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全てのロードムービーの原点 『オン・ザ・ロード』

on-the-road_1ケルアックの『路上』!これがとうとう映画化される日が来るなんて。『路上』の好きな人なら、不安が大きいのも当然だし、見に行く気が起きない人が居てもおかしくはない。私も同じ気持ちだったし、実際にそんな風に言うシネフィルの人も居た。

でもでも!こんなに素晴らしい、最高の状態の『路上』になるとは!コッポラが映画化権30年経ってようやく実現させた企画だったとか。ウォルター・サレスの『モーターサイクル・ダイヤリーズ』は素晴らしかったけれど、それ以上に、撮影のエリック・ゴーティエが先に挙げた『モーターサイクル・ダイアリーズ』、そして『イントゥ・ザ・ワイルド』を担当していたとは。この流れはロードムービーの原点である『路上』を手がけるに十分な堂々たる経歴!映画化した際に本の魅力を失わなかった作品として語り継がれる傑作になりそう。むしろ、映画の方がより魅力を感じるぐらいでしたよ。

ケルアックの『路上』については…。もうとにかく、ロードムービーを見る毎にこの作品のことを思い出していた、と言っても過言ではないんですよ。それなのに、読んでいる間はとても惹かれていたのだけれど、読み終わると同時にすでに冷めている自分が居た。後から考えてみると、何故惹かれたのか、私には正直上手く答えられない。でも嵐のような印象だけが残っていて、それがいつまでも冷めやらぬ後味として心の中に残っていた作品。青春映画って大概そういうものかもしれない。後からごちゃごちゃと理屈をつけて語ろうとすると、途端に色失せたように感じ、突如として自分自身をオヤジ臭く感じるような。

この間、twitterで青春映画についてonoderaさんと話していたところ、ハッと気付かされたことがあった。私がとある青春映画について、最後に主人公が学ばないし成長もしていないことを不満点として挙げたところ、彼は「それこそが青春映画の魅力なんだ」と教えてくれた。なるほどそうか!と目から鱗が落ちた思い。この作品でも、ラストには時が経っていて、主人公はいつの間にか大人になっている。そこから何を学んだとか、賢くなってどのように変わったか、それは分からない。ただ時は流れて、突然に懐かしい思いに駆られる。だからこそ美しかったんだ。

というのが上手い説明になっているかどうかは、まだ分からないけれど。過ぎ去った青春について説教臭く語ったりしないこと。あの時もう少し自分が青くなければ、などと何度思い返してみても仕方がない。ただただ青くて、馬鹿で、だからこそ尊いもの。
on-the-road-image

’12年、フランス、イギリス、アメリカ、ブラジル
原題:on the Road
監督:ウォルター・サレス
製作:レベッカ・イェルダム、ロマン・コッポラ他
製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ、ジェリー・レイダー
原作:ジャック・ケルアック
脚本:ホセ・リベーラ
撮影:エリック・ゴーティエ
音楽:グスターボ・サンタオラヤ
キャスト:サム・ライリー(サル・パラダイス)、ギャレット・ヘドランド(ディーン・モリアーティ)、クリステン・スチュワート(メリールウ)、エイミー・アダムス、トム・スターリッジ、ダニー・モーガン、アリシー・ブラガ、エリザベス・モス、キルステン・ダンスト(カミール)、ヴィゴ・モーテンセン(オールド・ブル・リー)、テレンス・ハワード、スティーブ・ブシェミ

 

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コメント(2件)

  1. 全く同感です。
    すべてのロードムービーの原点はケアルックの「路上」だと思います。
    原作本も翻訳者が変わり別物に格段に良くなりました。

  2. ヒデさんへ

    こんばんは。初めまして、コメントありがとうございました。
    『路上』素晴らしいですよね。
    こちらの映画も、名作である原作に恥じない、映像の素晴らしさを感じることが出来ましたよ。
    新訳の方は特に読んでいませんので、旧訳との比較は出来ません…。




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