ディストピア映画のザラザラした孤独が心地いい 『オブリビオン』
この手のディストピア映画って好み。世界を再構築して定義し直してみせるのがSFの最大の良さ、と思う一方で、こんな風に程良く現実逃避した物語もまたたまらないのですー。タルコフスキーの『惑星ソラリス』、ごく最近では『月に囚われた男』、少女漫画で言えば『ぼくの地球を守って』(一番好きなのはもしかしたらぼくたまかも!←この言い方懐かしいナ)。地球をたった2人で見守る、という限定されたシチュエーションがたまらない。
トム・クルーズを主人公にした時点で、まさかこんな静かで落ち着いた良質のSFが来るとは思いも寄らなかったので、嬉しい誤算。なんだかんだ言いながら、今月はトム・クルーズの映画を3本も見てしまったので、さすがに今月はさらなるトムクル物は打ち止めにしよう。(心の声)
人の居ない地球をただ黙々と、来る日も来る日もパトロールする毎日。無人偵察機ドローンが早い時点ですでに何度となく誤作動するところで、嫌な予感がしてた。退屈だけれど安定した日々を壊す事になるのは、美しいオルガ・キュリレンコが宇宙船で到着したその時。謎の男ビーチに出会って、真実を知るための鍵を手にする。
アクションシーンもそこそこ散りばめられているけれど、一番心に残るのは、地平線に向かってずっと無人の荒地を、バイクでひた走る姿の美しさだったりする。斜め背後から追いかけるシーンも美しいし、カメラが180度対極から捉えて、対象を抜き去って行くところも印象的。ファイナルファンタジーの世界みたいに、突然現れた緑豊かな湖の畔の映像とかも堪らない。これなんかを見ると、『月に囚われた男』よりタルコフスキーの影響が重厚かも、なんて思ったりも。
そうそう、たとえ同じ遺伝子から生まれたとしても、この生を受けた自分は特別な存在だと信じたいんですよね。SFとしてはよくある設定ではあるけれども、アイデンティティを探求するために、あえて努力をして見つけ出さなければいけない自我がある。この辺りが、ほかのジャンルより一段深みがあって面白いんですよね。SFはこういうところがやっぱ好き。
13年、アメリカ
原題:Oblivion
監督・原作:ジョセフ・コジンスキー
製作:ピーター・チャーニン、ディラン・クラーク他
製作総指揮:デイブ・モリソン、ジェシー・バーガー
脚本:ジョセフ・コジンスキー、ウィリアム・モナハン他
撮影:クラウディオ・ミランダ美
音楽:アンソニー・ゴンザレス、ジョセフ・トラパニーズ
キャスト:トム・クルーズ(ジャック・ハーパー)、オルガ・キュリレンコ(ジュリア)、モーガン・フリーマン(ビーチ)、メリッサ・レオ(サリー)他
2013/06/25 | :SF・ファンタジー オルガ・キュリレンコ, ジョセフ・コジンスキー, トム・クルーズ
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ふらり…お久しぶりでございます
近頃プチ多忙にてあまり映画も観にいけてないのになぜか本作は鑑賞
いや~よい荒野感出てましたね
「ぼっち」っぷりとか「無人の荒野を疾走」とか厨ハート鷲掴みwww
でも、湖とくれば、やぱしタルコ臭しますやね
ちょとやばかったけど寝ずに完走したおwww
それにしてもSF意匠にトム様の画ヅラを見ると思いはせざるを得ませんね
「バトルフィールド・アース2をはよ!」と
>トム・クルーズを主人公にした時点で、まさかこんな静かで落ち着いた良質のSF
これはこれで好きなテイストですが、せっかくのトム様SFなのにサイエントらないんだーてがっかり感がwww
いぁ…世はそんなにサイクロ人とか鼻毛ビロンとか求めてないっすけどね
みさま
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
お、これご覧になったんですね。みさんてば最近現れないけど、どうしてるのかなー…と思っておりました。
ですねー、この荒野感良かったですよね。心地いい孤独感と宇宙ステーションのミニマルな自宅感がたまらないです。
なんと、これを見て『バトルフィールド・アース』を思い出されたんですね。トム様のサイエントロジー・サイエンス・フィクション、略してSSF繋がりか。
…て、もう、バトルフィールド・アースだけは本当、勘弁して〜(泣)。あれも確か、蔵六さんに猛プッシュされて見たんでした。プラス、みさんの後押し(崖から一突き)もあったんでしたっけ?w
話は変わりますが、今やってるSFだと、アフター・アース評も大分割れてるみたいですよ。シャマラニストなみさんはやはりこれも押さえてるんでしょうか?
この評判も、糞臭ふんぷんたる匂いがするんですよネ。私、スミス親子の姿見て嫌になっちゃって行けてないんですが、どうしよう。意外と普通の映画という評判も聞くんですけどね。
あ~申し訳ない
『BFE』は大好きだけどひとに勧めちゃいけない作品カテなのについポロリと口からもれてしまうんですよねwww
で、スミス親子×シャマラン×SFときたらば…
うん、目に見えてる地雷でしょう
もうね、埋まってないの。信管むき出しwww
そりゃ観にいくわさーって、あれ?フツウ…
どっちの風味もほのかにはあるんですけどビッグバジェットだからそれなり平均点になっちゃうのかなーと
皆が叩くし興収しょんぼりだから、雇われ手慰みの『エアベンダー』『アフターアース』と近作のシャマ度がおさえめになってるのが寂しい限り
シャマラニアンはこう思ってる筈です
力の限りバットを振って欲しい!それもボール(興収)を打つためじゃなく宇宙人にケツバットを!とwww
みさま
こんばんはアゲイン!
咽頭炎になっちゃいましたヨ。喉痛い。げふんげふん。
いやあ、いいんですいいんです。みさん、本当好きですよねえ、『バトルフィールド・アース』みたいなトンデモSF。『フォーガットン』を忘れずに居たことにも衝撃を受けましたがw。
あー、やっぱアフター・アースもしょんぼり地味な大作って感じなんですね。そうなっちゃうとシャマラン作品と言えど、よくある駄作臭強い凡作になっちゃうかあ。 守りに入ってるますね、シャマラン。
ぶははw。ケツバットって、『サイン』へのオマージュが感じられるグッジョブな文ですな。でも、ケツバットで叩くべきなのは、シャマランの方かも。
その腐った根性を叩きなおすために!
ところで、『ライフオブパイ』のあの今の姿の主人公の人って、シャマランに似てませんでした?おかげで、映画自体が胡散臭く思えちゃいましたYo!ぶーぶー!意外なところでシャマラン効果アリw
いまごろコメですが。
タルコフスキーとくっつけるのはなるほどそうかもなと思いました。
ソラリスもそうだけど『ノスタルジア』と近い主題を持っているかもしれませんね。
まあワタシの見方では萩尾望都説最有力なんだけどねw
すたさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
あ、ですよね!『ノスタルジア』。テーマ的にはこっちもありそう。
あ、『ぼく地球』の話をすると、よく萩尾望都も読め!ってよく言われるんですよね(笑)
いいですよねー、この時代の少女漫画って。ヨーロッパの影響受けてたりして、カルチャー度数が高くって。
萩尾望都はレイ・ブラッドベリ原作とかもあるんですね。