モネ的非現実空間が心地良い 『言の葉の庭』+『だれかのまなざし』
『言の葉の庭』
やっぱり日本のアニメは良いなあ。画がすごく綺麗で見ていて目が喜ぶ。ウットリ堪能。水の美しさ、光の反射に特にこだわって描いているのが分かる。まるで『イージー・ライダー』みたいに、カメラのファインダーを通して光がカメラに映り込んだ姿を見せるんだもの。
水と光の反射によってより美しく際立つのは、緑の色合い。たぶん今回狙った色合いはモネだと思う。舞台となるのは雨の新宿御苑。ボーイ・ミーツ・ガールものでシンプルに始まる出だし、ストーリーに邪魔されず絵を見ているだけで陶酔できる冒頭が特に素晴らしかった!
物語自体は起承転結で綺麗に分かれていて、4つに分けた小パート毎に少しづつ彼らの心理や事実を発見していく作り。特に私が好きだったのは、起・承の部分。本当はまっすぐ歩けなくなった彼女と、将来靴職人になることを夢見て、一生懸命生きる少年の出会い。優しくて心地良い関係。雨の日に授業をサボるという、ほんの僅かな現実逃避感が、とても幸福感に包まれているの。都会からすぐそこの非現実空間。
“転”では、とある事実を主人公の青年が発見した後、突然急展開する。ゆっくり進んでいったこれまでのパートと違って、踊り場の場面で女性の心理の激白場面が来るのと、ここで音楽が突然鳴り響いて、ここがクライマックス!とばかりに強引に台詞も音楽も盛り込まれてしまっている。このドラマチックさ加減には少々面食らった。女性がこれまで誰にも言えなかった内面を告白する場面であるのは分かる。ただ、音楽の使い方がとても陳腐で台詞もちょっといただけない。まるで日本の駄目なTVドラマ風。せっかくそれまでの丁寧な物語がここでドッと白けてしまった。おかげでその後は全てどうでも良くなってしまった…。
ラストでの注意書きにはビックリ。「作品では新宿御苑を舞台にしていますが、実際には新宿御苑ではお酒は飲めません」。
そうなの。以前は、新宿御苑でお酒が飲めたんですよね。私があそこでオフ会をやったのは2009年だったかな。伊勢丹でお酒を買って御苑で昼から集まって呑んだ。「神亀」を呑んだっけ。
今年の春に、御苑でお花見やろうと声をかけたら、「今、お酒飲めなくなってるよ」なんて言われて、そうだったんだ!と初めて知ったのが今年。御苑でお酒呑むの楽しかったのになあ、残念。
’13年、日本
監督・原作・脚本:新海誠
キャラクターデザイン・作画監督:土屋堅一
美術監督:滝口比呂志
音楽:KASHIWA Daisuke
エンディングテーマ:(作詞・作曲):大江千里、(歌):秦基博
『だれかのまなざし』
※ネタバレで語ります********
一体誰の眼差しなんだろう、と見始め、後で分かるのが飼い猫の視線。彼女は自分が亡くなった後も、天国から少女とお父さんとを見つめているの。優しくて可愛い物語でした。これ、平野文さんかな?彼女の声は一瞬ですぐ分かる(笑)。
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コメント(2件)
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とらねこさん、こんにちは!
いよいよ、梅雨入りしてしまいましたね。
でも、この映画を見ていると、関東の梅雨もなかなか風情があるなーって思います。
この映画、ほぼ1年前に、とらねこさんは劇場鑑賞されていたんですね。
>楽の使い方がとても陳腐で台詞もちょっといただけない。まるで日本の駄目なTVドラマ風。せっかくそれまでの丁寧な物語がここでドッと白けてしまった。
解ります・・・。
せっかく素晴らしかったのに、ちょっと残念でした。
そういえば、新宿御苑がお酒が飲めなくなった件、こちらで初めて知りました!
latifaさんへ
おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
ちょうど梅雨の時期に差し掛かりましたね!
この作品に描かれた梅雨はほんとに美しくて。素晴らしかったですね。もう一度見たいなあ〜。
lZ会のCM見てみました!「クロスロード」。
TV全然見ないので、知りませんでしたよ。latifaさんに教えていただけて、初めて見れました!
はい、私には映画は、後半の展開がイマイチに思えました。
latifaさんのところで議論になっていたような、“男女の恋愛と見るか、先生と生徒で見るかの違い”で評価が下がる訳ではなく。そんな、ちょっと普通にはあり得ないところ、ここがこの作品の魅力でもある、と私は理解しています。
ただしそれを差し引いても、クライマックスの展開のガッカリ加減は、せっかくの物語を駄目にしてしまったなあと。
この作品は良さが分かる一方で、評価しない人が居るのも分かるんですよね…。そしてそんな人は、結構twitterには居ましたよ。
新宿御苑でお酒が飲めなくなってしまった件は、最後の注意書きにそう書いてあったんですよ。
DVDではありませんでしたか?
あ、DVDだとエンドロールご覧にならないか。