極上!泥棒猫の冒険物語 『パリ猫ディノの夜』
何とも素敵な、パリの泥棒猫。想像していた物語と全然違って、練りこまれた脚本に思わず唸ってしまう秀作なのでした。
夜の色合いがとっても綺麗なの。深みのある群青色、建物の屋根の上をヒョイヒョイと自由自在に動き回る黒猫。闇の群青色に黒猫の姿が溶けこんで、何とも美しい姿。毛並みの見事さを赤錆色っぽい色使いでキラリと背中が光るところもいい。最後の方の建物のところでは、闇の中にボウっと影を濃く映し出す恐ろしげな怪物の彫像が。「アッ、ノートルダム寺院だ!」なんて嬉しくなる。
まず、「猫は夜中に一体何をしているんだろう?何処に行くんだろう?」というファーストクエスチョンが与えられる。これって、誰もが考えることよね。猫達は夜中に一体何をしているんだろう?昼間の姿とは全く違う、自分だけの冒険譚を持っているのかもしれない、なんて。このフックに引っ張られて、「猫の行く先を映し出されるなら、これはきっといい映画だ!」なんて確信が持てたの。だってこんな映画が見たかったもんね。
でもここから先は、まるで上質のミステリ映画仕立て。猫が持ってきてしまった魚の形のブレスレットを皮切りに、闇に行脚する大泥棒の事件にどう結びついていくか。プロットがとても複雑で、アッという間の70分なんですね。一方は猫の足跡を追う少女の冒険で、もう一方のプロットは警察である少女の母親のチーム。猫が夜中に片棒を担いでいたコソ泥と、大泥棒のグループが入り乱れて…。
絵柄こそキュートなパリ風アニメで始まるものの、どうしてどうして、それこそ夜は別世界。『カリオストロの城』もかくや、と思えるような、ハラハラドキドキの冒険物語で、終始ワクワクし通しなのでした。
猫の大活躍にも期待しちゃって!
’10年、フランス
原題:Un vie de Chat
監督:アラン・ガニョル、ジャン=ルー・フェリシオリ
脚本:アラン・ガニョル
音楽:セルジュ・ベセ
キャスト:ベルナデット・ラフォン、ドミニク・ブラン、ブルーノ・サロモネ、ジャン・ベンギーギ
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コメント(3件)
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実写では犬派が優勢だけど、アニメは日仏で猫派が優勢w
さくさく進むし話そのものは他愛ないけど、何よりもデザインとしてのアニメーションのセンスの良さ!
小さな宝石箱の様なキュートな小品でした。
ノラネコさんへ
こちらにもありがとうございます♪
これ、私とっても気に入った佳作でした。本当、「小さな宝石箱」ってわかります。ギュッと詰まってる感じ。
ノラネコさんはデザインを評価されてるんですね。
私、冒頭の昼の風景が出て来た時、実は「この色彩感覚嫌だわ…」と思ってしまいました。
夜になったら俄然評価を覆してしまった感じです。
このサスペンス感覚、確かにカリオストロっぽいですよネ〜!