自らの役割分担に納得出来る人生 『シュガー・ラッシュ』
ガチャガチャした画面感覚が可愛くてハマった!
これ、吹替しか無いといういわくつきのディズニー映画。何故そんな決断をしてしまったのだろう…と疑問に思い、映画館スルーを早い時点ですっかり決め込んでいた私だったけれど。世間の絶賛を耳にした、吹替派の相棒さんが見たいと言い出し、私もホイホイ(ゴキブリ)ついてくことに。
やっぱりオリジナル原語で見たかったよー!という思いは否めない。ジョン・C・ライリーの声が聞きたかったもの。いつも英語で見てるし、その方がずっと楽しめたはず、個人的には。でもスクリーン内に映った、ヴァネロペの車のボディにベッタリと書かれた日本語を見たら、こうした効果のために日本語オンリーにせざるを得なかったのかなあ、などと考えたりも。
CGアニメ映画を製作する時に、どういうものが目新しく映るだろうかと、企画するんだろうか。まだみんなが見たこと無いもの、有りそうでなかったものについてああでもない、こうでもないと議論が交わされるのかな…などと想像する。この作品のように、「初期のゲーセンやPCゲームで見たような、アナログっぽいゲーム画面感」。これは間違いなく新しい物だった!これは当たりでしたよ、企画会議の人たち!…だなんて、誰とも知らないディズニーの“企画会議のお偉方”を褒める気になってる。いやもう、冗談はさておき、ゲームのキャラクターを映画に映し出すというアイディア、うん、これはありそうで全く無かった物だった。こうした素晴らしいアイディアが、アイディア一発物に終わらず、きちんとした映画へと昇華できたことが、本当に素晴らしい!
ゲームのキャラが別ゲームに入ってしまう。本当にゲーム好きにはたまらない設定ですよね。私にすらこのワクワク感は分かる。ゲームの主人公たちがゲームの世界から飛び出してもなお、メタゲーム感覚を失わない。さらに重要なことに、オタク的世界観を構築してしまうことなしに、より一般を取り入れることを望むという、正面突破がなされてるんですよね。
画面のフェチ感も半端無くイイ。お菓子のふわふわ感やカラフルポップな色使いとか、ジェリーの三角形のお菓子にシュガーコーディングが掛かった半透明感とか。それから、コーラの池にソーダを落としてシュワーっと爆発する、こんなアイディアもとってもいい感じ!画面に映る世界が、二重にも三重にも目を喜ばせる、そんなサービス精神に溢れてる。
ストリートファイター2(あれ?2でいいんだよね?)のリュウケンやザンギエフが出てくるのも本当にツボだし、クッパとか、それぞれに全く違う登録商標を持つはずのキャラが大集合しちゃってる辺りも、わーい、ドリームチームだネ!!パックマンのPCゲームなんて来た日にゃ、オーマイガッ!ですわ。PCがまだ普及する前にあったゲームで、近所の男の子の家であのゲームをやった日は、目を閉じてもあの画面が頭から離れなかったよ。
ラルフの出てる「Fix it Felix」は、思わず「ドンキーコング」を思わせるようなどっかで見たことありそうなゲーム。あの絵だけで、往年の大ヒット作品なんだろうな、って感じが分かるよね。カルホーン軍曹の出てくる「Hero’s Duty」では、それより少し後のタッチのゲームだってことが、絵だけで分かる辺りも面白くって。
この物語での本当の悪役が誰だったか、ヴァネロペの正体は何だったかが分かる下りなんて、本当に上手くてアッと驚いてしまう。
この作品の真のテーマがちゃんとしてるんですよね。「この世界で自分が行わなければいけないロールプレイ」、時にはここに疑問を感じる人もいるんですよね。その自分の狭い世界から抜け出すことは、冒険ではあるかもしれないけれど、そのまま自分が役立たずになりそうな怖さもある。(“ターボ”する人生の恐怖)時に思い切って行動して、自分の役割の意味を自分で理解することが出来れば、その人にとって人生はちゃんと意味のあるものになる。いかに自分の人生にちゃんと自分で“納得できる”か、それが大事になるんだけど。だって結局、現実では自分の人生から“ターボ”は出来ないものね。…こういう当たり前の感想を言えてしまうのも、このディズニー作品があまりにちゃんとしてるからなんだな。
とにかく、お姫様物や伝統を離れてなお、ディズニーがこれだけの参謀が効く凄いチームなんだってことが、本当に凄いなと思った。『プリンセスと魔法のキス』といい、『塔の上のラプンツェル』といい、ディズニーの快進撃は止まらない!たとえ、主題歌がAKBでもね…。
12年、アメリカ
原題:Reck-it Ralph
監督:リッチ・ムーア
製作:クラーク・スペンサー
製作総指揮:ジョン・ラセター
原案:リッチ・ムーア、フィル・ジョンストン他
脚本:フィル・ジョンストン、ジェニファー・リー
音楽:ヘンリー・ジャックマン、挿入歌・エンディング曲:AKB48
キャスト:ジョン・C・ライリー=山寺宏一(ラルフ)、サラ・シルバーマン=諸星すみれ(ヴァネロペ)、ジャック・マクブレイヤー=花輪英司(フェリックス)他
2013/05/13 | :アニメ・CG等 ジョン・C・ライリー, リッチ・ムーア
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何気にAKBの主題歌好き・・・
しかしこんなレトロゲームだらけの映画なんて、コドモ向けのフリして実はオヤジ世代向けなんじゃないかって(笑
今の子供PONG!やQ-bertなんて絶対知らないし。
30代でも難しいんじゃないかなあ。
40代の親が観たがって子連れでくる事狙いなら流石です、ディズニー。
ノラネコさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
アハハw私も気づいたら、シュガー・ラッシュの歌口ずさんでいたりします。超適当だけど。
確かに、レトロなゲームは大人の方をターゲットにしてそう^^;
でも、子供にとっては知らないゲームだとしても、伝わるように出来てるところがさすが。
PONG!とQ-bertって何…?と思ったら、PONG!て私、類似品のやつ持ってましたよ!名前は忘れたけど。
Q-bertは知らなかった。あ、でもこの絵、映画の中にチラっと出て来ましたね。エンディングでも目立ってました。
とらねこ姉さん、こんばんは~☆(* ̄▽ ̄*)
昔ゲーム開発に関わってた事もあって、世間で
の評判もいいし、思い切って観てきましたよ♪
映像や音楽や設定やギミックなんか「さすがは
ディズニー!」って安定と安心でしたが、オイラ
が今回やられたのはラルフとヴァネロペの関係性
です。
なんか損な役回りばかりしてる自分と、ちょっと
生意気だけど可愛い姪っ子の姿が被って、途中で
思わずボロボロ泣けてしまって!(T-T)
まさかこの歳になってディズニー映画で泣かさ
れる事になるとは思いもしませんでしたよ。(^^ゞ
ガンヘッド♪さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
お、コレご覧になったんですね!これは出来がいいですよね。
うぬ?!なんと、ガンちゃんはゲーム開発に携わってたことがあるんですね。知らなかった〜!
あ、そうそう最近、『デスレース2000』を見て、ガンちゃんのこと思い出してました。あの頃、オリジナルが好きだったんだ、なんて話してくれましたよね^^
シルベスター・スタローンが出てたんですね、しかも悪役でw。
そう、ラルフとヴァネロペの関係は良かったですよね!そか、姪っ子さんを思い出しちゃったのね!姪っ子って誰にとってもホント、可愛い存在だよね〜^^*。
あと私はね、ラルフに、周りの人たちがケーキ焼いたり、パーティに呼んでくれるようになったところで、泣いちゃいました。