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『神は死んだ』 ロン・カリー・ジュニア


ニーチェに始まる哲学論争「神は死んだ」から120余年。哲学的過ぎることも宗教的に過ぎることもなく、軽妙でありながらそれなりの重みのある良い著作だった。訳者の語る、「ある時はカーヴァー風のリアリズム、またある時はヴォネガット風の近未来SF」が的を射ている一節。神が死んだ後の終末的世界として、SF的でもホラー的でも無く、オムニバス形式で語られる。ガラっと変わる文体のおかげで、まるで短篇集であるかのようにサクサクと楽しめた。

米ブッシュ政権当時のパウエル国務長官が登場し、映画の中のサミュエル・L・ジャクソンを気取るシーンなど、この作品が小難しい文学作品では決してないことが伺える。ダルフール地方の紛争区域に、若いディンカ族の女性として登場する神。神はただ、無力だった。かの喪失が悲劇として扱われる雰囲気は一片も無し。

神の居なくなった世界では、人が子供たちに未来を見るためか、子供を崇拝してしまう。それを禁じる法律が施行され、人々がそうした行為に陥らないよう、カウンセラーが憎まれ役として町の人々から疎まれるという一遍もあった。「偽りの偶像」。そこではアメリカ社会のイジメの深さも感じて心底恐ろしかった。人々の憎しみの根が深く、殺される前にすんでのところで人生から逃げ出すカウンセラー。子供のカタログを所持するという法律を犯し、刑務所に入れられるというやり方で。

「神を食べた犬へのインタビュー」は中でも一番面白く読める一遍だった。神を食べたことから高次の意識を持つようになり、人間と会話が出来るようになる。そうした高次の意識が犬としての本能を欺くため、犬として生きるのも本当は辛いが、人間に崇め奉られるのも何かが違うと考える犬。

 

2014/03/20 |

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