映画なんてこれでいい! 『スプリング・ブレイカーズ』
一周しないと分からない。映画にはそういう良さって、あるかもしれない。私にはこんな映像が最高。映画なんてこれでいいって思った。
ちなみに私は、ハーモニー・コリンは大して好きではなかったのです。『キッズ』の脚本、『ガンモ』『KEN PARK』の監督作を経て、当時大嫌いだったクチ。「変わった映画を作ろうとしているけれど才能がそれに追いつかない人」、というのが私の彼に与えた称号だった。しばらく経ってのち、こうして認める日が来るとは思わなかったな…。この間恵比寿映像祭で、『フォース・ディメンション』という彼が参加した映像作品を見たけれど、映像が面白くて。内容は全く無いに等しく、というか露悪的なまでに最低を目指している、と言う方が近いかも。でも逆に、その酷さが心地良くなってくる。こんな風に出鱈目なことをしてしまう俺格好いい、そんな感じ。見た人にしか伝わらないかもしれないけれど。
『キッズ』の脚本を書いた頃は、映画が公開される前から前情報を集めまくってた。「これこそ今、見なければいけない映画!」なんて煽り文句に煽られて、期待を胸に見に行った。ハーモニー・コリンはタワーレコードで働いていた頃、彼が十代に書いた脚本が抜擢された。写真家のラリー・クラークが当時のストリートでタムロするキッズたち、本当のワイルド・サイドを生きる奴らをスカウトして、リアルに迫った作品とのことだった。ハーモニー・コリンは「コチラ側の人間だなあ」なんて、つくづく感じる。コチラ側とは、本当のワイルド・サイドを歩くイッパシのワル。この作品でジェームズ・フランコが演じていたラッパー、“エイリアン”。(ジェームズ・フランコは、Sean Paulにそっくりで、予告を見て笑った!)
映像の露悪表現が、ここまで来ると逆に格好いいのね。「嘘でしょ?」って感覚もどこかにあって、こんな映像が好きな自分をどこか信用出来ないように思える。好みの映像や価値観を覆されるような思い。自分にとってカッコイイと思える気持ちいい映像を集めて喜んでる、そんな無邪気さ。春休みにブレイクする前の女の子のくすぶった気持ち、今にも暴走したくなる気持ち。淫らなことも、危ないことも、知らないことを全部経験してみたい!!そんなspring sproutする前の女の子の気持ちが、分かりすぎるぐらい分かる。ビッチでなくても分かる?いや、女の子の半分はビッチ、というのは本当だと思うんだな。自分の実感を元にして思うに。
冒頭の乳祭り&キャンディ舐め舐め映像攻撃!すっかり私はノセられて昂揚した。セルジュ・ゲンズブールがフランス・ギャルに歌わせたみたいなキャンディ舐め。こんな映像ばっかり見たら、さぞかし男たちはすごいことになってるだろうと思ったのだけれど、どうかな?
「スプリング・ブレイク フォーエバー。」春休みが永遠に終わらなければいいのに、って台詞を口に出し何度も繰り返す瞬間から、すでにその言葉の虚しさが響き渡る。ブリトニー・スピアーズの曲をみんなで歌ったり、ピアノで夕日を見ながら弾き語りをしたり。美しき物が消えていく夕日の寂しさ。何より、ブリトニーを彼女たちの象徴のように持ってくるところが、笑っちゃうぐらい的確で、思い出し笑いをしてしまうぐらい。彼女が制服を着て踊っていたデビュー曲と対照的に、スターの座からどんどん転落していった今の姿を思い描かずに居られない。スプリング・ブレイクしたい女の子の「ブレイク前・ブレイク後」を同時に感じさせるブリトニー。今の時代にあえてこの人を持ってくるなんて、普通の感覚だったら微妙になりそうなところを、こんなに美味しく仕上げるなんてさすが。ブリトニーで泣かせにかかるなんて!
この先ネタバレ*************
何と言っても好きなのは、ジェームズ・フランコの銃を咥えるシーン。間の取り方でサスペンス効果を盛り上げるのが最高。
それからラスト、ブラックアウトして、蛍光色に光る映像でBANG!BANG!BANG! と乗り込んでく描写が好き(クラブの照明ってこういう照明多いよね!)
サイレンサー付きの銃で音が鳴る代わりに、音楽がゆったりと流れて、スローモーションで夢みたいに過ぎていく。
おまけ。これ好きだった〜!ブリトニー+ビヨンセ+PINKの『We Will Rock You』カバー
’12年、アメリカ
原題:Spring Breakers
監督・脚本:ハーモニー・コリン
製作:クリス・ハンレイ、ジョーダン・ガートナー他
製作総指揮:フェルナンド・サリシン、テッド・フィールド他
撮影:ブノワ・デビエ
音楽:Skrillex、クリフ・マルティネス(元レッチリ)
キャスト:ジェームズ・フランコ(エイリアン)、セレーナ・ゴメス(フェイス)、バネッサ・ハジェンズ(キャンディ)、アシュリー・ベンソン(ブリット)、レイチェル・コリン(コティ)、グッチ・メイン
2013/06/30 | :とらねこ’s favorite アメリカ映画
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コメント(2件)
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いや、あのね、キミ、ボクも心のチ◯コは勃ったけど、、、
ボク、あんまり美しかったから泣きそうだったんだよ。この美しい季節が、やがて終わるのかと思うと。。。
『テルマ&ルイーズ』みたいな映画にしていないところがコリンちゃんのクレバーなとこだと思うんだが。まったく内面なんか描かないという。
ウラヤマチ◯コさん
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
うん、君も心のチ◯コが勃ったのね。良かった良かった!
チ◯コチ◯コ語ってごめん。ちと、ビッチ全開で話した方が伝わりやすいかな、と思ってしまったもので。
すごく美しかったよね。ホントに。
なんかいいなあ、言葉で語っても全然語れた気がしないの。見ないと通じないって感じ。これこそ映画だよね!
テルマ&ルイーズ、なるほど。あんな風に暴走のオチをつけなければいけないっていう、終わりの哀しさが無いところがこの作品のポイントだったのかも!
私はこれを上半期のベスト1にしたけど、「これを一位にして、頭悪いと思われないか不安」と考えなかった自分を褒めてあげたい気分!