身も心もシリアルキラーになれるPOVがグッジョブ! 『マニアック』
今かかってるホラーの中で一番のオススメはこれ。と言ってもこの作品には看過出来ない悪性のボカシがかけられていて、それも“R15”指定のためだというからタチが悪い。ま、その件についてはこのサイトに詳しく書かれているのでそちらを参照していただき、全部省かせていただくことにして。
※参照サイト:リメイク版「マニアック」日本劇場公開R15規制について | ナマニクさんの暇潰し
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのイライジャ・ウッドがシリアルキラーを演じた、ということが良くも悪くも前述のボカシに至ってしまった様子。とは言え、この作品に出てくれたことが素晴らしかったと私は思う。フレンチホラーの実力派アレクサンドル・アジャのプロデュース&脚本のもと、『P2』でもコンビを組んだフランク・カルフーン監督!なんて聞いたら、外れる可能性はほぼないと思っていたけれど。それにしても素晴らしい。ますます安定のハイクオリティ!私的には大絶賛でございますー。
主人公の目線のままに見る世界をカメラで追うPOV手法。こんな手垢のついたものが、これだけ新鮮に映るだけでも、素晴らしいという他ないでしょう。人形の修復技師である主人公が抱く、マネキン人形に対する思い入れは、まさに彼独自の想像世界。これ、『サイコ』を初めとするエド・ゲイン物としても、映画史的に正統派な確かな手触り。
「ものが二重に見える」というのは、『KOTOKO』でも描かれていたけれど、統合失調症の人の見え方として、本当にあるらしいですね。幻視に苦しむ姿や、偏頭痛に悩まされる苦しさまで、見ているこちらに伝わってくるかのよう。身も心もシリアルキラーの気分が味わえる作品として、今後も傑作として語り継がれる作品だと思いますよ。ラスト間近、主人公に起こった出来事がPOV視点でもハッキリと分かる辺りにも拍手!
彼のくだらない人生にとって、一番幸せだった瞬間が心の中で繰り返されるのよね。あそこ、泣いた…。
’12年、フランス
原題:Maniac
監督:フランク・カルフン
製作:トマ・ラングマン、アレクサンドル・アジャ、ウィリアム・ラスティグ
製作総指揮:アリックス・テイラー、パブリナ・ハトウピス他
脚本:アレクサンドル・アジャ、グレゴリー・ルバスール
原作:ウィリアム・ラスティグ
撮影:マキシム・アレクサンドル
音楽:ロブ
キャスト:イライジャ・ウッド(フランク)、ノア・アルネゼデール(アンナ)、ジェヌビエーブ・アレクサンドラ(ジェシカ)、ジャン・ブロバーグ(リタ)
2013/06/12 | :ホラー・スプラッタ アレクサンドル・アジャ, イライジャ・ウッド, フランク・カルフーン
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こんばんは!
お久しぶりです。
やはりアジャ絡みの作品にはハズレはない。信頼のブランド・アレクサンドル・アジャの金看板に偽りなしな作品だったと思います。
もしこの映画に20台前後に出会っていたとするのならば、この殺人鬼に感情移入しすぎてどうにもならなくなってしまっていた事でしょう。画像にある公園のシーン、良いですよね。女性からそっと手を伸ばされた事をキッカケに、恋に落ちてしまう。でもフランクは結局彼女の頭を剥ぎ取ることでしか、彼女をものに出来ない。グッときましたね。
そうそうボカシのシーンは余計ですよね。「ボカシ外して18禁で上映すれば良いじゃん」って思いました。映倫の規制基準ってよく分からないですよね~。
それはそうととらねこさん、月々のまとめで『ラストスタンド』の評価が妙に高かったけれど、評は書かないのですか?シュワのアクション映画は、とらねこさんがあまり評されていないジャンル。だから、どんな視点でシュワ映画に斬り込むのか楽しみで仕方がないのですけど・・・今年のベスト10入ります??僕は密かに入れたい気分でいっぱいだったりしますが(笑)
蔵六さんへ
おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
ですよね!ですよね!安定のアジャブランド。全く共感でございます♪すごい面白かった。今年見たホラーの中では一番に面白かったです!『P2』の監督&アジャプロデュース、これ二度目だからますます安定感を感じさせますよね。だからこそ、ボカシだけがすごく残念と言えるんですが…。シネコンでかかったおかげでこんなロクでもないことになってるのかもしれません。
そうそう、フランクの心が喜ぶ感じが映像で表せてたと思うんです。あの、初めにデートサイトで出会った女性なんか、顔立ちだけ見れば本当は可愛いし優しいのに、この人じゃフランクは全然心が動かされないというのが、モロに分かるんですよねw
『ラストスタンド』めっちゃ面白かったですよ〜!ただその頃、たくさん書いてないレビューを抱えてて、にっちもさっちも行かない上に、公開後かなり経ってから見たのでもういいかなと、書くのをやめてしまいました。私も上半期のベストには余裕で入ります!
あそうそう、蔵六さんは気に入られるか分かりませんが、私は今年は断然『スプリング・ブレイカーズ』が気に入ってます。シネフィルには嫌われるような作品かもしれないんだけど、もうとにかく最高!
…そう言えばギドクは見ないんですか?