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嫌味の無い感動作 『あなたを抱きしめる日まで』

poster2我らが母“M”ことジュディ・デンチがとってもキュート。ジジババ映画と思うなかれ。意外にもしっかりしたストーリーで最後まで楽しめる。ヒューマンドラマなのだけれど、彼女の過去に関するサスペンス部分が、最後まで牽引していく無駄のない作りでした。

ジャーナリストのマーティン・シックススミスの書いた実話が原作。ジュディ・デンチ演じるフィロミナが50年離れていた息子を探すのだが、これを記事にするという条件でジャーナリストを辞めたばかりのマーティン・シックススミス(スティーブ・クーガン)に依頼する。ちなみに、スティーブ・クーガンは、製作ばかりでなく脚本にも携わっていたのね。

この先、ネタバレで語ります。***********

物語が進むうちに明らかになる、アイルランドにある宗教団体がアメリカ人に子供を売り飛ばしたという話は、ケン・ローチの息子、ジム・ローチ監督作『オレンジと太陽』と良く似た設定だ。こちらも力作だったのだけれど、『あなたを抱きしめる日まで』がよく出来ていた点は、キャラクター描写の力強さ。

元記者のシックススミスから見たフィロミナの第一印象は、お喋り好きな、いかにも俗物嗜好なオバサン。シックススミスの出身大学、オックスフォードとケンブリッジを一緒にして“オックスブリッジ”と覚えこんでいる(「ロマンス小説を読んで育った人がどんな風であるかがよく分かったよ!」)。私にとっても、彼女のいかにもオバサン的な性格が、もううちの母にソックリ!!で、少々うんざり。シックススミスの気持ちが分かるわー、と思いながら見ていたところ、そうした考えが間違いであったことが分かる。

クライマックスで分かるのは、キリスト教の尼僧院で立場の上であったシスター・ヒルデガードの性に対する厳格さ故の狭隘さ。そうした自分の罪を省みない彼女に対する、フィロミナの真にキリスト教的な許し。
その後のシックススミスの彼女に対する態度の変化がまた嬉しい。彼女の読んだ本の長い話を、「自分は読まないけど、話して聞かせて」。こんな細かな思いやりの出来る大人のオジサン、本当に素敵。

あと、“オックスブリッジ”の間違いをシックススミスが正す時、フィロミナが「そんなん知ったこっちゃないわよ! I don’t give a damn sh** …」と言いかけて、shitをshining shoesと言い換えてた。これがとっても可愛くて!こういうオバちゃんてとっても愛らしくてイイな。

’13年、イギリス、アメリカ、フランス
原題:Filomena
監督:スティーブン・フリアーズ
製作:ガブリエル・ターナ、スティーブ・クーガン他
製作総指揮:ヘンリー・ノーマル、クリスティーン・ランガン他
原作:マーティン・シックススミス
脚本:スティーブ・クーガン、ジェフ・ポープ
撮影:ロビー・ライアン
音楽:アレクサンドル・デプラ
キャスト:ジュディ・デンチ(フィロミナ)、スティーブ・クーガン(マーティン・シックススミス)、ソフィ・ケネディ・クラーク(若き日のフィロミナ)、アンナ・マックスウェル・マーティン(ジェーン)、ミシェル・フェアリー(サリー・ミッチェル)、バーバラ・ジェフォード(シスター・ヒルデガード)他

 

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コメント(1件)

  1. 映画:あなたを抱きしめる日まで Philomena デコボコ?コンビが辿り着く先は。

    アカデミー賞で、作品賞、主演女優賞、脚色賞、作曲賞にノミネート。
    イギリス映画ということもあって、当ブログとしてはノミニー止りと予想した。
    が鑑賞してみると、これはこれ…




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