ジョン・ドゥーが賞金首、日本全国殺戮地獄!? 『藁の楯』
予告を見る限り、私の苦手なTV局映画の匂いがする…と懸念を感じながらも、このサイトなど見て、三池映画への期待を個人的にフツフツ高めていたのです。(「三池崇史は日本のタランティーノか?」)海外のアツすぎる三池ファンの一言、一言が本当嬉しくって!!この長い記事の全てのコメントを、2度、3度と読んでしまう始末。そうか、日本本国の三池ファンは、彼に対する思いの沸点がまだまだ低いのかもしれないッ!「三池は状況に適応する。」とか、「あれだけ作っていながら、どれも標準の高いクオリティを保っている。」とかね、「駄作を駄作と認めてこそ、本当の三池ファンだ。」なんて、お前ら本当~分かってるな!なんてイイ事言うんだ!!(しかもみんな良く作品をチェックしてる!)…と、思わず海の向こうの三池ファンを抱きしめたくなった次第…☆
それでも上映前にズドーンと出る「日テレマーク」にはついついどんよりしてしまったさ。でも、不安な気持ちをかき消すような、グイグイ引っ張りこんでいく前半~中盤にかけての切れの良さ!オオッ、『十三人の刺客』、それも狙いが松平斉韶、というパターンか…!?こういう究極のシチュエーションがそもそも、三池テイストにピッタリ合ってて、思わず前のめりになる。なんて分かりやすく面白いんだろう!~ここから、ネタバレで語ります。~
冒頭のミッション、未曾有の大混乱が予想される高速道路での輸送では、アクションもカーチェイスも派手に描かれる。先行き不安になり、一体どうなってしまうんだろう!?そもそもこの指令自体、遂行可能なんだろうか?!と、どんどん不安が大きくなる。『藁の楯』のタイトルの意味も分かって恐ろしくなったり、この先がワクワク掻き立てられてしまうんですね。
そして、次に新幹線での輸送に切り替わる。ここから先はアクションが抑えめになるんですよね。むしろこの作品の見どころは、人間ドラマにあると言わんばかりに。クセの強いそれぞれのキャラクター達が、お互いに真剣勝負で相手の心理を探り、疑り合う。こうした、彼らの心の奥にある葛藤を見せるところが、この作品の肝である様子。この序盤、新幹線で岡山に到着する辺りまでに、ここでのやり方を鮮やかに説明しているところが見事なんですよね。
藤原竜也の出番や台詞は多すぎず、この人物の謎な部分をしばらくの間持続させていたところが、最後まで飽きさせずにテンポを保つのに良かったと思う。台詞は決して多くないのに、圧倒的な存在感を誇るところはさすが!彼が映る度に画面に釘付けになってしまった。本当に素晴らしいなあ!藤原竜也は『SABU』で以前、三池組には主演したけれど、その時に私は初めて見て、思わずこの人は凄い、と惚れ直してした。だからこの作品も結構、彼には期待大!でした。
ただまあ、正直言えばラストなど、ちょっと間延びしてしまった部分はあったかも。「これ『セブン』ですよね」と言いたくなるようなラスト付近辺りから以降、急速に退屈さを感じてしまうんですよね。でも、全体的にはなかなか楽しめた作品でした。これ、カンヌでのコンペのオープニングなんですよね…。そこでは一体、皆どんな反応を示すんだろう…。
’13年、日本
監督:三池崇史
製作指揮:城朋子、ウィリアム・アイアトン
エグゼクティブプロデューサー:奥田誠治、小岩井宏悦
原作:木内一裕
脚本:林民夫
撮影:北信康
音楽:遠藤浩二
主題歌:氷室京介
キャスト:大沢たかお(銘苅一基)、松嶋菜々子(白岩篤子)、岸谷五朗(奥村武)、伊武雅刀(関谷賢示)、永山絢斗(神箸正貴)、余貴美子(タクシー運転手)、藤原竜也(清丸国秀)、山崎努(蜷川隆興)、本田博太郎(大木係長)
2013/04/29 | :サスペンス・ミステリ, :三池崇史(今月の三池さん) 三池崇史, 大沢たかお, 松嶋菜々子, 藤原竜也
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コメント(5件)
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こんばんは。
ワタシはこの映画イマイチだったのは何でだろう!と考えた時
思ったのがクズには見えない清丸演じた藤原くんだったからだと思いました。
このキャストを柄本明氏の息子さんだったら、クズと哀れさを持った犯人像になったんですが
もっと大人だったら蛭子さんとかね(笑)
できれば知らない役者なんかで、そう韓国映画なんかで観たかったかも^^
itukaさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
おや、itukaさんはイマイチでしたか。まあ、気持ちも分からないでもないなあ…私は結構楽しめたんですが…。
んー、確かに藤原竜也君は基本、クズにはあまり思えるタイプじゃないんですけど、三池さんて結構こういう人をクズにキャスティングすること多いんですよね。『十三人の刺客』の稲垣吾郎とか、『悪の教典』の伊藤英明とか…。
私は、むしろ藤原竜也君は、演技が上手い分迫力もあって、すごい良かったと思いますyo〜!
あー、でも柄本明の息子は確かにポイント高いですね!
柄本明の息子だと、柄本佑もいいけど、こっちには柄本時生の方が、私だったらキャスティングしたいなあ♪
でも、邦画ってどうしてもキャスティングが思うようにいきませんよね。「この俳優を使うならこの人も使わないと」みたいな感じで、どうしても決められてきちゃうから…
韓国映画で見たかった、という気持ちは分かる気がします〜!
そうなんですよ、最後が普通になっちゃうんだよなあ。
ここが突き抜けられたら大傑作だったんだけど。
でもまあ、設定と展開の面白さに加えて、ビジュアルもスケールが大きく、キャラもそれぞれ立っているという実によく出来た娯楽快作でした。
ノラネコさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
今日は雨がすごかったですねえ。
そうなんですよねー、ラストが尻つぼみなんですよね。
私も設定と展開、起承転結の起・承ぐらいがとても良くて、ツカミがバッチリだったと思います♪
そうそう、キャラの描き方が何より良かったですよね〜!