rss twitter fb hatena gplus

*

ディズニー王権復古はすでに成されていた 『アナと雪の女王』

2014-03-14_2100あっまた風呂場で「ナーナーナー、ヘイヤ、ヘイヤ」と歌ってしまったぁ!「I can stand here」と「Here I stand」のところで足をバンっ!とやってしまうんですね。これ、楽曲が自然に耳について自転車に乗りながら、もしくは風呂場で気づいたら大声で歌ってる系。映像も音楽も素晴らしくって、特にチラチラ雪が降る表現なんかは、うわ~と感激するほどロマンティック。

でも、その前に。本編に入る前にまず感激したのが、短編の『ミッキーのミニー救出大作戦』。これ、何と2Dと3Dの戦いが見れるんですよ!ディズニーランドで未だに誇り高く置かれている、ウォルト・ディズニーの古典アニメ「ミッキーマウスシアター」を思い出させる2Dアニメで始まる出だし。いかにもクラシックのディズニーアニメが始まったと思ったら、なんとミッキーが3Dの世界(劇場の外)に押しやられてしまう!2Dと3Dを行ったり来たりの大ふざけ!この3Dの描写が見事で、思わずうわあ、と感激して口をあんぐり。その後は楽しくてあっという間に時間が過ぎた。まさにディズニーアニメ真髄の楽しさ、これは最高!個人的には、これまでの3D映画の中で一番のお気に入りになりました。(次は『ピラニア3D』)

こんな短編が初めにあるだけでも、いかにディズニーが本気でこの作品を世に送り出したかが分かる。ディズニーアニメ初のアカデミー賞でもあるし、アメリカの興行収入はトンでもない数字になっているらしい。おそらく世界で同じ現象なのかも。

ただ私に言わせれば、ディズニーお家芸のプリンセスストーリーの王権復古は、すでに2つ前の作品『プリンセスと魔法のキス』で成されていたんですよ。こちらはジョン・ラセターが携わって采配を振るったディズニー作品だったけれど、プリンセス物としてこれまでになかったヒネリはもちろんのこと、物語構成の複雑さと脚本の見事さで群を抜いているんですね。魔法のキスの「人違い」の効果も、まるでシェイクスピアかというほど見事な脚本で魅せた『プリンセスと魔法のキス』。こちらが思ったほど理解されなかったせいかその反省で、もっと分かりやすく王女設定にし、ストーリーを極めてシンプルにしたのが今回の作品、という印象がある。

さらに一つ前の『塔の上のラプンツェル』。孤独に閉じ込められた姫の冒険が始まる楽しさも、自分で力で世界に抜け出していく姫のオテンバぶりも爽快に描かれていた。ディズニーの時代に合わせてのプリンセスの変容という事なら、何も『アナ雪』に限った話ではなくもっと前から行われていた。もっと古くは『アラジン』で、ここで初めて肌の浅黒いプリンセスを描いたことに私はディズニーの時代開拓精神を感じ、感激したものだ。さらに、キーワードとなる“愛の新解釈”という点においても、ディズニーピクサーの『メリダとおそろしの森』に置いて、すでに行われていた。こちらでは、母と娘の葛藤が物語のキーワードになるという変わり種だった。

今回は、一番の念頭に置いて作られたのは「シンプルさ」に尽きると思った。大衆に理解され何より愛されることを第一の目標にして、冒険的プリンセス路線をギリギリまで分かりやすく配して作られているかのよう。おかげで物語には寓話性ばかりが際立ってしまった。物語の豊潤さよりも、説教臭さや象徴の分かり易さが目につく作りに思えた。本格的なミュージカルっぽさを抑えているのも見やすくするためか、おかげで何より際立つのはレリゴーソングなのだった。れりごー…れりごー…あ、吹替の方は松たか子と神田沙也加の歌が人気らしいっすね。

’13年、アメリカ
原題:Frozen
監督・脚本:クリス・バック、ジェニファー・リー
製作:ピーター・デル・ベッチョ
製作総指揮:ジョン・ラセター
原案:クリス・バック、ジェニファー・リー他
音楽:クリストフ・ベック
歌曲:ロバート・ロペス、クリステン・アンダーソン=ロペス
キャスト:クリステン・ベル(アナ)、イディナ・メンゼル(エルサ)、ジョナサン・グロフ(クリストフ)、サンティノ・フォンタナ、ジョシュ・ギャッド(オラフ)、神田沙也加アナ(日本語吹き替え)、松たか子エルサ(日本語吹き替え)、ピエール瀧オラフ(日本語吹き替え)

 

関連記事

『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン

心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む

『君の名は。』 スレ違いと絆の深さとピュアピュア度合いについて。

今夏の目玉映画として期待されていた訳でもないだろうに、残暑の中、なんと...
記事を読む

『ファインディング・ドリー』 冒険も人生、帰ってくるも人生

『ファインディング・ニモ』は当時大好きな作品だったけれど、最近はピクサ...
記事を読む

『パディントン』 心優しき子ぐまの冒険

大人も童心に戻って楽しめるファミリームービーで大満足。めちゃめちゃ笑っ...
記事を読む

イジー・トルンカ『真夏の夜の夢』 陶酔!夏の夢まぼろし

イジー・トルンカの長編「真夏の夜の夢」 (1959年/73分) 今回初...
記事を読む

3,735

コメント(5件)

  1. 『アナと雪の女王』(2013)

    アンデルセンの『雪の女王』は読んだことないし、実はどんなお話かも良く知らないのだけれども、このディズニー製のアニメが全然違うお話を組み立てているだろうことは想像に難くな…

  2. ディズニーの1本前、2本前などなど、見ていないので比較できないけど、すごくよかった。好きです。
    やっぱり、レリゴーの歌がいい。
    あとでトラバります。

  3. 「アナと雪の女王」

    あーもー、好きだ! 完璧に好きだ!

  4. ボーさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    ボーさん、だいぶ気に入られたご様子ですね!
    前作の『ラプンツェル』も、すごく人気なんですよ。twitterなんて、今日はラプンツェルだらけ。民放でかかってたらしく。でも肝心の歌の部分はカットだったそうですけど。
    機会があったら是非見てみてくださいませ!

  5. 映画:アナと雪の女王 Frozen  王道路線と思わせつつ「現代」な味を加え、新しく魅せる。

    アンデルセン「雪の女王」をベースにした、ディズニー最新作。
    このため、王国・プリンセス・魔法・幽閉 etc.. とオーソドックスな展開が前半にずらっと(笑)
    あっそういうことね、…




管理人にのみ公開されます

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)


スパム対策をしています。コメント出来ない方は、こちらよりお知らせください。
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...

【シリーズ秘湯】乳頭温泉郷 鶴の湯温泉に泊まってきた【混浴】

数ある名湯の中でも、特別エロい名前の温泉と言えばこれでしょう。 乳頭温...

2016年12月の評価別INDEX

年始に久しぶりに実家に帰ったんですが、やはり自分の家族は気を使わなくて...

とらねこのオレアカデミー賞 2016

10執念…ならぬ10周年を迎えて、さすがに息切れしてきました。 まあ今...

2016年11月の評価別INDEX & 【石巻ラプラスレポート】

仕事が忙しくなったためもあり、ブログを書く気力が若干減ってきたせいもあ...

→もっと見る

【あ行】【か行】【さ行】【た行】 【な行】
【は行】【ま行】【や行】 【ら行】【わ行】
【英数字】


  • ピエル(P)・パオロ(P)・パゾリーニ(P)ってどんだけPやねん

PAGE TOP ↑