変わり種ミステリー 『真夜中の招待状』
この時代の本格派ミステリー。設定も面白いし、なかなかグイグイ引っ張る力のある作品でした。
とある美人が精神科を訪れ、「自分の婚約者の兄弟が次々に蒸発し、自分もいつか蒸発してしまうのではないか」と悩む婚約者が居るという。このファーストクエスチョンがなかなか解き明かされず、何とラストまで引っ張っていくんですね。珍品だけれど、意外やしっかりしたミステリー。物語半ばを大分過ぎても、ハッそう言えばまだこのファーストクエスチョンを引きずっている!と驚いてしまいました。途中のトンデモ心理実験にドン引きしていたら、意外な方向へと進み、中だるみしかけたところをまた面白い方へ裏切ってくれたのでした。この時代のミステリーということで、何となく横溝正史物も思い出すところあり。血族の中に隠されていた黒歴史が解き明かされるタイプのもの。
小林麻美という女優さんは、何となく見たことはあったのだけれど、ほんの一時活躍していた女優さん&歌手だったのですね。見たことあると思ったら、『野獣死すべし』にも出演していて、そちらとこの作品にしか出ていないという!いかにもこの時代の美人という髪型&眉毛。笑顔になると突然印象が変わるし、衣装を変えると途端にガラっと印象が変わる、迫力ある都会派美人さんでした。この方、この後は所属していた芸能社の社長さんと結婚し、完全に引退。以降、全く活動していないのね…。でも、この作品ではラブシーンがありましたよ。この時代は、女優さんが意外とちゃんと脱ぐんですね~。それが当たり前だったのかな。
あと、丹波哲郎の脇役出演には笑った。トンデモ心理学実験が何と似合うこと。
そうそうこの作品、最初から最後まで煙草を吸い通しでした。特に高橋悦史。飛行機の中で煙草を吸うシーンがあったのだけれど、そう言えば昔って飛行機も喫煙席があったんですよね。今じゃ、考えられます?とは言え、煙草を吸うシーンのある映画って何だか魅力があっていいね。最近、そんな喫煙映画に駄目出しをする人たちがいるけど、憤慨している私。何故観客がそんな下らない映倫的な意見を持つようになってしまったんだろう?『風立ちぬ』といい、今後は「魅力的な喫煙映画」を集めてみようかな。
’81年、日本
監督:野村芳太郎
脚本:野上龍雄
原作:遠藤周作
製作:野村芳太郎
撮影:川又昂
キャスト:小林麻美(稲川圭子)、芦田伸介(稲川英輔)、小林薫(田村樹生)、高橋悦史(会沢吉男)、藤田まこと(原田順吉)、宮下順子(原田ミツ)、渡瀬恒彦(原田和生)、中島ゆたか(原田広子)、丹波哲郎(杉林)他
2013/08/26 | :サスペンス・ミステリ 丹波哲郎, 小林薫, 野村芳太郎, 高橋悦史
関連記事
-
-
『エル・クラン』 ブラックテイストな犯罪一家物語
アルゼンチンで大ヒットした、と聞いて思い出すのが去年の『人生スイッチ』...
記事を読む
-
-
『ヘイトフル・エイト』 密室の曲者揃い踏み!!
エンニオ・モリコーネのオスカー、おめでとう。この作品で獲りましたね。 ...
記事を読む
-
-
『ヴァバンク』ポーランドの国民的娯楽作
今年のポーランド映画祭でかかった81年の作品ですが、ポーランドでは誰も...
記事を読む
-
-
後味の悪い映画と言えばコレ! 『ファニーゲーム』
史上最強に後味の悪い映画として、悪名高き作品。 私は、DVDで見た時は...
記事を読む
-
-
『ピエロがお前を嘲笑う』 ドイツ発のサイバーサスペンス
ドイツ発のサイバークライム/ハッカーを描いたスリラー。 ギークな童貞主...
記事を読む
コメント