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愛を知る人には世界がこんなに美しい 『トゥ・ザ・ワンダー』

WbFKT0z42k8bzi3FXJceY5MAY3rrWQL3カメラが何ともエアリー。地に足がついていないカメラワークというか、ふわふわ宙に舞うような感覚。思い出の中を彷徨うような、自分の目に映る主観世界を映し出す映像センス。

オルガ・キュリレンコがもうあまりにも美しくて、うっとりしてる内に映画が過ぎて行く。原語も違うせいか、(ベン・アフレックは英語で、オルガ・キュリレンコはフランス語)あまり二人の会話がなく、ただじゃれ合うシーンが多くてそれもなんだか良いの。会話の無い男と女ってなんだか憧れるんだよなあ。ちなみに、オルガ・キュリレンコは18の頃にモデルとしてフランスで暮らしていたから、フランス語は得意だったんだ。

愛が永遠でないというテーマの作品には、愛の至上の喜びと同時に、刺すような胸の痛みとが描かれていることが多くて。何故彼女の顔から笑顔が消え去ってしまうのだろう、どうしてこうなってしまうのだろう…。頼むからあのまま笑っていてくれたら。と苦しくなる思いがした。
ベン・アフレックはついさっき、彼が次作のバットマン役に決まったというニュースが流れていたけれど。ベンアフの、“彼の目線で見ている”という映し方であるおかげで、彼自身が映るシーンが少なく、存在感も薄くてちょうど良かった。会話シーンは少ないし。

前作では神の視点を描いたけれど、今作では地上に降りてきて、だけどフワフワ宙を漂っていて。そして、人間の感覚の中で最も崇高な物について語る。そんな風に思えた。心が高揚するような思い、言葉にならない思い、愛の苦しみ。そんなものを綺麗にパッケージングされた不思議な映像体験でした。愛を知る人には、これほど世界が美しく思えるのか。世界がまるで違って見えるような感覚体験かもしれない。愛など知らないし興味もない、世界がこんなに美しいとは思えない人には、この映像はその美すら嫌悪の対象となるかもしれない。たとえ、その後の愛の破滅をもってしても。また、ストーリー重視の方には決して気に入ることのない映像体験であるには違いない。

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’12年、アメリカ
原題:To the Wonder
監督・脚本:テレンス・マリック
製作:サラ・グリーン、ニコラス・ゴンダ
製作総指揮:グレン・バスナー、ジェイソン&ジョセフ・クリグスフェルド
撮影:エマニュエル・ルベツキ
音楽:ハナン・タウンゼント
キャスト:ベン・アフレック(ニール)、オルガ・キュリレンコ(マリーナ)、レイチェル・マクアダムス(ジェーン)、ハビエル・バルデム(クインターナ牧師)

 

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コメント(4件)

  1. 前作でも一体このカメラは何の視点なんだろうと思ったんですが、マリックのイメージする神ってキリスト教的な神というよりも、むしろ八百万の神に近いんじゃないかと。
    これがある意味マリックの映画宇宙の神の視点なら納得いく。
    どこから私たちを見下ろしているんじゃなくて、空気の様にどこにでも存在している様な。
    たゆたう様な映像と音に浸りながら、ボーっとそんな想いに囚われておりました。

  2. ノラネコさんへ

    こちらにもありがとうございます♪
    “映画宇宙の神視点”、なるほどです。本当、ボーっとしてしまいますよね。
    愛に包まれた主観世界、思い出を映し出すカメラワーク。素晴らしかったですね。切ないほどきらめいていて、まるで走馬灯のようで…。
    美しければ美しいほど、苦しくさえ思いました。あんな風に美しかったものが、消え去っていくのが本当に辛い。

  3. お久しぶりです。
    以前からとらねこさんの映画評を見て映画鑑賞してましたが、今日この作品みてきました~(映画館はほぼ満席)

    オルガ・キュリレンコが美しくて恋する女性の揺れ動く感情にどっぷり浸れました。そして何と美しい映像(光)でしょう!
    神を信じても人は苦しむものなのですね。
    苦手なベン・アフレックも、これだけ存在感(セリフの量のせい?)が薄いと、作品にうまく溶け込んで気ないなりませんでした。

  4. cinema_61さんへ

    こんばんは〜♪随分とお久しぶりですよねえ!嬉しい。コメントありがとうございました。

    この作品、まさにどっぷりと浸れましたよね。言葉にならない感情こそ、映像にすべきことだなあ…なんて思います。
    cinema_61さんにもこの美しさを共有してもらえて嬉しいです!
    本当、この作品は映画館で見るべき作品でしたよね。
    私の時もすごく混んでましたよ。売れてて良かった。

    ベン・アフレックだけが不安要素だったんですが、彼の要素が薄くて良かったです!w




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