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世紀のお騒がせ監督ついに語る 『ポランスキー 初めての告白』

bf3b1bd05c0a52bd1cfcb7a17b6404abポランスキーの血と醜聞にまみれたスキャンダラスなニュースは、彼の作品の素晴らしさにちっとも響いていないどころか、ますます謎を深め、個性の強さをいよいよ印象付ける。

私が初めてポランスキーのニュースを聞いたのは、シャロン・テイト殺人事件。もちろんリアルタイムではないけれど、その血なまぐさく悪名高いニュースで、その名を知った。(詳細に言うなら、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーがチャールズ・マンソン殺害事件の現場である自宅地下室を改造してスタジオを作り、そのために知ったのですが。)私の中で、この恐ろしいシャロン・テイト殺人事件と共にポランスキーの名は、不吉な影が色濃くなってしまった。そしてその後『ローズマリーの赤ちゃん』を見て、あまりの恐ろしさに心底ゾゾっとした。それまで見たことあるホラーの何倍も静かなのに、本気で鳥肌が立つほど怖くて。私は個人的に一番好きなポランスキー作品と言ったら、断然これ。ちなみに、シャロン・テート殺人事件があった後、マスコミや世論は悪魔教との関連を取り沙汰されたらしいけれど、それもこれも『ローズマリーの赤ちゃん』があれほどまでに、人智を超えた恐ろしさを感じさせるが故だ、と思ったりする。

さらに、ジョン・レノンが殺害された場所が、『ローズマリーの赤ちゃん』が撮影されたダコタ・アパートなんですよね。その不吉な符号の合い方も、知った時は本気でゾゾっ…!とした。ポランスキーって何という運命の巡り合わせの人なんだろう、と。未成年強姦事件や、アウシュヴィッツ収容所に家族が入れられてしまったこと、本当に噂に事欠かない人で、本当によくもまあ、一人の人生でこれほどまでにスキャンダルまみれな人も居ないなあと思う。

それにしても、どんな名匠であっても、未成年強姦事件はいただけない。いくら、才能は性格とは別問題、どんなに性格の悪い俳優だろうと監督だろうと関係ない!と普段思っている私であっても、未成年者に対する犯罪というと、途端に侮蔑の念が走る。この作品の冒頭で取り上げられている、フィンランドでポランスキーが逮捕された、というニュースは正直「またか…」と言う感じで正直ウンザリだったけれど。

今回のこうしたドキュメンタリーが満を持して出来たのも、この件があったためだろうと思う。とうの昔に務め上げ、解決したはずの刑期のために、不当にも中立の国フィンランドで、しかも映画祭のために出かけて行ったことがキッカケで、逮捕劇へとなったとは。

ポランスキーの信頼する、ずっと一緒に仕事をしているスタッフのアンドリュー・ブラウンズバーグをインタビュー相手に、穏やかながらも胸の内をそっくりと語る今作。気心知れたスタッフと一緒に、心乱されることなくこうしたドキュメンタリーを作ることが出来るのも、今の時代ならではなんでしょうね。ただ、自分でコントロール出来る自叙伝に近いせいか、対象者への批評的視点が全く感じられるものでないのは残念だけれども。

P.S.それにしてもポランスキーって、ハーヴェイ・カイテルに似てるなあ…。
ちなみに好きなポランスキー作品ベスト3は、『ローズマリーの赤ちゃん』、『水の中のナイフ』、『マクベス』。
『マクベス』の素晴らしさには、最近本当にビックリした。シェイクスピア好きの私に言わせてよ。黒澤の『蜘蛛巣城』より、オーソン・ウェルズの『マクベス』より、絶対絶対ポランスキーのマクベス!!!

’12年、イギリス、イタリア、ドイツ
原題:Roman Polanski:A Film Memoir
監督:ローラン・ブーズロー
製作:アンドリュー・ブラウンズバーグ
キャスト:ロマン・ポランスキー、アンドリュー・ブラウンズバーグ



 

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コメント(2件)

  1. 冒頭でドイツのポーランド侵攻の直前にパリからクラクフに移住して「これが運の尽きだった」と言っているのを観て、ホントに運が悪すぎると唖然としてしまったですよ。
    ポランスキーさんはシャロンもだけどナスターシャとも関係してたらしいしエマニュエル・セニエともくっついたし、女優さんに手を出す系の人なんでしょうねwこの辺もうちょっと突っ込んで欲しかったな。

    『マクベス』『テナント』が国内DVDになってないのが大損失ですよね。

  2. すたさんへ

    こんばんは~♪あ、なんかここではお久しぶり!
    ですねー、ポーランドのあの時代に行ってしまったなんて、信じがたい不運としか…あ、この間すたさんが反応してくれた「ブリキの太鼓」も、ちょうど第一次対戦のキッカケになった事件でしたっけねぇ。

    うん、女優とのラブアフェアもですし、要はポランスキーに具合の悪いことはあまり描いてないなあ、という印象があるんですよね。だって、自分の子飼いのスタッフで作成されてるわけですから、批評的視点が皆無なんですもん。




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