴったりかも。
>私は支持する。
私もこれを支持しますね。女性の官能についてここまで切り込んで向かい合った作品ってなかった。
邦画ではまず製作不可能な領域でしょうし。よくぞここまで、という感じ。
rose_chocolatさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
邦画では無理…ですか。twitterで初日に鑑賞した人達が「ロマンポルノの方がずっと過激だ」と言ってる人が居ましたよ。私もその気持は実は分かるんですが…
ただ、女性目線での官能の表現が、「男性目線のものでない」表現になっているのは、この作品として大事なポイントでしたよね。そこを見誤ってはいけないと思う。
とらねこさん☆
どひゃーっ
衝撃告白ですねっ。
私はことその行為に関しては一歩引いたところでしか発言できないたちなので、何とも・・・ですが。
そういうシーンがとても長い作品と聞いてはいたけど、官能の世界が恋愛の奥深さとどこまでリンクしているのか、ちょっとだけ興味がわいてきました。
ノルウェーまだ〜むさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
クレイジーなこと書いてますよねえ…。
映画の感想で自分語りは、昔は結構いろんなこと書いてたんですが、最近はあまりしない方向になってました
なんか、映画って見た以上その人のものであり、どんな感想抱いてもいいじゃないか…
なんて思っているので(笑)。
時々、自分でも頭おかしいなーと思いますケド(爆)
『アデル、ブルーは熱い色』(映画)(2013)ー熱いじゃ済まない女と女、二人を分つものは意外にも…
『アデル、ブルーは熱い色』を観た。この映画は2013年カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を獲得している。その上、監督と主演女優2人それぞれに賞を送ったという …
アデル、ブルーは熱い色・・・・・評価額1700円
さらば、青春のブルー。
平凡な高校生アデルが、青い髪の美大生エマと出会い、人生を変える情熱的な愛を知る鮮烈なファースト・ラブ・ストーリー。
ジュリー・マロのバンデシネ「…
原作を先に読んでいたので、映画版には色々な意味でビックリ。
てっきり21世紀版の「ベティ・ブルー」を想像してたので。
これ映画と比べると凄く面白いです。
主人公はアデルだけど、おっぱいはレア・セドゥたんの方が好みでした(;´Д`)
ノラネコさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
原作のバンドデシネというよりは、ケシシュ世界になっているのでしょうね。
名前すら女優の名前に変わっていますしね。
フランス人のアートに関する思いを考えれば、原作にこだわる必要はないような気がいたしました。
『アデル、ブルーは熱い色』
例えば僕が車を運転している際、女子大生でも女子高生でも構いません。若い女性が道を歩いていたとする。すると知らず知らずのうちに僕の視線はその女性に向けられる。別に意 …
こんばんは!
何だか凄い告白をサラッとしちゃってますね(笑)。
僕は男と寝た事はありませんが、なんとなく最近映画の中でのセックスシーンを観ていると、女×女のセックスシーンが一番綺麗なように思えて仕方がありません。
「何故だろう?」と考えると、少し下品な表現になるかもしれません(まぁ、レザボアCATsならOKでしょ(笑)!)、僕は挿すという行為が苦手だという結論に至りました。挿すという行為には入れる側と入れられる側にどうしても上下関係の様な物が生じます。挿す、挿さないの主権は、基本的に男性が握っているわけです。
でも女×女の場合には、基本的に挿す行為は生じません(道具は別にして)。だからこそ、そこにあるのは純粋に「相手に触れたい」という気持ちが前面に出るように思うのです。 この映画のセックスシーンを観ていて「綺麗だな」と思ったのはその部分で、「好きなものに触れたい」という感情の高揚!
でもそれはごくごく自然な事ですし、汚らわしい事でもない。その部分こそ、この映画の愛の源泉なのではないかなと思ったなどと、したり顔で述べてみたり(笑)
下品なコメントと判断されれば削除OKです。でも、もし僕が女性に産まれていれば、レズビアンの素質があったのかもしれませんね(笑)
蔵六さんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
ものすごい告白をサラッとしてしまった訳ですが、皆さん綺麗にスル−されてます(笑)
マトモに向き合ってくださり、ありがとうございます。これだから、蔵六さんと話しているのが楽しいんですよ!
ブログを始めた当初もそうだったし、今でも蔵六さんと話すの本当楽しいな…
「挿す」行為の有る無し、なんですよね、実際。その辺に物足りなさを感じるのではないか、と思うのですが、実際どうなんでしょうね?
おっしゃる通りだと思います。ここに描かれた性描写、本当に汚らしい行為に全く思えないんですよね。
私から見ても、初めから終わりまで、美しいものにしか思えなかったです。
とらねこさん、こんばんは☆ 拙記事にコメありがとうございました。
で、、なんとなんと、経験アリなんですね、うらやましい~(爆)。
この映画を観て、「レア・セドゥとならできる! いやむしろ、したい!」と思ってしまった私です(笑)。アデル目線ですね。
経験ない自分が残念です。まぁ、今までそういう気持ちになったことがなかったから仕方ないのですが・・・。
でも、無意識に自分をヘテロな殻に閉じ込めてたのかも、とも思う。見えないバリアってありますよね。
世界はなないろ(虹色)に染まっていることに、もっと早く気付いていればなぁ。
真紅さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
やーん、今さら恥ずかしくなってきちゃいました。
へえ〜。真紅さん、アデル目線でしたか!。なんか、エマがいい具合に中性的で。彼女に憧れる気持ち分かりますよね。
ヘテロな殻に閉じ込める…そうかもそうかも。そういうのありますよね。
私の場合は、女の子ってイラつくことも多いかな。コイツ女っぽくないなってサッパリした女の子は好きなんです。やっぱり男が好きです!
【映評】アデル、ブルーは熱い色 [監督: アブデラティフ・ケシシュ]
90点(100点満点)
2014年4月19日鑑賞
ネタバレ注意
年に1〜2回出会っちゃう忘れられない衝撃作。激流のような感情だったり、心にぽっかりと深い穴があいたようだったり、そこには物語…