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『お国と五平』『背徳のメス』

お国と五平

okunitogohei

これは面白かった!しかし面白さを説明するのがとても難しい。何気なく始まり、丁寧に2人の心理を追いながらも、いつの間にか引き込まれていた。後から考えるほどに味わい深い。谷崎潤一郎の戯曲が原作なのだけれど、これはすぐにでも原作が読みたくなってしまうなあ。DVDになっていないものにも、成瀬作品にはこのレベルのものがあるなんて。

お国(木暮実千代)は、未婚時代に友之丞(山村聰)という婚約者が居たが、彼の武士としての至らなさに愛想を尽かし、彼との結婚をやめ別の男、伊織(田崎潤)と結婚する。が、伊織は在る日友之丞により闇討ちに合い死んでしまう。武家のしきたりにより、その妻であるお国は、侍従として五平(中村雀右衛門(4代目))を連れ、仇討ちの旅に出る。が、お国が病に倒れた折、人一倍忠義深く丁寧に看病する、そんな五平といつしか恋仲になってしまう。

ロードムービーと言っていいのかしら。徒歩の旅だけれど、“仇討の旅”でありながら、2人が心を通わせて行く。2人の思惑が通い、そしてそのズレを丁寧に描写する。2人が通じ合ってしまうと、この旅の目的そのものから外れてしまう。「世間の道理」という「道」に背くことになる。道理を通すための旅が、道ならぬ恋を成就させる。2人のゴールが見えなくなり、道理を通そうとするほどに実は見えていくのが、お国という女のしたたかさ。また、お国の旦那・伊織を殺害した友之丞、彼は武家のしきたり“道”から、初めから外れてしまっている人物でもある。山村聰の何とも情けない武士が味わい深い。その彼もまた、旅に出た彼らの後を追ってくる。仇討ちの敵が逆にこちらを追うという逆三角形。

’52年、東宝
監督:成瀬巳喜男
脚本:八住利雄
原作:谷崎潤一郎
製作:清川峰輔、宮城鎭治
撮影:山田一夫
キャスト:木暮実千代(お國)、中村雀右衛門(4代目)(五平)、山村聰(友之丞)、田崎潤伊織(お國の夫)、三好栄子(お國の母)、藤原釜足(医者)他

 

背徳のメス

とある大阪の産婦人科の内部を描いたサスペンスフルなドラマ。院長(山村聰)がメスを取った手術で患者が死亡し、医療責任を問われる。運悪く死んだ女にはヤクザのヒモが付いていて、金をゆすってくる。その手術の副執刀であったのが、植(田村高廣)。女癖と酒癖が悪く、普段から生活態度に問題があるとして院内で嫌われている。
途中までは興味をグイグイ惹かれ、見ることが出来た。変わったドラマではあるけれども、なんとなく面白く見れてしまう力技がすごい。ただ、田村高廣演じる医師は当直の看護婦を犯すわ、院長は33歳の看護婦長を「オールドミス」呼ばわりしてイジメるわ、あまりにも酷い。これアメリカだったら、即セクハラ法で訴えられ、高額賠償金をふんだくられるレベル。まあそんなことを言っても仕方がないのですが…。

’61年、松竹
監督:野村芳太郎
脚色:新藤兼人
原作:黒岩重吾
製作:岸本吟一
撮影:川又昂
キャスト:田村高廣(植秀人)、高千穂ひづる(加納伊津子)、瞳麗子(有吉妙子)、久我美子(佐藤信子)、松井康子(大場綾子)、葵京子(葉月景子)、山村聰(西沢直之)、真木康次郎(事務員村上)他

 

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