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鏡花文学を映像で楽しむ 『白夜の妖女』

image003泉鏡花は好きですか?ラヴクラフトの好きな人に、「泉鏡花も是非読んで!」とオススメしたくなる私。慣れない人には彼の文体はちょっと読みづらいのだけれど、それでも、あの何とも幻想的で荘厳な雰囲気が堪らないのです。

鏡花文学の最高峰の一つ、『高野聖』の映像化である今作。邦画で見たいのは、私にはこういうもの!『白夜の妖女』なんていうタイトルだったので、泉鏡花の高野聖が原作だったとは、想像してなかった。いつも出来るだけ映画の前情報を詰め込むのが嫌いな、勉強不足な私がいけない。でも、こうやっていきなり出会えるなんて幸せ。

鏡花文学の真髄にズズイと迫った、素敵な邦画でしたよ。落ち着いてずっしり構えたカメラもイイ。幻想的であると同時に、しっかりリアリティを感じさせる美術もイイ。とっても気に入ってしまいました。妖女役の月丘夢路の眼力、肢体のみずみずしさ。思わず牛にされた薬売りが言うように、「あんな女を抱けるなら、この身がどうなっても構わねぇや」、思わずゾクっとするような美貌が、モノクロ画面から匂い立ってくるかのよう。

ただ、物足りないと思える点がいくつか。修行中の身である坊さんの性的葛藤を、もっと映像で語ってくれたら物語に深みが増していたと思える。それから途中の展開で、妖女が坊さんへ恋心を抱くようになり、妖術すら得ているはずの女が、マトモな女として生まれ変わり、彼を助けようとすること。この辺りがアレアレっと思えるほどアッサリ描かれているので、主題が存分に描かれている感じがないんですよね。坊さんが話を語りきった後、高野山の坊主達に戻ってくる。高僧の話に呑まれ皆が思わず固唾をのむ姿、そしてラストに坊さんが残す一言。この重みまで描けてこそのこの物語だと思うので…。

そうだ!この話は是非ともリメイクして欲しいな。性欲を我慢するということ自体、今の日本人には縁遠いものかもしれないけれど。

201307191848553

’57年、日本
原題:the Temptress
監督:滝沢英輔
原作:泉鏡花
製作:高木雅行
撮影:横山実
キャスト:月丘夢路(女)、葉山良二(宗朝)、小林正(白痴)、大矢市次郎(白髪の翁)、浜村純(与平次)、河野秋武(薬売り)、木室郁子(山の娘)、冬木京三(白藤屋敷の男一)、西村晃(農夫)他

 

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