100★トールマン さようならシアターN 最後の作品
’12年、アメリカ、カナダ、フランス
原題:the Tall Man
監督・脚本:パスカル・ロジェ
撮影:カマル・ダーカウイ
音楽:トッド・ブライアントン
キャスト:ジェシカ・ビール(フリア)、ジョデル・フェルランド(ジェニー)、ウィリアム・B・デイビス、サマンサ・フェリス、コリーン・ホイーラー
さて今年は久しぶりに、キリ番100がやって来ました。ここ2,3年、100まで到達しなかったもので。Nのラスト作品、こちらをupしようかなと。ちょっとこちらを見て下さいよ。「 2010年以降、東京の映画館が閉館ラッシュでヤバイ」 これを見ていると、哀しくなっちゃいます・・・。
気を取り直して。『マーターズ』の次の作品ということで、期待をしてしまう反面、「あの全身全霊の作品の次に、一体どんな作品が書けるんだろう?」という不安もあったんですよね。前作は’09年に日本公開こそされていますが、実は’07年の作品。つまりすでに5年も経っているのですから、そろそろ次を出してもおかしくはない頃合いなのでは、とも思ったりもしますが、にしても。前作『マーターズ』は、もし「ホラーベスト10」を作るなら、必ず入る衝撃作品でした。しかしある種、「ホラーの終焉を迎えさせるような」面がありました(詳しくはマーターズ』感想まで)から、早々にまた似たような傑作ホラー作品が作れるとは、到底思えなかったのです。
そんな訳ですから、今回の作品がホラーっぽい様相をしているけれど、その実ホラーでなくても、まあ納得がいくというか、致し方無いことなのかもしれません。まあ、それほど嫌いではないけれど。『デビルズ・バックボーン』のように、ホラーっぽく思えながらもそれほどホラーっぽくない作品て、私はそれほど好きではありません。イーライ・ロスの『キャビン・フィーバー』も、見た当初は別にホラーじゃないじゃん!なんて思ってしまったのですが、再見してみると、「あれはあれで面白いヒネリが効いていたな」などとも思ったり。だからこちらも、『マーターズ』後の今見ると大して評価は高くなくとも、もう一度後から見てみたら、そこそこ楽しめる作品なのかも、とも思います。
同じ時期に出たのでついつい比べてみたくなってしまうのが、ジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロの『リヴィッド』。同じようにフレンチホラーの才能ある旗手ですが、彼らもまた、前作が傑作のホラーであるにも関わらず、この間公開された次作は、“ホラーというある種窮屈なジャンルには囚われない異作”でした。これはもしかすると、「やはりフランス人ならでは」と言えるかもしれません。フランス人の芸術に対する耐性の高さ、これが、「型」というものを嫌うのかもしれません。私も実は、最も飽きっぽいファン。ホラーというジャンルを愛していながらも、いつも定型的ホラー表現を壊すことを望んでいる人間なので、ジャンルクラッシャー達の変化球には、柔軟に対応したいな、と。
6年前に鉱山が閉鎖され、急速に寂れていく炭鉱の町コールド・ロックで、次々と幼い子どもたちが行方不明になる事件が発生。人々は正体不明の誘拐犯をトールマンと名づけ恐れていた。町で診療所を開く看護師のジェニーは、ある夜、自宅から何者かに連れさられた子どもを追って傷だらけになりながらも、町外れのダイナーにたどり着く。しかし、ダイナーに集う町民たちは奇妙な行動をとり、やがて想像を絶する真実が明らかになる・・。(映画.comより)
監督のインタビュー曰く、同じ“トールマン”の出てくる『ファンタズム』よりは、スティーブン・キングの『ドロレス・クレイボーン』に影響されたそう。これを聞くと納得してしまう部分があるのが、物語が変化をつけて形を変えていくところ。「トールマン」の都市伝説を利用して、そこから別の物語を生成して行き、犯人が誰で、正体が誰であったのかが、次第に明かされるミステリーですもんね。
まあ、パスカル・ロジエということで、過剰なる期待をしてしまわなければ、まあまあ楽しめるホラーでした。でも、これホラーで売らない方が良かったんじゃないかと思いますけどね、正直。ただ、「シアターNのラスト作」ですからね。他の映画館でさりげなくかかるよりは、ここでかかったからこそ、人が入っていたはず!
シアターNがとうとう最後で寂しい。最後にこの写真をUPします。
「7年間本当に有難う!」
2012/11/23 | :サスペンス・ミステリ ジェシカ・ビール, ジョデル・フェルランド, パスカル・ロジエ, フレンチホラー
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コメント(6件)
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シアターN、たった7年間の活動だったんですね。
7年というとほぼ私のブログ人生に匹敵します。
でも、7年前というと映画鑑賞を復活させて間もなくて、とてもここ数年のように200本などは観れず、またジャンルも限りなく偏っていましたので、この映画館とはあまり縁がなかったかも。。 ホラーも元々苦手なので。
そんな訳で一体自分はいつNデビューしたのかと調べると、どうやら『寂しい時は抱きしめて』みたいで。ホラーじゃない(苦笑)
あと何観たかな。『THIS IS ENGLAND』とか『ユナイテッド』とか。『リヴィッド』はフランス映画祭だったしね。
うちの近くのシネコンでも、ここのラインナップがたまにかかってしまうので、そういう時はどうしても近場に足が向いてしまうし。。
今週はお別れに行ってあげたかったのですがやっぱり時間取れない感じで無理で。ひっそりと遠くからありがとうを言いたいと思います。最後までNらしい終わり方がいいと思います。
rose_chocolatさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうなんです、7年間て以外と短いですよね。roseさんもブログと同じくらいでしたか。実は私もそうで、Nより4ヶ月ほど短く、もう6年と半年。roseさんて、そんなに長い間ブログやってらしたんですね!仲良くなっtのが意外と最近だったので、そんなに長いとは知りませんでした。
『寂しい時は抱きしめて』って、私見てないんですよ。これ、面白かったですか?『THIS IS ENGLAND』私もここで見ました。ところで、roseさんのおうちの近くのシネコンは、Nでやるようなラインナップがかかることもあるんですか?へえ、シネコンでNでやるようなホラーって、あんまり全国でかかることは少ないかと思ってました。大体ここでやるマイなーなホラーは、名古屋か大阪もしくは京都などのことが多いものかと思っていたので・・。たとえばroseさんのお近くのシネコンでかかった作品のタイトルってどんなのがあるんでしょう?
本当、Nらしい終わり方でした。パスカル・ロジエだからというのもあるのかな。
>roseさんのお近くのシネコンでかかった作品のタイトルってどんなのがあるんでしょう?
さすがにホラーじゃないのが多いよね。
http://www.theater-n.com/movie_list.html
ここから見てみると、『ホテル・ルワンダ』『敬愛なるベートーヴェン』『幸せのちから』『ゾディアック』『夕凪の街 桜の国』『アイム・ノット・ゼア』『フィクサー』『ミスト』『REC』『黒く濁る村』『スーパー!』『英雄の証明』こんなところかな。
109シネマズ川崎・MM横浜とか、TOHOららぽーと横浜、チッタあたりが何気に頑張ってますね。
>『寂しい時は抱きしめて』
ここに記事があった。参考までにw
http://www.j-cast.com/tv/2007/05/28007928.html
ホラーじゃないけど(笑)でもなかなか考えさせられる作品だったよ。
7年って楽天時代も併せてなんでね。それに最初は映画のこと書いてないし(笑)
rose_chocolatさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
あ、なるほど。私も、敬愛なるベートーヴェンとゾディアック、幸せのちから、アイム・ノット・ゼア、フィクサー、ミスト、この辺はNじゃないところで見てますね。
そうそう、チッタってすごい頑張ってますよね。川崎県民て、東京にも近いのに、東京まで来る必要ないぐらい映画充実してるなあと思います。roseさんなんかも川崎に出る方が楽なのかな?でも、どこも頑張ってるから、109にするか、TOHOにするか、チッタにするかで悩みそうだなあと思います。
『寂しい時は抱きしめて』、これ『愛より強く』の路線なんかと一緒なのかな、ホラーばっかりになる前って、ミニシアター系のいいもがかかったりしてましたよね。
でも、ホラー系になってからの方が、Nの個性は打ち出せたみたいな印象はありますよ。
ふらり…
そー言えばこの映画の話しなっかたよなーとタイミング逸してるとは思いつつコメントをば(ネタばれ全開でw)
子供がいなくなる、さらわれる映画の白眉といえば『フォーガットン』を推す「宇宙人の仕業オチ」クラスタのわたくしですが、本作のオチも滋味あってよかったですョ
ひとよんで「謎の組織オチ」!
至る過程の語り口もヒネリきいててなかなかだったんですが、さすがに『マーターズ』は超えられないですよね~
あの作品の彼岸への逝きっぷりは殿堂入りレベルなんで
と書きつつ考えてみたら『マーターズ』もいわば「「謎の組織オチ」ですね
もういっそロジェ監督にはその線を極めてもらって、監督名でネタばれっつー新たな地平を切り拓いて欲しいものですwww
次作も、あれば観にいく気満々なんですが、問題はシアターN亡き後かけてくれる映画館があるかってとこですねー
武蔵野館のレイトあたりに期待…でしょうかwww
みさま
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
あーそうでした!この作品の話、しませんでしたね。Nラスト作でした!
というか、全体的に飲み足りない感じ…。また是非近いうちによろしくお願いします!
で、『フォーガットン』をあまりに強力プッシュするみさんに、少し驚きました。「この人、相変わらずだ…!」この作品、そんなに好きなんですね!確かに、ここまでお粗末な内容の作品て殆ど無いかも。
と、思ったけど、そうでしたね!『フォーガットン』も、わざわざ子供をさらって記憶を消して…なんてストーリーでした。
謎の組織オチ!確かにパスカル・ロジエ監督って、このネタ好きなんですかねえ?ストーリーに関しては、相当考えた上でヒネって作ってるはずなのに、なぜこうも謎の組織オチになってしまうのか!w
この作品も確かにまあまあ面白いんですが、『マーターズ』があまりにも素晴らしかったので、過度な期待をしてしまいました。
そうそう、シアターNに変わる映画館があるのかなあ…。それが問題ですよね。「思えばNがある時代が一番幸せだった」そんなことになりそうで。この先に関しては考えるだけで、鬱になりそうです…
うわあああん