ヨーロッパ観光地型、軽快コメディ第三弾 『ローマでアモーレ』
パリから舞台を変えて、今度はローマ!
というのは、日本で公開された前作『恋のロンドン狂騒曲』が、実は『ミッドナイト・イン・パリ』より前に製作されていたから、なのです。日本では『ミッドナイト・イン・パリ』の大ヒットと高評価を受けて、後から公開されたけれど。
なんでも『恋のロンドン狂騒曲』は、その少々塩っ辛いテイストのためか、興行的には大コケしてしまったらしい。続く『ミッドナイト・イン・パリ』が、ウッディ・アレンとは思えないほどどこか甘い雰囲気があったのはそのためかも。しかしローマが舞台の今作。大ヒットし、アカデミーノミネートにも至った『ミッドナイト・イン・パリ』の後に来る作品であるせいか、多少気の抜けたテイストの空騒ぎコメディだった模様。十分、面白くは見れたけれど。私は正直、『ミッドナイト・イン・パリ』の楽しさ、『恋のロンドン狂騒曲』の人生の苦さの方が何倍も好き。でも、アレンの観光地シリーズ、各地でやってもイイナ!
この先、ネタバレで語ります**********************
今回は、イタリアで出会い付き合い始めたカップル、アメリカ人女性ヘイリー(アリソン・ピル)とミケランジェロ(フラヴィオ・パレンティ)が、互いの両親を合わせることになり一騒動。この物語が全体のコメディテイストを強くしているとも言える。婿の父が風呂場で歌うオペラが素晴らしいと、感動した嫁の父が彼をスカウトして前衛オペラに引きずり込んだり。また、同棲中の安定したカップル、ジャック(ジェシー・アイゼンバーグ)とサリー(グレタ・ガーウィグ)の中に割り込んでくる、見た目には地味だけれど実は小悪魔なモニカ(エレン・ペイジ)。ジャックが出会う、成功した建築家のジョン(アレック・ボールドウィン)は、すぐには気づかないが、実は彼はジャックの心の中の声だ。それから、お洒落をすると出かけたままはぐれてしまう夫婦。どこにでもいる平凡で安定した、浮気など考えたこともない夫婦が、それぞれに恋の国イタリアならではの展開を迎える辺りがとても可笑しい。また、平凡なイタリア人レオポルド(ロベルト・ベニーニ)が突然有名人になるという不条理コメディ部分もある。ここは少し尺が短くても良かったかな。
一番好きだったエピソードは、はぐれた夫婦がお互い浮気をして難なく元サヤに収まるところ。夫婦それぞれが平等に浮気し、ちゃんちゃんと大団円が来るなんて楽しくて。こういうエピソードで共感が出来るなんて、自分もすっかり大人の苦味が味わえるようになったものだな、なんて思ったり。
ジェシー・アイゼンバーグは早口がさすが得意である一方、抑えめな演技で好感が持てた。エレン・ペイジも、にわかアート好きの知的風な台詞が難なく似合ってる(その諷刺的色合いも)。『おいしい生活』では、ヨーロッパ旅行に行く妻に「5000kmも飛んで遺跡を見るつもりなのか?」なんていう台詞があったけれど、今回は「遺跡を見るとオジマンディアズ憂鬱に駆られてしまう」なんていう台詞が二度出て来て、思わずニヤリ。
個人的には、モニカが昔の自分みたいで目を覆いたくなった。そう言えば私も、サークルに入った時に、私に聞こえないと思ってとある先輩が、「ええっ!?あの程度で美人?」なんて言っているのを耳にしたことあったな…。それから、「お前は恋多き女だ!」とも言われたっけ。覚えたばかりの本からの引用をして知識ある素振りをして、“特別な子”を装って相手の気持ちを引いたり。思えば男にはそういう部分、見透かされていたんだろうな。
P.S…ペネロペ・クルスは多少太ってムチムチになってきても、相変わらず綺麗で見とれちゃう。
’12年、アメリカ、イタリア、スペイン
原題:To Rome with Love
監督・脚本:ウッディ・アレン
製作:レッティ・アロンソン、スティーブン・テネンバウム他
撮影:ダリウス・コンジ
キャスト:ウッディ・アレン(ジェリー)、アレック・ボールドウィン(ジョン)、ロベルト・ベニーニ(レオポルド)、ペネロペ・クルス(アンナ)、ジュディ・デイビス(フィリス)、ジェシー・アイゼンバーグ(ジャック)、グレタ・ガーウィグ(サリー)、エレン・ペイジ(モニカ)、アントニオ・アルバネーゼ(ルーカ・サルタ)、ファビオ・アルミリアート(ジャンカルロ)、アレッサンドラ・マストロナルディ(ミリー)、オルネラ・ムーティ(ピア・フザーリ)、フラビオ・パレンティ(ミケランジェロ)、アリソン・ピル(ヘイリー)、リッカルド・スカマルチョ(ホテル強盗)、アレッサンドロ・チベリ(アントニオ)
2013/07/15 | :コメディ・ラブコメ等 ウッディ・アレン, エレン・ペイジ, ジェシー・アイゼンバーグ, ペネロペ・クルス
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