ソネ・ラビリンス 曽根中正特集
一作一作ごとの感想は書いてる暇が無いので、書けない、ということになってしまいそう。なので、ちゃちゃっとmemo程度にUPしよかなと。曽根中正は、『博多っ子純情』を以前に一作だけ見ていた程度。でもこれ、大好きだったんですよね。今回はロマンポルノ特集!
まずはこれ。
『天使のはらわた 赤い教室』(’79年)
監督:曽根中生
脚本:石井隆、曽根中生
原作:石井隆
撮影:水野尾信正
キャスト:水原ゆう紀、蟹江敬三、あきじゅん、水島美奈子
あまりの凄さにひっくり返った。何このレベルの高さは!?…このレベルなら全部見なくては!と思わせるほど。
画面構成も緻密で、鏡や水たまり等に映る姿を計算に入れたカメラワーク、映写機や机をボカシ代わりに使用したり…。
どこまで行っても平行線なままの孤独な男と女、彼らの持つ空虚さを映しだした世界観。それらにピッタリ合うように、いびつに歪んだ鏡や水たまりに反射させた姿。
次に一体何が画面に映し出されるのかと緊張感に溢れていて、痺れまくったー。
水原ゆう紀の渾身の演技が本当に素晴らしくて、心奪われまくりでしたしね。
身体中に漂わせた場末感満載の色気、諦念と憎しみに満ちた眼差しや演技…。
ポルノ雑誌の編集者である村木役の蟹江敬三は、「単なるエロ屋」としての自分の人生や作品に飽き飽きしている。生き甲斐の見つからない男の姿は、それがそのままに人生の空虚さや孤独感に繋がっており、1本のブルーフィルムに人生をめちゃめちゃにされた女に思わず自らを投影し、魅せられていくのがよく分かる。彼の底の深い孤独感は、まるで曽根監督その人の姿のように思えてくる。そのこだわりまくったフレームの間から、まるでやり場のない思いと魂が込められているように思え、熱量に思わず震えてしまう。
愛というよりはやり場のない孤独感で繋がるかのような、男と女の哀しい姿。
しかもその絆ときたら、ほんの通りすがりの、か細い一本の線で描かれたような僅かな縁。
あと曽根中正特集は、『現代娼婦考 制服のうずき』(’74年)と、『わたしのSEX白書 絶頂度』(’76年)を今回チョイス。
たったの3本だったけれど、それでも今後も追いかけて行こう!という気持ちになるには十分。個人的には、『天使のはらわた 赤い教室』がベストで、その次に来るのは『博多っ子純情』かな。
次回は、時間の許す限り全て見たいな。
『わたしのSEX白書』の方では、脚本家の白鳥あかねさんのトークショーがあり、日活がロマンポルノ専門になったその瞬間の時の話などもしてくれてましたヨ。
この時代の映倫からは、「70回ある絡みを、50回に減らせませんかね」みたいな話をされるのだ、とお怒りになってました。でも今から考えると、なんて素晴らしい時代なんだろうー、と思ってしまう。
この時代のロマンポルノがこれほど自由だったからこそ、ここまで凄まじく、冒険心に溢れた、面白い作品に出会えるのよね。
日本のこの時代のものこそ、見れるうちにせっかくだから堪能しなければ!と決意を新たにした私でした。
2013/10/29 | :ピンク・ロマンポルノ, :映画特集
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コメント(2件)
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当時リアルタイムで何度か観ました
ポルノ(ズリネタ)としての機能性にも優れていたし
映画としての出来も優れていて
当時も評判になってました
自分は単なるエロガキだったので、単に水原ゆう紀様(ズリネタアイドル)がお脱ぎになられて
しかも石井隆(当時の神)原作もんやとゆーことで
チンコ的にも文化的にもビンビンもんでした
あまちゃんのおじいちゃんの蟹江敬三さんは当時はあまりパッとしてなかったので この役柄もドハマリで
自分もこーゆー風になってみたいなーと思いました
何年か前に見返してみると 意外にエロくなかった
当時19歳の浪人生の自分には充分にビンビンでしたが
水原さんも芝居が意外にド下手糞
それでも当時はチンコも頭もビンビンになれたのは
「映画力」とゆーものでしょう
曽根中生さんの作品は このよーな「映画力」のある作品が多数あるので コンプリートしてみてください
自分が見た中では「天使のはらわた 赤い教室」は曽根作品の中でもベストに入ると思います
原作の石井隆先生が監督するとイマイチなんですがねー
石井先生の原作もコンプリートする値打ちはは充分にあります
ついでに水原ゆう紀のグラビアを収集してみるのもGoodです
熱くなって申しわけありませんでした
よしはらさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
遅くなってすみません!何と、私のMacBook Proが、ぶっ壊れておりました〜><。
OS X MarvericsにUpdateした後、再起動したら急に動かなくなってしまい…
せっかく愛情溢れるコメントをいただいたのに返信遅れてごめんなさい!
この映画見てる時、私よしはらさんのこと思い出してたんですよ。蟹江敬三の台詞で「エロ屋がどう頑張ったところでアートになんかなりえない」と商業的な部分と美に対するこだわりで悩むところがありますでしょう?私ね、それで思わずよしはらさんのこと思い出しちゃって。
よしはらさんぐらいしか「エロ屋」という商売をやってる人を知らないせいもあるんですが、よしはらさんて美術を見る目が確かだったり、すごくセンスが良かったりする面もありますよね。だから余計、この映画の蟹江敬三に思えちゃって。
おかげでなんか一人興奮してました!よしはらさんのコメント嬉しいですー。
水原ゆう紀はズリネタアイドルだったんですね。めちゃ美しい人ですよね。私、それほど演技下手と思いませんでしたよ〜。あのブルーフィルムのところは、もう一つかなとは思いましたけど、全体的に演出がすごく良いおかげで、迫力ある画作りになってました。それどころか、投げやりな雰囲気もなかなか堂に入ったもんだと思いましたよ。何より、美しい!迫力ある美人だし、オッパイもめちゃ綺麗でした。
それにしても、この原作の石井隆氏が監督したものもあるんですね。さらに漫画もコンプってたり、水原ゆう紀のグラビアまで集めているとは!なんと素晴らしい完璧なこの作品のファン!
私はまだ曽根中作品4作しか見てないんですが、私も『天使のはらわた〜』が今のところベストです!中には、『私のSEX白書〜』や『現代娼婦考〜』、『赤い暴行』なんかがベスト、って言ってる人も居ましたね。でも私は圧倒的に『天使のはらわた』が傑作だと思います。オールタイムベスト10に入るレベル。