十二月大歌舞伎を見て来ました!@新橋演舞場
【夜の部】演目 一、籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)
三世 河竹新七 作
キャスト:菊五郎(佐野次郎左衛門)、菊之助(八ツ橋)、下男治六(松緑)、七越(松也)、九重(梅枝)他
演目 二、奴道成寺(やっこどうじょうじ)
常磐津連中、長唄囃子連中
キャスト:白拍子花子 実は 狂言師左近(三津五郎)、所化(亀三郎)、所化(亀寿)、所化(宗之助)他
歌舞伎を見に行って来ました。実は人生でまだ二度目。ほぼ何も知らないのですが、だからこそ誘われて興味が湧き行って来ました。前回行った時は大学の授業で、歌舞伎実物を見ないと単位がもらえない、という方針の先生が居て行ったのですが、一番安い席ですごく遠くからしか見れず、途中で寝てしまった思い出が。
東銀座で歌舞伎と言えば「歌舞伎座」と思っていたんですが、ここって今は取り壊しになってしまったんですね。もう2年も前とのこととのことですけど、今まで気づかなかった…。「歌舞伎座、2010年4月で閉場、全面建て替えへ(asahi.com)」こちらを読むと、バリアフリーや耐震の問題もあるため、現存の建物保持は難しいとか。戦後60年も続いた建物で、登録有形文化財になっておきながら、取り壊しというのはやはり少し寂しい気が。古い建物は味があっていいのにね。
現在、松竹の歌舞伎の演目は「新橋演舞場」が多いようです。ここも東銀座。歌舞伎座からもさほど遠くではありません。
今回の演目は、12月の歌舞伎。普段は5日から月末まで行われるそうなのですが、大晦日のため繰り上がり、1日から開始となります。私たちが行った時はほぼ満席。何だかとてもいい気分で一日が過ごせました。こういう「いかにも日本情緒満載」な雰囲気は、私は好きなんですよね。ほぼ初めてと言っていい環境なのに、どこか懐かしいような気がします。小学生の頃、「好きな物語のジャンルは?」と先生に訊かれて、「古典」と答えていた私なので(里見八犬伝や義経記が好き、百人一首の暗記も趣味だったので、そう答えたんだと思いますw)、伝統日本文化は決して嫌いではないみたい。
【籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)】
※あらすじ・・・上州佐野の絹商人、佐野次郎左衛門は、下男の治六とともに桜咲き誇る吉原仲之町に来て、花魁の八ツ橋に心を奪われます。それから次郎左衛門は、八ツ橋の元へ通いつめるようになります。八ツ橋の親代わりの釣鐘権八は、次郎左衛門からお金を借りていましたが、新たに金を借りるのを断られた腹いせに八ツ橋の間夫の繁山栄之丞を焚き付け、栄之丞は八ツ橋に次郎左衛門との縁切りを迫るのでした。そうとは知らず、八ツ橋を身請けするつもりの次郎左衛門は、満座の中で八ツ橋に突然愛想尽かしをされ、うちひしがれて佐野に戻ります。ところが、四ヶ月後再び吉原に現れ・・・(ちらしより)
全部で115分。全幕丸ごと上演されます。ここで40分の休憩。
容姿にコンプレックスを抱く、田舎出身の中年男(非モテ)が、吉原の花魁に熱を上げて振られた挙句・・という物語。日本全国今も昔も、世界中至る所に似た話はありそうです。冒頭の物語設定のところを見て、「あ、これって『サヨナラ』に似ているな」と思いました。マーロン・ブランド演じるグルーバー少佐が、高美以子演じるハナオギに恋をするシーンがまさにそのまんま。もちろんあちらがオマージュを捧げているのでしょうけれど。『サヨナラ』では、そこから先の展開がまるで違いますけどね。
後半以降のところで、花魁に振られた腹いせに復讐する(殺してしまう)男が、「皆の前でよくも恥をかかせたな」と言って斬るのですが、ここが特に日本的だなあと感じました。「恥の文化」ならではですよね。自分が相手をどれだけ好きだったか、ではなく「皆の前で恥をかかせた」(舞台上で二度強調して言います)。花魁の方も男を振る時に「相手の面目が…」とか「義理が…」となだめられそうになったり。日本は、本当に人目や体面を気にする文化だなあと思ってしまいます。
佐野次郎左衛門の役は、日本国宝にもなっているという菊五郎。彼の声はとても聞き取りやすく、ひときわ落ち着いた良い声で素人の私にも上手さが分かるぐらいでした。八ツ橋役はその息子の菊之助が。最後、切られた時に背中からゆっくり倒れるのですが、ここが見事。最も苦しい体勢でホールドし、その後静かに倒れてましたから。膝は折った状態で腰から落ちたように見えたのですが、あの姿勢はかなり辛いはず。美しい花が儚くも散っていった、という風情を醸し出すのですね。素晴らしかった。
ところで、この幕間に歌舞伎ではご飯を食べるのが伝統的なんだそうです。私たちは、前もって穴子弁当を予約しておきました。「笹巻すし」というお店なのですが、数が限られているので、前もってネット予約しておいたのでした。これが絶品!
なかなか美味しそうじゃありません?左のお弁当を開けた姿が、下の写真。金色の花形に開きます。凝ったデザイン!穴子がメチャ美味。機会があれば是非どうぞ。
【奴道成寺(やっこどうじょうじ)】
※あらすじ・・・鐘供養が行われる紀州道成寺。そこへ現れた白拍子花子は、舞を奉納することで鐘を拝むのを許されます。舞を舞ううちに烏帽子が取れて、花子が男であることが判ります。実は、花子は狂言師左近が変装していたのでした。そして、左近は所化の勧めに応じて、鮮やかな踊りを次々と披露していくのでした。
ほぼ物語は無いようなもので、踊り中心の演目でした。台詞を聞くよりむしろ、目で見て楽しむ演目のよう。花魁が花道を行列で歩くシーン、これは『さくらん』にもありましたよね。花魁が特別高い鼻緒の下駄を履いて、わざわざ街中をしゃなりしゃなりと歩くのです。舞台から客席に向けて作られている「花道」を歩くので、ガラっと印象が変わっていいですね。道成寺は、『娘道成寺』なんかは戯曲を読んだことがあるので、道成寺の鐘供養は知っていたけれど、こんな演目は知りませんでした。
この三津五郎さんがとても人気。彼の踊るシーンでは「大和屋!」の掛け声がたくさん上がってました。本当にこの人の踊りが見事で、一人何役もやり、男面と女面を変えながら修羅場を演じたり、踊りも本当に素晴らしかった。楽しめました。踊り以外の部分はそれほど面白い演目ではないのですが、踊り部分が圧倒的なのです。こちらは短く、55分。
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