ブラックミュージック好きにはオススメ! 『ソウルガールズ』
これは大好きでした!音楽映画はもうそれだけで感情が昂り、どこまでも盛り上がってしまう私だからかもしれない。それにしても、ここまでハマったのは久々でした。
音楽映画と一口に言っても、意外にこの作品に似た物を思いつくのは難しくて…それは、この作品を構成するいくつかの要素のせいかもしれない。成功物語は珍しいけれど、アボリジニの少女たちというのはまず聞かない。音楽グループが外国を凱旋するのは珍しくなくとも、それが戦争真っ只中、戦地への慰問だなんて…。いくら営業とは言え!。さらに、ブラック系音楽であると余計にポイントが高い気がする。心の奥底に直接呼びかけるような、ソウルミュージックの力!
そんなこんなでとっても独創的なのに、物語そのものはみんなが何度も見たことのある、成功物語なので、とても見やすい。人種差別だって同じ、何度も何度も目にした光景。何より楽しいのは、かかる音楽がみんなが知ってるアノ曲コノ曲、聞いたことのある音楽ばかりだってこと。それなのに唯一聞いたことのないアボリジニの音楽、これが心にズシーンと入ってきて、一番印象に残ったものとなった。こんなところもたまらない。
近年で一番この作品に似ているのは『ドリームガールズ』かもしれない(邦題も意識してるかも?)。こちらは私にとってイマイチだった。80年代のポップミュージックカルチャー、この辺の音楽に馴染みがない私には、少々退屈に思えてしまった部分があった。ディスコ調やポップな楽曲に興味がないせいかもしれない。『ソウルガールズ』の方は、心にガツンと来る黒っぽい音楽であるとか、もっと剥き出しの民族音楽であったり。だから私はこっちの方がずっと好きでしたネ。それからもっと重要なのは、ここで謳っている歌が、本当に聴かせる力をもったもので、何より“本物の響き”がある。これが私には重要だった。口パクでないのもいい。なんたって、冒頭のオーディションシーン『Today I Started Loving You Again』だけですでにボロ泣きでしたから。フォークソングを歌ってすら、あのグルーブ感が出るなんて!不思議だよなあ…。
キャストでは、何と言ってもクリス・オダウド!彼の子犬みたいな表情がたまらない(笑)。
それから、勝ち気すぎて可愛げのない女・ゲイルも、ドリームガールズと設定が少し似ているけれど、こちらはちゃんと物語としてフォローがあって、パズルのピースとしてきちんとハマっているところも好きだなあ。
ちなみにこの作品、町山の2013年ベスト10に入っていた作品。私は結構、町山のベストとは気が合う方なんですよね。いや、これ実はそれより前に見て、気に入ってしまったんだけどネ。
こちらは実際のサファイアズのCD。(クリックでアマゾンに飛びます)
Sapphires
’2012年、オーストラリア
原題:The Sapphires
監督:ウェイン・ブレア
製作:ローズマリー・ブライト、カイリー・デュ・フレズネ
製作総指揮:ワインスタイン兄弟、ベン・グラント他
原作:トニー・ブリッグス
脚本:キース・トンプソン、トニー・ブリッグス
撮影:ワーウィック・ソーントン
音楽プロデューサー:ブライアン・ジョーンズ(←なんと!)
キャスト:クリス・オダウド(デイヴ)、デボラ・メイルマン(ゲイル)、ジェシカ・マーボイ(ジュリー)、シャリ・セベンズ(ケイ)、ミランダ・タプセル(シンシア)、トリー・キトルズ、エカ・ダービル
2014/01/07 | :音楽・ミュージカル・ダンス ウェイン・ブレア, クリス・オダウド
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コメント(12件)
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とらねこさん☆
私もそうなの!ブラックなソウルミュージックも良かったけど、アボリジニの曲が、あとあとずーっと耳に残っていました。
あまり聞いたこと無い旋律なのに・・・
やっぱりそれこそが胸に響くソウルな曲だからかも?
子犬顔たしかに!(笑)
ノルウェーまだ〜むさんへ
おはようございます!コメントありがとうございました。
アボリジニの音楽が最高に良かったですよねー!あのシンプルな歌詞も、不思議と涙を誘われました。
胸に響く歌声ってありますよね。
キャストもすごく良かったと思うんです。本当に歌が上手いんですよね。それだけですごい説得力でした。
ショートレビュー「ソウルガールズ・・・・・評価額1550円」
歌声が紡ぐ、良き未来への夢。
1960年代末のオーストラリア。
虐げられた先住民族、アボリジニの女性たちによって結成されたボーカルグループ、“サファイアズ”を描く、実話ベー…
確かにタイトルは「ドリームガールズ」からインスパイアされているでしょうね。
ボーカルグループの話で、背景に人種差別があることも共通。
私はこの二本同じくらい好きだけど、やはりアボリジニの物語という未見性はインパクトありました。
子供たちの歌う冒頭のゴスペルがすごくよかったな。
ノラネコさんへ
こちらにもありがとうございます♪
女性ボーカルグループの成功物語ということでは『ドリームガールズ』を思い出しますが、こちらは商業音楽の業界裏話が一番のポイントで、人間関係の泥沼っぷりが見どころでした。正直、見てて疲れちゃったんですよ。
それに比べると、こちらの作品はグループ内の人間関係に亀裂は入っても、キツイ性格の長女を排除する方向性にはいかないですよね。それどころか気づけば彼女の話が中心に据えられていて、彼女に幸せが訪れることを観客は喜ぶことが出来る。これってとても大きな違いですよね。こちらはずっと爽やかに見れるところが私の好みでしたー。
拙ブログへもったいないコメントありがとうございました。
この映画の存在はとらねこさんの記事を読むまで知りませんでした。
「ブラック・ミュージック好きにはオススメ」との事で早速鑑賞。
今年は新作の映画も観て行こうという意味で、良いスタートです。ありがとうございました。
もう、何故だか解らないのですがデボラ・メイルマンに「ホの字」になってしまいました。多分ゲイル役限定のような気がしますが他にもこのアポリジニ女優さんの作品があるのなら観てみたいです。
とにかく、音楽とダンスが最高でした!
imaponさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
私の記事で観に行ってくださるなんて光栄です!
お、今年は新作映画も見に行かれる予定なんですね。私は逆にimaponさんの記事を読んでいて、『ディープ・スロート』、みっ見たい!ってなってます。そう言えばこの作品、この間見てたウッディ・アレンの『誘惑のアフロディーテ』にもこの作品のことがチラっと出てきましたヨ。何かと目にするタイトルかもしれませんね。
ゲイル役に惚れたのですか〜。私も調べてみたんですが、この人『裸足の1500マイル』に出てたんですね。TVドラマが多いみたいですね。
あとは、もしかしたら手に入るとすれば『監禁アマゾネス』
http://www.allcinema.net/prog/show_dvd.php?num_sid=787348
この『Mental(原題)』はトニ・コレット主演のコメディみたいなんですけど、これもソフト化されるのは難しそうですね〜。
http://www.youtube.com/watch?v=VnQPnXbj-RY&feature=youtu.be
とらねこさん、こんばんは。
この作品は清々しくて良かったですね。
活気のある歌声も素晴らしかったし、物語運びも上手かったですね。
オーストラリア映画は日本であまり入ってこないけど、良い作品が多いですね。
曲としては、ロネッツの頃の「ドリームガールズ」のほうが好きかもしれません。(元々、ソウルはそれ程好きでない。)
この映画がいいのは、ただのサクセス・ストーリーでないところです。アポロ劇場行かないで、故郷に帰ってくる。ダメ男ととともに。
ソウルガールズ
2014年1月19日(日) 19:05~ 109シネマズ川崎4 料金:1000円(ポイントカード会員感謝の日) パンフレット:未確認 ミニ「ドリームガールズ」は、サクセス・ストーリーでなく、…
BCさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
これ歌が良かったですよね〜。私は、口パクでなく役者がちゃんと歌っているというところも気に入りました。
オーストラリア映画は本当少ないですよね。
バラサ☆バラサさんへ
こちらにもありがとうございます♪
そうなんですよね!ただのサクセスストーリーじゃない。何か、勝ち組の物語というよりは、負け組がもう一度希望に向かって手を伸ばす物語で。
つまり、そこがデイヴの語る、“ソウルの本質”に合っているところが良かったんです。
私、実はドリームガールズって大っ嫌いでした^^;