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2013年TIFF(東京国際映画祭) その他作品

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シチリアの裏通り

’13年、イタリア、スイス、フランス
監督・脚本:エンマ・ダンテ
出演:エンマ・ダンテ、アルバ・ロルヴァケル、エレナ・コッタ

まさにイタリアらしい映画で、大満足。タイトル通り、シチリア島のパレルモにある小さな裏通りでの物語。女同士の頑固な意地の張り合いだけで物語が展開していくという。いやあー面白かった!いかにもイタリアっぽい猥雑さ、出鱈目っぽさ、剥き出しの人間らしさ。大胆不敵な力作でした。小細工一切無し。大味なのにガツンと来るイタリア料理を思い出しますね。車が一台しか通れない小さな通りだったはずなのに、何故かいきなり道が広がっている。最後まで来て、一体自分達は何を見ていたのかと愕然とする感じも好みだったわあ。大勢の人がそこを走り抜けていく、不敵すぎる長〜いラストショットがまた決まってる!ちなみに、Q&Aで一人の観客が「通りに鳩が出てきたのは、平和の象徴なのか」と質問したのですが、エンマ・ダンテ女史があっさり「それは偶然です」と言い切ったところも好きだった(爆笑)。

images強烈なラストシーン。

JIN

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’13年、トルコ、ドイツ
監督:レハ・エルデム
出演:デニズ・ハスギュレル

同レハ・エルデム監督作品は、 今回のコンペ作品にも選出されていて、そちらは『歌う女たち』。こちらも一風変わったドラマで面白いのだけれど、こちらの“ワールド・フォーカス”部門の作品『JIN』の方は、力強く骨太な映像力で魅せてくれました。なんでも、レハ・エルデム監督作は、TIFFで全作品を上映しているのだそう。この監督の特集が組まれたことが過去にあったから、というのもあるけれども。JIN役のデニズ・ハスギュレルさんは、この作品で初のスクリーンデビュー。続いて『歌う女たち』にも出演してました。この監督の作品には、「鹿に出会う」というのが、どうやら心が美しい者としてのメタファーになっている様子。両作に共通して出てきてた。あ、私もこの間、アイルランドで鹿に会ったよ

パラダイス:愛

Paradise-Love

 ’12年、オーストリア
監督:ウルリヒ・ザイドル
出演:マルガレーテ・ティーゼル、ピーター・カズング

カンヌ・ヴェネチア・ベルリン、三大映画祭を沸かせたオーストリアの鬼才、ウルリヒ・ザイドル監督のパラダイス三部作とはなんぞや!?…ということで、来年2月22日よりユーロスペースで公開されることは決まっているけれども、1作だけお先にトライ。
めちゃくちゃインパクトある絵面ですよね、こちら、『パラダイス:愛』。あと2つ『〜:神』と『〜:希望』で3部作。
太ったヨーロッパの中年女性が、ケニアのリゾート地に行って現地青年を逆回春する物語。見ている間、何とも言えない気まずい気持ちになりながら、それでも面白く堪能した。上から目線でシニカルに人間を描くことなく、かと言って同情的に寄り添うでもなく描き切る。この感触が結構好みなんですよね。マルグリット・デュラス『ラマン 愛人』の逆バージョン。ジャン・ジャック・アノーが滲ませた情感と切ない愛の記憶の代わりに、そこにあるのは何ともザラついた心地の悪さと中年女性の孤独さ、ままならなさ。「これが愛ね…」と薄ら寒い思いをしながらも、どこかあっけらかんとした楽観的なテイストが後に残る。全部見てみるかな、他2作も。

起爆

’13年、韓国
監督:キム・ジョンフン
出演:ビョン・ヨハン、パク・ジョンミン

「リア充爆発しろ!」なんて言葉は日本でも流行ったけれど、実際にそれをやろうとした男たちの物語。面白いのが、爆弾を製造する知識があるが実行に移せない男と、実行犯の男、この二人が別に存在するところ。二者の力関係や綱引きのおかげで、映画を退屈させることなく、グイグイ牽引していくその手法は見事!ラストには、個人がいかに己の中二病と闘いながら、社会との折り合いを付けていくか、二人を対比させることでこうした大きなテーマを描き上げた。とてもクレバーな脚本。思わず上手い!と唸った。こうしたものが日本でも出てくればいいのに…。『クロニクル』に通じる部分も。これは公開されたら人気出ると思う。

ボーグマン

’13年、オランダ、ベルギー、デンマーク
監督:アレックス・ファン・ヴァーメルダム
出演:ヤン・バイヴート、ハーデウィック・ミニス、イェルーン・ベルセヴァル

人間の心の隙間に入り込み、巧みに人心操作をする謎の集団ボーグマン。ダークリアリティー・SF…て、一体何だろう。不思議で奇天烈な感覚、ゾッとするような不気味さを醸し出す。どことなくハネケ的な、人間に対する押し隠した嫌悪感を感じる。いや、ハネケより顕著な憎悪がたぎっている。去年のTIFFで言えば『ミヒャエル』枠!?冒頭はすごく面白く見れたのだけれど、中盤以降は展開が読めてしまうため、退屈させるきらいが。それでも、ラスト辺りにもう一捻りあれば評価していたかも。『ミヒャエル』や『籠の中の乙女』が好みな人には、気になるタイプの映画でしょうね。

 

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コメント(2件)

  1. まとめ書きですね!
    『起爆』『JIN』は紹介文読んでスルーしてしまいました。レハ・エルデム監督作品はもう1つ『歌う女たち』があったけど、これも紹介文で私はたぶん無理なタイプだなと判断して、それと同じ監督ということで『JIN』も見送り。でもなかなかこちらは評判良さげなんですよね。観る人の好みもあるんで、そこは何とも言えないんですけどね・・・。

    『パラダイス:愛』
    http://blog.goo.ne.jp/rose_chocolat/e/a15607881ad27e22cc98f986977be3b7
    これはびっくりな内容ですよね。でもたぶん現実とそう変わらないんだと思います。「事実は小説より奇なり」なんだけど、こうして突き付けられると見事に痛い。そこがよかったです。

    『シチリアの裏通り』
    http://blog.goo.ne.jp/rose_chocolat/e/47063b0a66611386890d6aeb7b4b4df5
    『ボーグマン』
    http://blog.goo.ne.jp/rose_chocolat/e/26c6ea54585abdeac6ea318ceff334d6
    どちらも私は好きなテイストです。
    シチリア・・は、最初と最後で道幅が違ってなかったですか?私の目の錯覚かもだけど。ああいうシーンを映画にしちゃうって言うのが面白いですよね。

  2. rose_chocolatさんへ

    こんにちは〜♪コメントありがとうございました。

    あー確かに、レハ・エルデムは好き嫌いあるかも。でも私が行った回は、この監督のファンが結構来ていて、しかも外国人の方が多かったなあ。中の一人は、日本語でQ&Aをしていたのですが、「レハ・エルデム監督のファンで、全部の作品をTIFFで見ました」とか言っている人が居たり、他にも外国人の方が英語でなかなか良い質問をしていましたよ。
    なんとなくですが、roseさんは『起爆』はきっと気に入られるかも。私はすごく気に入ったんですが、これ公開されたらきっと人気が出ると思います。

    『シチリアの裏通り』ですが、ラストシーンの写真を挙げましたが、見て分かる通り、最後で道幅がすごく広がってましたよ。
    これ、監督がティーチインで言ったことの受け売りなんですが、世界各地で起こる戦争や紛争についてのメタファーであるそうです。人の狭い物の見方で、しなくても良い紛争や戦争を、意固地になってしているだけで、実は気づけばする必要のないことであるという。




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