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106★アウトレイジ ビヨンド

’12年、日本
監督・脚本:北野武
プロデューサー:森昌行、吉田多喜男
撮影:柳島克己
音楽:鈴木慶一
キャスト:ビートたけし(大友)、西田敏行(西野)、三浦友和(加藤)、加瀬亮(石原)、中野英雄(木村)、松重豊(繁田)、小日向文世(片岡)、高橋克典(城)、桐谷健太(嶋)、新井浩文(小野)、塩見三省(中田)、中尾彬(宮田)、神山繁(布施)、田中哲司(舟木)

北野映画の中でベスト1に面白かった!北野武が、きちんと脚本を書いている。このことにまず驚いてしまいますよね。引きのショットばかりでなく、バストショットが多い。前作同様、人物に食い入るようにカメラは映し出し、役者の迫力でまさに圧倒されるよう。「馬鹿野郎」「この野郎」、これでもかこれでもか、と役者が凄みを見せた演技を繰り出すだけで楽しい。言わば、ヤクザ界のアベンジャーズ(笑)。

前作の『アウトレイジ』も面白かったけれど、「(日本の)ヤクザ映画は『仁義なき戦い』を超えられない」と思ってたんですよね。なんだかんだ言って、全部『仁義なき戦い』の二番煎じじゃないか、なんて、ヤクザ映画が大好きな人には怒られてしまいそうなんだけれども。私は、戦いや抗争の中に不条理性と哲学のある、『ゴッドファーザー』の方が私的には好きなのね。日本で『ゴッドファーザー』がやれるなら、たけしだ!と今回確信した。いやあ、こんなに娯楽性が高く、グレードも相当に高い作品が見れるとはー。

前作の『アウトレイジ』の物語に、ピッタリと今作が繋がっているところにも、驚いてしまう。前作と同じことをやるか、と思ったらそれも違い、今回の方が大友の怒りと哀しみが深く、諦念が漂っていて、味わい深い。

私からすると、どうもたけしの描く人物は、皆「大友」と同じ、いや『その男、凶暴につき』と同じように思えてしまうことが多々あって。くだらないしきたりやしがらみ、仁義だの道義だの、というものに縛られている者からすれば、そうしたことをアッサリと逃れ、ひらりと交わしてしまう男は恐ろしい。皆と同じルールで動かないからこそ、周りからすれば脅威の的に思えてしまう。こうした同じ人物を何度も描いていることから、私からすると「どうせまた同じでしょ」と思えてしまうのだ。いや、これでも、『ソナチネ』とかは学生の頃は大好きだったし、随分長い間お気に入りだったんですけどネ、最近はあまり北野映画に期待しなくなってしまっていた。

しかし、たけしの底力は凄いな。私にとってはすっかり死んだジャンルのヤクザ映画、これに息を吹き込んだのが前作。今作はさらにパワーアップさせた気がした。単なるヤクザでない大友を描いたことで、何倍もこの作品の価値が増したんですよね。

しかし、私の友人に言わせれば、「ヤクザの抗争のキッカケになった出来事(新井浩文と桐谷健太が死んだこと)が馬鹿馬鹿しい理由すぎて感情移入が出来ない」なんて言ってたんですね。いや、ちげーだろ!と。

むしろ、日本でも指折りのヤクザの組同士の争いごとが、そうした馬鹿馬鹿しい、取るに足らない理由であること、このことこそ大事な気がしましたよ私は。たとえば、アメコミのヒーローモノ、ダークナイトとかライジングとかね、そういうものじゃないんですから!いやむしろ、ヒーローが立ち上がる理由とか、そういうハリウッド脳で見ちゃだめなんだと思いますよ!くっだらない価値観の、上から下から仁義だの体面だの、そうしたものに命をかけるどうしようもない人達が、どうでもいい理由で戦う(「子分というより、ただのガキじゃねえか!」あの台詞を書いたのは偶然ではないよね。)。義理だとか大義名分だとか、つまらないもので切った張ったの命を懸ける。それはハリウッドヒーロー物とは全く違う、むしろそれこそがヤクザの世界の本質だと私は思うわけです。

 

※ストーリー・・・
熾烈な下克上抗争から5年。先代亡きあと加藤(三浦友和)が会長となり、関東の頂点を極めた暴力団「山王会」は、ついに政治の世界にまで手を伸ばし始めた。だが巨大ヤクザ組織の壊滅を企てる警察組織は、山王会の過剰な勢力拡大に業を煮やし、関西の雄である「花菱会」に目を付ける。表向きは友好関係を保っている東西の巨大暴力団の対立を目論み、刑事の片岡(小日向文世)は裏で策略を仕掛けていく。そんな中、獄中で死んだと思われていた元山王会配下大友組の組長・大友(ビートたけし)が出所する・・・

 

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