『東のエデン 総集版 Air Communication』+『東のエデン 劇場版Ⅰ The King of Eden』『東のエデン 劇場版Ⅱ Paradise Lost
『攻殻機動隊』TVシリーズの神山健治監督作品。TVシリーズと劇場版合わせてレビュー。TVシリーズの方は2009年に放映されたもの。こちらの方は30分×11回で、劇場版は約90分程度×vol.1&2の2本。これだけ面白いと、こんなに長くても次々消化出来ちゃう、という。気づいたらあっという間に見終わってしまった。文句なしに面白い!
ニートという存在は日本にはたくさん居るのに、これを使って映画にしようなんて、それだけでも珍しいと言えるよね。ましてやこのニートの中からカリスマを出そうとか、日本を救う物語、だなんて。新しくてワクワクする。『ゾンビ』を彷彿とさせる、ショッピングモールに避難した2万人のニート達がワラワラと闊歩する絵など、終末感の漂う冒頭にググっと引き込まれる。
ランダムに選ばれた“11人の使徒たち”セレソンの存在は、日本を救うために自由に使える資金が100億円まで用意されている。“ノブレス携帯”と呼ばれるものを使って、金の使い道を携帯電話で“ジュイス”という携帯電話の中のひとに指示するだけ。そう言えば、“携帯電話”自体も、ここまで新しい設定で物語の中に入り込んでいるなんて、珍しくない?こんな凄い多機能を持った携帯電話の設定なんて見たことないし、素晴らしい。「こんな物語が見てみたかったかも」と目を見張るような設定で、面白かった。想像力の規模があまりに大きく、しかも世界観がしっかりしていて見応えのあるものになってる。さすがは神山アニメ!
映画好きとしては、思わず反応してしまうような作品の名前がポンポンと出てくるんですよね。先ほど話したショッピングモールのところでは『ドーン・オブ・ザ・デッド』の名前が出て来たり、主人公が好きだった映画として『グラン・ブルー』が出て来たり。「NYでタイムトンネルが出てくる橋」の記述があるところは、『ニューヨークの恋人』のことだよね。それから、「ラストシーンでスクーターを放り投げる映画」として『さらば、青春の光』が出て来る。それから、ニート達が一箇所に集められ、滝沢たちが集まる場所は、実はあれユナイテッド・シネマ豊洲でしょう。きちんと取材して絵を描いているのか、すぐ分かるw。それから、歌舞伎町のところではジョイシネマも映ってたね。「ミラノボウル」は「トリノボウル」になってた。コマ劇はちゃんと工事中になってたっけ。ちなみに今、TOHOシネマズ新宿を作ってる最中なんだけどね。なんちゃって、それはリアルな話だ。
個人的には、セレソンNo.11の白鳥・D・黒羽、「ジョニー狩り」の彼女が好きだ。ジョニー狩り、てのは薄汚い性犯罪を犯した男のイチモツをブッタ切るという連続猟奇殺人を犯している彼女。私がそんな設定で喜ばない訳がない(笑)。彼女はセレソンとしてゲームに上がることを放棄してるんだけど。
『攻殻機動隊』シリーズが好きな人は、今やってる劇場版よりも、こちらの方を見るべきかも。映画版は、TV版を見た人だけが理解出来るようになってるのけれど、TV版の方が完成度が高いかな。
原作・脚本・監督:神山健治
キャラクター原案:羽海野チカ
音楽:川井憲次
キャラクターデザイン:森川聡子
副監督:吉原正行
総作画監督:中村 悟
美術監督:竹田悠介
CGI監督:遠藤 誠
キャスト:木村良平(滝沢 朗)、早見沙織(森美 咲)
2013/08/07 | :アニメ・CG等
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すっかりご無沙汰しています。
そろそろ夏ボケから復帰予定の健太郎です。
神山健治監督押しで『東のエデン』だなんて流石ですね。
僕もTVは観ていなかったのですが、映画版を観るためにレンタルで全話見たのですが、あっと云うまでした。
どこをどう観ても見所ばかりで、小技も効いてましたね。
おっしゃるとおり、「映画」が小道具として上手く使われていて、『ドーン・オブ・ザ・デッド』のくだりでは「ドーン・オブ・ザ・デドみたい」とつっこんだら、作中でも同じせりふが出て笑ったし、『グランブルー』に至っては、
「この映画好きなの?」
「好きな人が好きな映画」
てなやりとりに、じゃあその「好きな人」って誰なんだよ。とかつっこんだら、姉夫婦のシーンで『グランブルー』のポスターが貼ってたりと、芸が細過ぎました。
そんな「映画ネタ」で最大のものが、作品のタイトル。
最終回の一つ前で、夜中に関西から東京へ移動するシーンがありましたよね。
貨物列車の屋根に乗って、寒いから服の袖から腕を抜いて袖をマフラー代わりに首に巻きつけるシーン。
これ『エデンの東』でジェームス・ディーンがまったく同じ事やってます。
ここ突っ込んでる人意外と少ないので、これポイントですよ。
タイトルからして『エデンの東』のオマージュなのに、ちゃんとシーンを入れるなんて、神山監督は流石です。
健太郎さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
やったぁ!健太郎さんもこの作品、お好きだったんですね。
>神山健治監督押しで『東のエデン』だなんて流石ですね
わーい、何か褒められた♪
この作品、本当皆に見て欲しい作品ですよね。なーんて、今頃UPしておきながら言うのもナンですが…。
健太郎さんは映画からリアルタイムだったんですね。私は残念ながら、当時気づかなくて…。しかし本当、見始めたらあっという間に一気見しちゃいました!
『ドーン・オブ・ザ・デッド』のくだり、『グラン・ブルー』のくだりは、本当に「あー分かる分かる!」て感じでしたよね。私は『グラン・ブルー』が昔から大好きで。
「ドーン・オブ・ザ・デッドみたい」の台詞は、私は「それ言うなら『ゾンビ』!」なんてちょっと思ったりもして。
でも、『エデンの東』に関しては、気づいてませんでした!うーん、そこでしたか。
私も昔に見たんですけどねえ、健太郎さんがその点に気づいたなんて素晴らしい。
>『東のエデン』と『エデンの東』
夜中にDVDを観ていたのですが、思わず叫んでソファーから落ちてしまいました。
二度見して確認しました。
『ドーン・オブ・ザ・デット』と『グランブルー』の下りで「この監督とは話が合うかも」と思ったのですが、『東のエデン』と『エデンの東』で完璧に神山監督にはまりました。
去年の『009 RE:CYBORG』も良かったですよ。
003/フランソワーズがエロイ事になってました。
健太郎さんへ
こんばんはアゲイン♪
思わずソファーから落ちてしまった!なんと、でかいリアクションですね。そんなにわかりやすかったでしたか。うーん、これは私、もう一度『エデンの東』見ないといけませんね。
そうそう、私はちなみに、“メリーゴーランドの金の輪っかに手を伸ばす”というシーンで、『ライ麦畑でつかまえて』を思い出しました。
というか、ラスト間際がライ麦そっくりなんですよ。映画じゃないのでここには書きませんでしたが、きっと神山健治はサリンジャーも好きなんじゃないかなあと思いました。私はもう大好きで。ここに一番グッと来ました。
『009:RE:CYBORG』、これも面白かったんですね!実は、009は全く知らないので、ついつい手を出すのを躊躇してしまいます。同じ理由でスタトレに手が出ません…。