アイディア一発勝負 『スノーピアサー』
「ポン・ジュノブランドであれば面白いだろう」と、ランニングタイムの3/4位まで、なんだかんだ言いながらずっと期待を持続させていたんですよ。「いつ面白くなるだろう…?」という疑問が、「あ、もしかしてこれ面白くならずに終わるかも」という不安にじわじわと侵され始め、「今回ばかりはハズレだったのか…」と実感。逆に考えれば、それだけ期待を持たせるポン・ジュノって今まで凄かったんだな。
アイディアだけで言えば本当に面白そうなんですよね。『ブレード・ランナー』を一つの列車に“閉じ込めた”、暴走機関車SF。“永久機関”て、“エネルギーを永遠にループし使用することの出来る、一つの完結した機関”として、科学の世界で言えば、「これが発見出来れば、世界が変わるだろう」と言われているものであるけれど、列車の車両自体にヒエラルキーがあるというのも面白いし。
結論から言えば、ポン・ジュノの持つ個性とハリウッド理論とが今回は噛み合わなかったか、彼の初めて手がけてみた“SF”というジャンルがそもそも合っていないのか、であると思う。それとも、原作のバンドデシネ(未見です)は、そのアイディアだけが面白いのであって、これを一個の長いストーリーを持つ物語にすること自体に無理があったのか。…原因はともかく、とにかくパッとしない映画でしたね。
アクションシーンに関して言えば、そもそもこれだけの狭い車内に、ゴチャゴチャと全員が一辺に暴れ出すなんて、それだけでも無理があったのでは。車内の人口が多すぎて、カメラが回ってもアクションするためのスペースも確保出来なそう。見栄えのいいアクションは撮れなそうなのに、見せ方にも工夫がないせいか、「あーまた始まった…早く終わらないかな」と遠い目になってしまいました。アクションシーンのカット自体がせめてもう少し面白ければ、もっと面白い映画に思えていたのかも。
細かいツッコミを考えれば数限りなく思いつくんですよね。そうしたツッコミを置いておいても、ラストにはとてもガッカリ。最後の車両で衝撃の事実が明かされるのだけれど、真実が明かされたところで、驚きがあるというよりは白けてしまった。
良かったのは、最近『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ』でも存在感を放っていた、ティルダ様。途中で似ているなとは思ったのだけれど、本気で全くの別人としか思えなかったので呆気に取られてしまいましたよ。
’13年、韓国・アメリカ・フランス
原題:Snowpiercer
監督:ポン・ジュノ
製作:パク・チャヌク、イ・テホン
原作:ジャン=マルク・ロシェット、ベンジャミン・ルグランド他
脚本:ポン・ジュノ、ケリー・マスターソン
撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:マルコ・ベルトラミ
キャスト:クリス・エヴァンス(カーティス)、ソン・ガンホ(ナムグン・ミンス)、ティルダ・スウィントン(メイソン)、ジェイミー・ベル(エドガー)、オクタビア・スペンサー(ターニャ)、ユエン・ブレムナー(アンドリュー)、コ・アソン(ヨナ)、ジョン・ハート(ギリアム)、エド・ハリス(ウィルフォード)
2014/02/07 | :SF・ファンタジー アメリカ映画, 韓国映画
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ポン・ジュノのファンなので、これ、ほんとにガッカリしました…。今回はハリウッドのシステムとうまく噛み合わなかったかもしれませんが、それにしてもひどい。
彼の映画は、エンタメとしても芸術としても予想を超えて満足させてくれますが、今回はどちらの意味でもガタガタな感じがしました。
これをほめてる人もいますが、全然共感できないです。
k.onoderaさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
これはさすがに誰しもつまらないだろう…と思いきや、意外に一部の人が褒めてるんですよね。
「世界観」だけで見れる人なのかもしれない、と思います。
自分の好きな世界観を打ち出してくる映画を、無条件で好きになってしまう人。そういう人には楽しく見れる作品なのかもしれませんね。
ところで、onoderaさんに提案なのですが、記事のINDEXを作りませんか?
もちろん、検索がついているのは分かっているのですが、
何の作品についてonoderaさんが書かれていらっしゃるのか知ることが出来る、「全記事ラインナップ」がINDEXであると便利かと思います。いかがでしょう!?
誰しもつまらないだろう(笑)
登場人物の感情と行動がうまくつながってなかったり、サスペンスも機能してなかったりして、観客が作品に入り込むことを阻害してましたよね。
その「世界観」も、個人的には、単純なのを通り越して子供っぽいと思ってしまいました。監督がハリウッド映画の観客の知性をかなり低く見積もってたのかもしれません。
INDEX…!一応目次ページはあるのですが、私のは記事タイトルが並んでいて、とらねこさんのように作品名が五十音順になってたりはしないんですよね。ああいうふうに作るのはなかなか難しいのでしょうか。
k.onoderaさんへ
こんばんはアゲイン♪
やっぱり、誰しもつまらないですか(笑)
なるほど「ハリウッドの知性を低く見積もっている」に納得です。
ポン・ジュノをアイドル的に好きで、彼の映画の悪口を言う気になれない人、だとか?
私はちなみに、「どの映画でもみんな制作側は本気で精一杯作ってるんだから、映画の悪口は言うべきでない」的無批判性や
「どんな映画も何かしら良いところがある、それを見つける私偉い」的淀長さんイズムが嫌いです(笑)
や、最近そんなものをtwitterで目にしてしまったもので…WOWOWぷらすとの人…
映画全ての和音順INDEXですが、あると便利だと思います。読む者にとってですが…
それほど記事数が多くない今のうちに、INDEX順にまとめておくと便利だと思います♪
簡単なやりかたですが、私はこんな風にやりました。
「全記事INDEX」のHTML(TEXT)を新しい記事にコピペし、そこからタイトル作品のみ残し、URL付きの状態であいうえお順に並べ直す。
これだけです。
他のタイトルが入っていたりして、残念ながらコードで簡単に抽出することが出来ないため、結局手作業するしかない。面倒ですよね。
こんばんは。
これは昨日観ようと思ってたけれど雪で予定くるいで観ることができませんでした。
↑のコメント
>「世界観」だけで見れる人なのかもしれない、と思います。
私がそのタイプです。
でも
>、「どの映画でもみんな制作側は本気で精一杯作ってるんだから、映画の悪口は言うべきでない」的無批判性や
「どんな映画も何かしら良いところがある、それを見つける私偉い」的淀長さんイズム
えーーーー!
そんな気づかい? 余計ですね。
そんなことやってたらいつまでたっても「邦画ってDVD待ちでいいわ」のままですよ。←私。
AnneMarieさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
んー、これどうでしょう、私は結構つまんなかったですよー。雪で見れなくなって正解だったりして!?w
☓☓味の羊羹だけは気に入ったんですけどネ
>そんなことやってたらいつまでたっても「邦画ってDVD待ちでいいわ」のままですよ。←私
私も最近そんな感じになってます。三池崇史は見に行く気マンマンなんですが。
あ、この映画は韓国&ハリウッド映画ですよ。
その2つ、私すっごい嫌いなんです。
何でもかんでも褒める人は、だんだん信用出来なくなっちゃいますよね。
『スノーピアサー』 2014年11本目 イオンシネマ名取
『スノーピアサー』 2014年11本目 ☆☆★ イオンシネマ名取
『グエムル』と『殺人の追憶』のポン・ジュノ監督がハリウッドへ殴りこんだ映画。
『グエムル』も『殺人の追憶』も …
こんにちは。
僕も全く駄目でした。
ポン・ジュノ監督なのに何故でしょう?
ソン・ガンホ兄貴があれだけしめてくれてるのに何故?
常に無批判は僕も反対です。
常に批判も反対ですけど。
一応、僕も「何かしら良いところ」は探すようにはしていますが、、やはりトータルで収支を出しませんとね。
そんな訳で、この映画は面白くないです。
アイデアはイイ。
監督もイイ。
俳優もイイ。
なのに何故この結果?
見た目の汚さは演出のうちで何とか納得出来たとしても、中身の汚さ、退廃ぶりや嫌味さが限界を超えていました。
列車のオチなんかドリフのコント・レベルですよね。
しんどかったです。
スノーピアサー
2014年3月11日(火) 19:10~ 角川シネマ有楽町 料金:1300円(ビックポイントカード割引) パンフレット:未確認 奇天烈な設定だけ 『スノーピアサー』公式サイト 地球温暖化を防ぐ…
「グエムル」を面白く作った奴なので、期待していたのですけどね。
奇天烈な設定が、十分に生かされない、半端な映画でした。
ただ、韓国の監督の近未来SFは、面白いのを観た記憶がないので、彼だけでなく、国的に苦手なジャンルかも。チャン・ドンゴンとトオルのなんて酷かった。
健太郎さんへ
こちらにもありがとうございます♪
私もこれはノレなかったですね…。でも、中には褒めてる人も居るんですけどね。その気持が全く分からないですね。
まあ最初の設定だけは面白かったとは思うんですが、それ以上何も活かしきれてはいないのがちょっと辛いです。
そうそう、面白い部分を見つけられないとつらいですね。
「収支が出ない」って言い方、面白いですね。
ソン・ガンホの使い方も正直、イマイチだったなあと思います。
本当、オチがガックリでした。
バラサ☆バラサさんへ
こちらにもコメントありがとうございます♪
アイディアだけは結構面白かったんですけどねえ
物語が進めば進むほど、眠くなりました。
韓国のSFは、駄目認定ですか。ふむ、私は『ロスト・メモリーズ』は見ていないのですが、これもつまらなかったんですね。
ホラーでは面白いのもあるのにね。
製作のパク・チャヌクは、ハリウッドデビュー『イノセント・ガーデン』ですよ、こちらはちゃんと面白く見れたハリウッドデビュー作なのになあ。
キム・ジウンの『ラスト・スタンド』だって、メチャクチャ面白かったですよね。
ポン・ジュノみたいな優秀な作家が何故、こんなにつまらない映画を作らなければいけないんだ!
遅くなってすみません。
コメントありがとうございます。
全くもって「そうなんです」よね。
監督はポン・ジュノ。これは楽しみ。
ソン・ガンホの兄貴も出てる。これも楽しみ。
設定もよさげ。楽しみ。
なのに何故この結果?
決算で赤字にするか、補正で「初めから計上しませんでした」にしなきゃいけないレベルですよ。
やはり、「見た目が命」のグラフィック・コミックを原作にしている時点で「察しろ」て事だったんですね。
健太郎さんへ
こんばんはアゲイン!
ソン・ガンホが最後に活躍してましたけど、こんなちょっぴりじゃ足りないですし、あんまり彼の役も大したことなくって…。
いやいや、グラフィックコミックを原作にすること自体は、何の問題も無いと思うんですよ。
設定自体は面白いですし、やり方次第だと思いますね。