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事実まんまでドラマティック 『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!』

2001’11年、アメリカ
原題:First Position
監督・製作:ベス・カーグマン
製作総指揮:ローズ・カイオラ
撮影:ニック・ヒギンズ
編集:ベス・カーグマン、ケイト・アメンド
音楽:クリス・ハジアン

 

ハズレの少ないダンスものドキュメンタリー。

 

ダンス映画はどれもこれも面白いものが多くて、ハズレがなく大概楽しめる。ドキュメンタリーであれば、’08年に公開された『ブロードウェイ・ブロードウェイ コーラスラインにかける橋』が面白かった。これは、ブロードウェイ・ミュージカル『コースラライン』に出るためのオーディションを受けるダンサー達の物語、それこそ『コーラスライン』のストーリーそのまま、まさにもう一つの『コーラスライン』だった。

小さな頃からダンスの英才教育を受けた、「我こそは」というリトル・ダンサーたちの、死に物狂いの努力。これまた「人生の切符」を手にするための物語であるから、そこには悲喜こもごも、幾千ものストーリーがありそう。おそらく見て損はしない物語になるだろうなと思ったけれど、やはり期待通りの面白さ。あるがままに撮っただけで絵になる、喜劇にも悲劇にもなる。文句無しに面白い。また、山岸凉子ファンの私としては、『舞姫 テレプシコーラ』の中で、ローザンヌに主人公たちが出るというシーンがあったから、手に取るように気持ちが分かってしまう。ここには、それこそ天才の卵、別の空美ちゃんや千花ちゃん、六花ちゃんが出てくるようなもの。

印象深い子達ばかり。まず、日系と南米系の混血のアメリカ人兄弟ミコとジュールズ。ミコはとても上手な女の子なのだけれど、ジュールズの方は一人でコメディ部分を担当していて、彼のシーンだけ笑いが起きていた。お母さんが、日本人だったのだけれど、すごく教育ママで可哀相だったな…。それから、ヨーロッパの大会に出場した、ローマへ2時間かけて通うアメリカ人の男の子とガヤちゃんの二人。彼らはまるでカップルのように寄り添っていた。女の子の方は、元々それほどダンスに熱心でもなかったのに、彼の上手な踊りを見て突然目が覚めたように上手くなりだしたり。彼女は最後銅メダルまで行っていた。それから、紛争中に生まれ、ご両親を目の前で殺された白斑症のアフリカ系移民の女の子。コンプレックスを乗り越えて見事な踊りを見せた時は、胸がジーンとした。年長組の、ハンサムなコロンビア人の青年ジョアン。コロンビアから初のユースグランプリの単身の参加。自国では活躍する場がないため、今回のユースに全てを賭けている。

私は特にコロンビアのジョアンと、ローマからの参加の男の子が、ダントツに上手いなと思っていた。そしたらやはり、ローマからの男の子はグランプリ、ロイヤルへの推薦入学がもらえたのはコロンビアのジョアン。この二人は圧倒的に違っていて、もう完璧。ローマの男の子の時なんて、毎回出る度拍手喝采だったものなあ。彼は天才レベルなのでは。コロンビアのジョアンも、すごくイケメンで、このままプロになったら人気が出そう。映画のチラシの表紙が彼、ジョアン。

とにかく、真っ直ぐ夢を信じて生きている子たちが、とてもシッカリしていて、すごく大人に思えた。恐ろしいぐらい。とてつもなく厳しい練習に耐え、子供時代を普通とは違う生き方で過ごしながらも、「将来が見えている自分たちは幸せ」と言ってのけるしたたかさ。確かに彼らは幸せで、そして強かった。とにかく眩しい。自分も少しづつ頑張らなきゃ、なんてはっぱをかけられた気分。

 

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コメント(4件)

  1. ジュールズくんよかったですね。お笑い担当。
    ともすると子どもの競争って見るだけでしんどいので、彼のようなガス抜き的存在の使い方はいいと思う。
    ガヤちゃんのダンスも個性的で好きですね。あとそのBFの一番うまい男の子(名前忘れた)。
    彼らが数年後世界の舞台に出て来てくれるのを楽しみにしています。

  2. rose_chocolatさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!

    うんうん、ジュールズ君、お笑い担当でしたね♪
    私はあのジュールズ君のお母さんが正直、あまり好きではなくて、「うーん…」と渋い顔をしながらになってしまいましたが、それでもジュールズ君の部分は笑っちゃいましたよ〜。

    ガヤちゃんのダンスも素敵でしたよね。彼女、あのBFの彼(私も名前忘れた…)に会うまで、それほど練習熱心じゃなかったのに、大会で入賞しちゃうとか、恐ろしいのは彼女のポテンシャルですよ。
    うん、世界の舞台に彼らが立つことになる日は本当に来そう!

  3. こんちは。

    逆にジュールズくん一人だけがダンスにキレがないのが分かるのが面白かったです。トップ・バレエダンサーじゃなくても、彼は彼で勉強に邁進しなくてもエンタメ方面で何やら出来るんじゃないですかねえ。誰もがトップ目指さんでもいいと思うんで。

    「コーラスラインにかける橋」面白かったですよね。

  4. ふじき78さんへ

    こちらにもありがとうございます〜♪
    キネカ大森で二本立てでやってたんですね。
    ふじきさんがいきなりクラシックバレエの二本立てなんてビックリしちゃいました。
    何故か私を思い出してくれたんですね?…ありがとうございます。

    そうそう、ジュールズ君の技術はイマイチなんですが、思いっきり笑顔で誤魔化してて笑えるんですよね。あそこ、私が見た時、ル・シネマでは劇場全体で笑いがドッと出ましたよ。
    ジュールズ君はお母さんが押し付けてたんですよね。あのやり方じゃ、彼の良さまで消えてしまいそう。
    コーラスライン大好きでしたよ!




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