こんな陽気なおばあちゃんになりたい 『アンコール!!』
本当ごめんなさい。見るまで舐めてました、最近良くあるジジババ+音楽映画と。10年に公開された『オーケストラ!』は大好きで、その年のベスト10には入れてしまったほど。しかし以来、似たような音楽物が続きすっかり食傷気味に。でも!この作品は、テレンス・スタンプが出ていたので、思わず見に行く気になった。結果、見て良かった。
これは素人が誰でも出来る、コーラス映画。そして人生の終わりに自分を見つめる、そんな良質のイギリス映画でした。やはり、音楽と人間を描いた映画にはハズレが無いね。
頑固親父で、いつも不機嫌そうな仏頂面のアーサー(テレンス・スタンプ)と、いつも朗らかで呑気なマリオン(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)。この夫婦の姿がすごく心が痛むんです。私の義父と義母の夫婦がまさにこんな感じなんだもの!アーサーは、もしかしたらマリオンの病気が始まってから覚悟を決めていて、常に悲しみを隠しているのかもしれない。「希望を持つようにさせるのは酷なこと」という一言は、自分のためにそう言ってるのかも。結婚生活自体が上手くいっているようには見えないけれど、それでも見えないところで彼らが深く繋がっているのは分かる。彼のひたすら強固な頑固さに優る、マリオンの優しさや朗らかさがとても心地いい。
この先ネタバレで語ります*************
物語の中盤に差し掛かるところで、コーラスの予選が始まり、早めのクライマックスを迎えた後、すぐにマリオンが逝ってしまう。このペース配分になるほど、と思わせられた。冗長でよくある物語になりがちなところを回避するための、ペース配分の番狂わせ。その後は「妻に先立たれた夫の物語」となる。なるほど、死そのものを悲劇として捉えるのではなく、生きていく者のための物語なのね。
マリオンは死に向かい合った時、音楽の素晴らしさと共に乗り越えたかのよう。そして自分が先立った後、夫をコーラスの世界に引きずり入れたかった理由も同じ、彼女の最後の思いやりのようで、胸がいっぱいになった。コーラス自体が選ぶ曲も本当に良くて、心に残るものばかり。コーラスで『Ace of Spade』だなんて、ビックリ!!…そう言えば、twitterでリアルにヒップホップを歌う老人集団は見かけたことあるよ!以下、「粛々とエミネムを歌う高齢者合唱団がジワジワ来ると話題に」↓
テレンス・スタンプが歌を歌うシーンで『プリシラ』を心の中に思い浮かべる。それで余計に一人で感動してた。何よりこの映画ではヴァネッサ・レッドグレイヴのマリオン。彼女みたいな女性になりたいな。死ぬ時にこんな風にみんなに愛されて死ねたら最高だな。
’12年、イギリス
原題:Song for Marion
監督・脚本:ポール・アンドリュー・ウィリアムズ
製作:ケン・マーシャル、フィリップ・モロス
製作総指揮:アリステア・D・ロス、タラ・モロス、ワインスタイン兄弟他
撮影:カルロス・カタラン
音楽:ローラ・ロッシ 主題歌:セリーヌ・ディオン
キャスト:テレンス・スタンプ(アーサー)、ヴァネッサ・レッドグレイヴ(マリオン)、ジェマ・アータートン(エリザベス)、クリストファー・エクルストン(ジェームズ)
2013/07/06 | :音楽・ミュージカル・ダンス テレンス・スタンプ, ポール・アンドリュー・ウィリアムズ, ヴァネッサ・レッドグレイヴ
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私もこれはテレンスさんよりはヴァネッサさんに惹かれましたねえ。
あの歌はよかった。夫婦の歴史なんだなと思いましたよ。
rose_chocolatさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
私もです!ヴァネッサさんの役柄、マリオンが素敵でしたよねえ。
端から見るとよく分からなくても、本当は愛し合ってる彼らの姿に、ほろりとしてしまいました。