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アンデルセンならぬドグマの国で大博打 『ギャンブラー ニコラス・ウィンディング・レフンの苦悩』

2013-04-21_1903今でこそ、『ドライヴ』の大ヒットで有名となったニコラス・ウィンディング・レフン監督だけれども、一時期破産スレスレまで追い込まれた時期があった…。まさにタイムリーにこの時期を追いかけたドキュメンタリー。

ファン向けの作品ではなく、さすがラース・フォン・トリアーの国というべきか、ドグマタッチのリアリティ溢れる映像。シネスコサイズで撮られ、思わず『プッシャー』を彷彿とするようなザラついた映像だとか、クローズアップや絞りを効果的につけたり、編集は順当でなされているのでした。

レフン監督のフィルモグラフィーとしては、『プッシャー』がデンマーク国内で、国を上げての大ヒットとなるも、3作目の『fear X』で興行的に大失敗。配給会社は潰れ、会社は大赤字を抱える。大きな負債を抱えてしまった監督は、『プッシャー』2と3を撮ることを決意。『プッシャー』1作目の大成功を見込んで、2で何とか負債を帳消しに出来、3で大金持ちになれるかもしれない、という新たな希望が湧いてくる。現時点で、経済状態は大負債を抱えてはいるけれども…というその苦しく長い時期。それでも人生の大博打をに打って出るレフン監督。勝つことを期待して博打に出るなんて、なんだか私も一度はやってみたいなあ。なんちゃって。

2を撮り終えると、今度は3を撮るための資金が無くなり、映画協会から何とか資金を借りれば、今月の支払いが何とかこなせる…というギリギリの状態に。『プッシャー』1に出演した恋人のリヴ・コーフィクセンからは、差し迫った今月の支払いについて止めどなく責め立られ続ける姿が痛ましい。赤ん坊がまだ小さく、カメラの前をよちよち歩いてたりするのがまた…。こういうシーンを見ていると、思わず「文句を言わないであげればいいのに…」なんて思ってしまうけれど、ゲゲゲの女房みたいな出来た大和撫子には、私もなれないかも…。『プッシャー2』で、マッツ・ミケルセンが「子育てにはお金かかるのよ、明日からどうするの」なんて言われるシーンがあるけれど、あれは実際の監督の経験から書かれた台詞だったのね(苦笑)。

『プッシャー2』では、役者経験の無かった素人の人たちをたくさんキャスティングしているそうだ。TV番組で特集が組まれ「実際の犯罪者を使っています」なんていうのを売りにしてしまったものだから、それを見た出演者たちが揃って抗議したりなど、クルーの雰囲気が悪くなったりも。

私としては、そんなに赤字を出すこととなってしまった『fear X』に興味津々。『プッシャー』を撮った後、トリロジーの話もあったらしいけれど、その前にどうしても撮りたかった作品が『ブリーダー』、さらに『fear X』と続く2作だったということだし。そう聞くとどうしたって気になってしまうじゃないですか。『fearX』はなんでも、3年かけて脚本を練ったプロジェクトということだし(撮影は早めに撮り終えたらしいけれど)。

プッシャー続編シリーズは、その後大ヒット。おそらく、マッツ・ミケルセンが出ていたことが成功に繋がった様子。最後には「今でも監督は借金を返しています」で終わっていたけれど(笑)、この後ハリウッドで成功出来て良かったね。

’06年、デンマーク
原題:Gambler
監督・脚本:フィー・アムボ
キャスト:ニコラス・ウィンディング・レフン、リヴ・コーフィックセン、Søren Høy

 

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コメント(2件)

  1. おお、ちょうど『プッシャー』トリロジー書いたとこでした。
    『ブリーダー』『fear X』は2月に観れなかったのよね(涙)なのでトリロジーは絶対行きたくて。面白かったなー。3が一番面白い。
    3部作になった裏側も分かりました。資金なんですよね。でもそれを感じさせない面白さがありました。特に3ね。これはとらねこさんにもご覧いただきたいです。

    そういえば、TB再開しましたの?

  2. rose_chocolatさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    roseさんもプッシャー見たんですね。なんかすっごく意外!私はDVDはほぼ書いてないんだけど、このドキュメンタリーはあまり見る機会がないだろうと思ってついつい書いてしまいました。
    プッシャーの2と3は、私はこれからなのです。たぶん来月になっちゃうかな。
    TBは、一応再開はしたんですけど、というのは、この新しいテンプレについていたからなんですけど。ただ、こちらから出ても一切反映されてないんです。何故か…。もらってもこちらから反映されなかったら意味ないので、また取ってしまおうか考え中です。




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