スペイン発、今年一番アツくて新鮮なモノクロ映画! 『ブランカニエベス』
なんとユニークな映画が来たものよ!スペイン発のモノクロサイレント映画であり、スペインらしさに溢れた白雪姫。彼女の勇姿にアナタはきっと惚れる。
白雪姫を実写化したものは最近いくつもあって、クリステン・スチュワートの『スノーホワイト』、これは私的には退屈な駄目映画。次にターセム・シンの『白雪姫と鏡の女王』。抱腹絶倒のコメディで、戦闘シーンもずっと面白く、楽しめてしまう娯楽作。でも、この2つに共通してるのは「白雪姫が自ら戦う」という事と、ヒロインであるはずの白雪姫よりも、悪役の女王の方がずっと生き生きしてるということ。『スノーホワイト』ではシャーリーズ・セロンが美しくも恐ろしい女王を演じ、『白雪姫と鏡の女王』の方では、ジュリア・ロバーツがノリノリで演じている。2人とも、意地悪で嫉妬深いけれども、パワフルで権力を持った女ならではの怖さがあって迫力があった。
でも今度のスペイン製作のこの作品は、今まで見たことのないような、何ともオリジナリティに溢れたストーリー。スペインならではの白雪姫なんですよ!上品でクラシカルな映像美術、サイレント映画でありながら、伝統の古さを平気で壊す破格さをも感じさせるフレッシュな映像繋ぎ。斬新で目の醒めるような魅力に満ちているの。『アーティスト』を思い出す人も居るかもしれないけれど、それよりずっと面白いのがこちらの作品。
モノクロ映像に被る音楽がまたラテン音楽だったり、フラメンコの手拍子だけが鳴り響いくだけで、鳥肌が立ちそうになっちゃった。ブラボー!何て何てカッコイイの。まさか、白雪姫と闘牛がコラボするなんてね。ラストの心の高揚っぷりを是非経験してみて。マリベル・ベルドゥの憎らしげな継母も生き生きと演じていて素敵。全体的に、どこか血の匂いを感じるの。モノクロの中に情熱の赤を隠し持っている。死と隣り合わせの血、情熱の赤。見えないけれどひたひたと匂ってくる。濃厚で、だけどとても上品。。洗濯物に影絵が映り、くるりとターンして時間が流れるシーンなんて、とっても素敵。
’12年、スペイン、フランス
原題:Blancanieves
監督・脚本・原案:パブロ・ベルヘル
キャスト:マリベル・ベルドゥ、ダニエル・ヒメネス・カチョ、アンヘラ・モリーナ、ホセ・マリア・ポウ、インマ・クエスタ
2013/10/13 | :アート・哲学
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コメント(6件)
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おー!ということは昨日同じ回で観賞でした?
書くの早いなあ(汗)
最近忙しくてブログ全然手つかずで。
そう、これ、「赤」なんだよね。私もそう思った。これは書く予定です。
見えないけど赤が強烈!っていうのもスペインらしかった。私もこれ、推します!
rose_chocolatさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
いやーすいません、実は試写会で鑑賞済みだったのでした。あ、枠は一人だったのですけどね。
私もブログが今後、全然手つかずになりそう。またTIFFも始まっちゃうし、忙しくなりそうですね。
おー、ロゼさんもモノクロなのに赤が強烈に思えましたか。想像力を刺激する力がどれほど強力なのか、って感じですよね。モノクロで極めて上品に見せながら、スペインらしい赤がまるですぐそこで色づいている感じ。
roseさんの推し作品になりましたか!推しメンならぬ推しウーメン♪
ブランカニエベス・・・・・評価額1700円
純白のマタドール。
「ブランカニエベス」とは、スペイン語で「白雪姫」の事。
グリム童話をベースに、舞台を二十世紀前半のスペインに移し変え、数奇な運命を辿った美しき女闘牛…
「かぐや姫」も遭難ですけど、誰でも知ってる物語も切り口しだいでこんな斬新な映画になる。
私はこの映画の構造と物語に、映画史のメタファーを見ましたが、それ故にモノクロ・スタンダードの無声映画というフォーマットにより説得力を感じました。
カラートーキーじゃ絶対描けない実に映画らしい映画ですよ、これは!
遭難です× そうなんです○
なんてこったい・・・(´~`;)
ノラネコさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
>私はこの映画の構造と物語に、映画史のメタファーを見ましたが
>それ故にモノクロ・スタンダードの無声映画というフォーマットにより説得力を感じました。
そうなんですか!そこには気づきませんでした。まるで『アーティスト』みたいですね。
私は、単にとても魅力的で見るべき価値のある映画として、理屈抜きで楽しめる素晴らしい作品だと思います。サイレントであるという理由で、観客が映画知識的に自分は足りないから見るべき映画ではない、などと考えずに見てくれるといいなと思います…。サイレントであることが、映画をチョイスする上でマイナス要因にならないことを祈るばかりです。
何より、無声映画なのにここまで雄弁であることに驚いてしまいました。