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122★高地戦

’11年、韓国
原題:the Front Line
監督:チャン・フン
脚本:パク・サンヨン
製作:イ・ウジュン、キム・ヒョンチョル
撮影:キム・ウヒョン
音楽:チャン・ヨンギュ、タルバラン
キャスト:シン・ハギュン(カン・ウンピョ中尉)、コ・ス(キム・スヒョク中尉)、イ・ジェフン(シン・イリョン大尉)、イ・デビッド(ナム・シンシク二等兵)、リュ・スンス(オ・ギヨン軍曹)、コ・チャンソク(ヤン・ヒョサム曹長)、リュ・スンリョン(ヒョン・ジョンユン中隊長)

これはまた今年の番狂わせ。今まで見た韓国映画の、1・2を争う出色の作品。戦争を描いたものの中でも最も気に入ったものの一つになった。戦争映画が本当は好きでない私も、ここまでアクションとして興奮させる面白さがあり、物語はグイグイ引っ張る。こんんな物はそうはない。これは必見の作品です!絶対見て欲しい!・・・と言いたいところなのだけれど、私が観に行った時ですでに東京でも、六本木では一日に一回、新宿では一日に2回の上映。こんなに素晴らしい作品なのにお客が入っていないなんて、本当に悲しくなってしまう。(エヴァにお客さんを取られてしまったのかな・・。)

私が初めて見た韓国映画は『シュリ』だったのだけれど、あの時はだいぶ驚いた。「こんなに面白い映画が韓国にあるなんて!」と思った、あの興奮を思わず思い出した。その次ぐらいに観に行ったのが、『JSA』。これもまた面白くて、韓国の映画製作のレベルにまたも驚かされてしまったけれど、あの『JSA』の脚本家がこの作品を書いている。なるほどなと頷ける、極めてスリリングな戦争ドラマでした。監督はと言うと、キム・ギドクの助監督をやっていたチャン・フン。『映画は映画だ』については、『アリラン』でキム・ギドクがチャン・フンについて言っていた苦い思いを思い出してしまうけれど。まあ、それはともかく、こうしてまた素晴らしい才能が開花されて良かった。

私は実は、戦争物はそれほど好きではなく、好きなものは『鬼が来た!』や『父親たちの星条旗』、『ミュンヘン』、『戦火の勇気』など。『プライベート・ライアン』や『プラトーン』は何度も眠くなり、TVでいつもかかっていたのでようやく3,4回目でストーリーの全貌が分かった、というぐらいの「戦争音痴」。苦手な戦争アクション(眠くなる)を中心に描かれるより、人間のドラマを中心に据えたものの方が好き、という感じ。そんな訳でこの作品には、ズキューンと胸を打たれました。ドラマが鮮やかに描かれ、かつアクションシーンでは人の足跡と泥はねさえ映すような、差し迫ったカメラ。否が応にも心を打たれる切実さがここにはあるのです。

冒頭の飲み会(アルコールがないので水だけ)を思い出しただけで、思わず今でも涙が出そうになってしまう。あの“戦線夜曲”(でしたっけ?)を初めにソンシクが歌うシーンだけで、私は滂沱してしまった。それと言うのも、彼の歌が本当に上手いからで。この小さな歌が、冒頭から全体に渡って物語を牽引していく。この“戦線夜曲”は、あの頂上のエロック高地の木箱の中で、敵に送った歌詞としても登場し、これがまた見事に最後に使われて。あと12時間の虚しさ。あのシーンでは本当に号泣が止まらなくなった。

スヒョクの死ぬ前の「母親の顔を思い出せない」という一言は、本当に忘れられなくなりそう。ここまで人の気持ちをグッと掴むドラマを描くことも至難の技だと思うのだけれど、「ここぞ」というシーンで、本当に印象的な「掴み」の台詞を書くことが出来ること。本気で凄い。

 

※ストーリー・・・
1953年、朝鮮戦争の停戦協議は難航し、南北の境界線を争う高地では、領地を奪っては奪い返す激しい攻防が続いていた。そんなある日、韓国諜報隊員のカン中尉は、激戦区のエロック高地に人民軍の内通者がいるという情報を詳しく調査するため、現地に赴く。カン中尉はそこで、かつての学友スヒョクと再会するが、心優しい青年だったスヒョクは過酷な戦場で変わり果て、冷徹な人間になっていた。地獄のような日々が続く高地で、兵士たちは一刻も早い停戦だけを願って生き続けていたが、ついに極限を超えた日が訪れる・・・

 

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コメント(6件)

  1. 待ってましたーーーこれ。ほんとに観た人自体が少なくて哀しいのです。だから観た人が傑作ぶりを書かないとと思ってます。
    これは思いっきり今年myランクの上位にしましたからねえ。お楽しみに!
    シン・ハギュン、コ・スもいいんだけど、あの20歳の大尉が秀逸でしたね。
    今年、心を鷲掴みにされた映画の1本でした。

  2. rose_chocolatさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

    いや、本当これ書いてる人少ないんですよね。
    面白い割に、上映も少なくて…本当寂しい思いがしました。
    これは是非見て欲しいなあ。何人かのベストでも、これが入っているのを見ましたよ。
    さあ、そろそろ今年のベストの時期ですね〜!
    毎年これがやりたくて、どんなに忙しくても一年頑張ってブログを書いているようなものなので。

    あ、イ・ジェフンがお好みでしたか。私はコ・スだったんですよねー!彼の眼力にやられました。

  3. こんばんは。
    遅くなってしまいましたが、宮城では年が明けてからの上映でした。

    流石、とれねこ姐さん。
    『シュリ』や『JSA』が出てくるんじゃ説明不要ですね。
    南北問題や朝鮮戦争をテーマにした映画は韓国にしか撮れませんね。

    個々のキャラクターはお約束的な役だったのにどれも個性的で、エピソードも戦争映画として見るなら許容範囲なのですが、とても個性的なキャラクターばかりで、個々のエピソードもとてもリアルでした。

    久しぶりに「観るべき韓国映画」を観れて嬉しいです。

  4. 健太郎さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    宮城では少し遅くても、これ公開されたことが嬉しいです!
    逆に、年が明けてからだと、映画好きはチェックしていて、見てくれた人もいるかもしれませんよね。

    そうなんです!『シュリ』も『JSA』も、大好きな映画だったので。コレ系は私のツボだったようです。
    このテーマはドラマティックに面白く作る可能性があるものなのですね。
    それにしても、今回のこの作品はだいぶ掘り下げていたように思います。
    私も個々のエピソードが好きなものばかりで!もう一度見たいです。




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