126★007 スカイフォール
’12年、アメリカ
原題:Skyfall
監督:サム・メンデス
脚本:ニール・パービス
製作:マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ
製作総指揮:カラム・マクドゥガル、ロバート・ウェイド他
撮影:ロジャー・ディーキンス
音楽:トーマス・ニューマン 主題歌:アデル
キャスト:ダニエル・クレイグ、ジュディ・デンチ、ハビエル・バルデム、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、ベレニス・マーロウ、ベン・ウィショー、アルバート・フィニー
50周年祈願、大大大ヒットおめでとうございます!このシリーズ、これまではほとんど思い入れが無くて、ダニエル・クレイグのボンドになる前は、TVでかかっている吹替を見たぐらい。それは私的には「映画を見たうちに入らない」枠。この作品がどれだけ凄いかというと、そんな人にまで「これまでのシリーズを全部見返してみようかな」と思わせたこと。これから見返して全部見てみまーす。
ダニエル・クレイグになってからのこのシリーズ、これまでのイメージを一新しようと、アクションもスピード感のある楽しめるものに、ストーリー性もより複雑になって楽しめる力強いものへと生まれ変わりましたよね。でも今回は、頭一つ・二つ分飛び抜けた、群を抜いて面白い大傑作。前作・前前作と違い、“ボンドビギニング物”ではなく、世代交代差し迫られる「老いた」ボンド設定のよう。それに、情報化社会に対比して、生身の人間が実際に体を動かして現場へ赴く、「機械vs人間」の物語でもある。この設定だけでグッと来る。今回のボンドは、本気だ!!
今回はサム・メンデスが監督。これは一体どうなんだろう?とついつい思ってしまうけれども、『慰めの報酬』だって、どちらかと言えばヒューマンドラマを得意とするマーク・フォースター。ダニエルボンドになってからは、とにかく「血を一新する」これが急務とされてきたかのような、このシリーズのブレインたち。ジェイソン・ボーンと見まごう派手派手アクションシーン、せわしないカット。今回のこの作品は、あの目まぐるしいアクションシーンはやらず、さらに、これまでのボンドファン達をも納得させるかのような、オールドスタイルへの原点回帰。テーマは復活(「Resurrection」)!!オールドファッションぷりが、カッコ良くて最高。新しさの中に古さがある。ここがたまらずカッコイイ!!「血を一新するために、全く新しいイメージを打ち出す」その後に→「オールドファッションのカッコ良さを打ち出す」。この一巡は、むしろ初めから狙っていたものなのでは。そう思えるぐらい、美しい円環を成り立たせているんですよね。そう、「復活」というのは、何もオールドファッションマンセー!ではないのです。ルネッサンスのように、新しさの中に古さがあるからこそ、格調高い。「革新」が行われてこそ「古いカッコ良さ」が浮き立つのです。権威の復活、それは新しいものを取り込んで行われるものなのだと、このシリーズに教わりました。
『007 ゴールドフィンガー』からの小ネタがあるので、この作品を見る前に見直すべき、と町山が言っていたけれど。うん、アストン・マーチンのボンドカーの登場といい、車の仕掛けといい、古い調度品で揃えた革張りのドアに、コート掛。それから、位置を知らせ救援を呼びにやる、見た目の古臭いスパイグッズといい…。わざわざ昔の小細工品を持ってきたのが、妙にカッコ良く思えてしまう。
「二匹のネズミ」に喩えられる、悪役シルヴァの“合わせ鏡”のような存在。それから、スパイという自己の存在すら問われる、アイデンティティへの揺さぶり。思わず『ダークナイト』を思い出してしまう。より大きな物語性へと発展している今回の作品。あと、二匹のネズミの台詞って実は、『ロシアより愛をこめて』の中で似たような台詞があるんですよね。金魚鉢の金魚を見て、「(大勢居る他の金魚と違い、)中に居る2匹だけ、周りが戦いの中消耗するのを待っている」という台詞が。
まあとにかく、一枚一枚の画がカッコいいのです。「画のカッコ良さに泣けた」なんて初めて。私は何かと泣くことが多いのでいちいち書かないんですけど、台詞や演技に心を動かされることは多いけれど、「画のカッコ良さ」で泣けたのは初めてでした。今年の娯楽アクション映画の中、比類無き面白さと言えるのでは。他はちなみに、今年だと『Mi:4』が次に来るぐらいかなと。
関連記事
-
-
『エル・クラン』 ブラックテイストな犯罪一家物語
アルゼンチンで大ヒットした、と聞いて思い出すのが去年の『人生スイッチ』...
記事を読む
-
-
『ヘイトフル・エイト』 密室の曲者揃い踏み!!
エンニオ・モリコーネのオスカー、おめでとう。この作品で獲りましたね。 ...
記事を読む
-
-
『ヴァバンク』ポーランドの国民的娯楽作
今年のポーランド映画祭でかかった81年の作品ですが、ポーランドでは誰も...
記事を読む
-
-
後味の悪い映画と言えばコレ! 『ファニーゲーム』
史上最強に後味の悪い映画として、悪名高き作品。 私は、DVDで見た時は...
記事を読む
-
-
『ピエロがお前を嘲笑う』 ドイツ発のサイバーサスペンス
ドイツ発のサイバークライム/ハッカーを描いたスリラー。 ギークな童貞主...
記事を読む
コメント(4件)
前の記事: 125★みんなで一緒に暮らしたら
次の記事: 127★愛について、ある土曜日の面会室
実に良く出来た作品でした。
私はメンデス的には「007ビギニング」三部作の完結編であるのと同時に、「ロード・トゥ・パーディション」の対の感覚なんじゃないかと思います。
あれは今回の母子に対して父子の物語で、悪役を演じてるのはダニエル・クレイグだったりするんですよね。
ノラネコさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
『ロード・トゥ・パーディション』!そうでした、ダニエル・クレイグが演じてたんだ!いやー、ジュード・ロウのハゲっぷりとスタンリー・トゥッチのことばかり印象強くて、それ忘れてました。
『ロード〜』は地味な良作で、おっしゃる通り立場が逆のストーリーとも言えますね。
とらねこさん、こんにちは!
私も今更なんだけど、本作を見て、凄く感動?しちゃったよー。
今まで、とらねこさんと同じに、旧シリーズとかTVでなんとなく、たまに見るだけ・・って感じで、思い入れが無かったんだけど、この作品は良かった!
面白かったし、カッコ良かったよね。
この次のスペクターよりも、本作の方が私は好きだな。。。
latifaさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
スカイフォールは大ハマリして、2012年のベストにまで入れましたが、
一発奮起して旧シリーズを最初から見てみようとするも、3,4作で断念してしまいました…。
私はどうも、007シリーズが昔からあまり合わないみたいですが、合わないまま・未見のままでいいかな〜と思っています。
旧シリーズに立ち戻ったかのようなスペクターは、ちょっとノレませんでした。