96★悪の教典
’12年、日本
監督・脚本:三池崇史
原作:貴志祐介
製作:市川南
エグゼクティブプロデューサー:山内章弘
撮影:北信康
キャスト:伊藤英明、二階堂ふみ、染谷将太、林遣都、浅香航大、水野絵梨奈、山田孝之、吹越満、貴志祐介
今年の三池さん、実はこれが3本目だったんですね・・。私、三池ファンとか言いながら、『逆転裁判』のことはすっかり眼中になかったな。ちょうど忙しい時期だったこともあったけれど、記憶からすっかり抹消してしまってた。珍しく劇場鑑賞してない。そろそろDVD見なくっちゃ。
今回は久々に三池さんの血ミドロ作品。何以来かな?『一命』や『十三人の刺客』、『クローズZERO』シリーズもある種エグいシーンはあるものの、イカレてる系の作品は『インプリント ぼっけえ、きょうてえ』以来。でも、この作品と正しく比較すべきは『インプリント〜』や『殺し屋1』の方ではなく、『太陽の傷』。こちらの方かもしれない。三池ファン的にはこっちの、つまり『オーディション』系の流れの作品が欲しくてたまらなくなってしまっていたんですよね。『冷たい熱帯魚』(この程度で大人気!?)があんなに受け入れられて、三池的コチラ側作品が歓迎されないなんて、時代を先取りしすぎだったのかも。
学校の先生がブチ切れ!出席を取るみたいに、生徒を全員ブチ殺していきましたとさ・・。
という、大スプラッター大会。何でも、原作を読んだ人に言わせれば、省くところは省きながらも、2時間上手に進んでいくらしい。
これシリーズものだから、この後はハスミンの若い頃の話がビギニング的に語られてゆく、というのもあるんでしょうね(多分だけど)。何でも、この辺が随分と省略されているらしいし。 もしくは、交差して過去と現在が描かれるとか?
(※左写真が、原作者)「よろしく頼みますよ」の台詞が印象的な人だったんですね。「殺人頑張って!」という意味だったのか。
後半のスプラッタが始まるまでの、ジワジワと悪意が露わになってゆくテイストは良かった。今年、滋賀大津市の中学校でのいじめ自殺が事件になり、去年の『告白』の後であるせいか。とりわけ「学校」という閉じられた場所において、殺意を募らせてゆく物語。これは最早ジャンルとして、今後脈々と繋がっていきそう。コロンバイン高校のように(『エレファント』のように&『少年は残酷な夢を見る』のように)、ブチ切れて学校での大量殺人を行う人物が、“生徒”ではなく、“先生”だった、というのが新しいだけ。ハスミンの大人ならではの狡猾さ(ハーバード卒!)が、あまり生かされてないように思える本作ではなく、上手いこと法の網の目をかいくぐるピカレスク物、ハンニバル・レクター的な狡猾すぎる犯罪者が見たい。
正直、ずっと猟銃一筋で全員殺しまくる後半に、少し中だるみや飽きを感じてしまった。原作まんまなので仕方がないのかもしれないけれど。そもそも、銃での殺し合いがそれほど好きでない私には(だって簡単すぎるもの!)、猟銃による大量殺人は、とにかく飽きる。
でも、ハスミンの幻影や彼のギリギリの精神状態を見せたり、バスケット・ケース的な銃の“相棒”の姿は、今後の物語に広がりを感じさせる。今回、三池さん的ユーモアが影をひそめ、ギャグテイストを差し挟むことなく、一気呵成に走ってみせた。シリーズ物は個人的に好きではないのだけれど、まあ、付き合ってしまいそうです。
ちなみに、伊藤英明の先生役は、私的にはそこそこでした。『十三人の刺客』の吾朗の方が弱冠良かったかも、というぐらい。『告白』の岡田将生の方が好き。(でも岡田将生は、『アントキノイノチ』の演技が全然ダメだった)あと、山田孝之は笑った。ドラム自慢しただけじゃん!というw。あと、個人的には、園子温作品に出る出演者(『ヒミズ』他)の扱いに注目してしまった。
2012/11/16 | :三池崇史(今月の三池さん) 三池崇史, 伊藤英明, 山田孝之, 染谷将太
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コメント(22件)
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>『十三人の刺客』の吾朗の方が
あーボクも思った。あのゴローちゃんよかったのに。小説は思考の跡が文章でわかるから、ハスミンがいかに計算高いか、がひしひしと伝わってくるところが面白いんだけど、映画は客観的に描いていたから、あれだとハスミンが大量殺人に踏み切るところが突飛に見えてしまうよね。
その突飛な感じが、むしろゴローちゃんに、ジャストフィットすると思うんだが。
>猟銃による大量殺人は、とにかく飽きる。
そんな貴女には 『リンカーン秘密の書』 がおすすめだよ。リンカーン(合衆国大統領)が斧でバンパイアをなぎ倒しまくるという、失踪する馬の大群の上で!!
でもホント似てるなぁ、卓造に。
ウラヤマさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
あーなるほど!確かにハスミンの計算高さは、映画より文章の方が楽しめるのかもね。そうそう、計画を変更して大量殺人に踏み切った、とする部分が、あまり計画っぽく見えなかったというか。
>そんな貴女には 『リンカーン秘密の書』 がおすすめだよ
君この間、つまらないって言ってたじゃん。猟銃より格闘技、てのはどう?『ザ・レイド』の血の量がすごいよ。インドネシアの格闘技で殺しまくり!!
リンカーン物だったら、『声をかくす人』の方が好きだなー。
そうそう、卓造似てるね!そっくり〜★
昨日『ハロルドとモード』見たんだけど、すごく面白かったよ。君見た?
あとね、今日『荒野の用心棒』再見したんだ。ウィンチェスターとコルト45口径が戦うの。このシーンがもう一回見たくて。ラモンがウィンチェスター、ジョー(イーストウッド)が45。で、もちろんコルトが勝つんだけどさ!
『ハロルドとモード』 も 『三人の女』 といっしょにリコメンしたんだよ!! ハルアシュビー天才!! あと 『白夜』 なんだけど、ボクが見てたのヴィスコンティのやつだった。マルチェロが出てる白黒の。どうりで話がかみあわないと思ったら。
あと、『危険なメソッド』にもコメントしたのに残ってなかった。。。『危険なメソッド』の記事見ると、コメント欄のすぐ上にすっごい怖いサイトの広告が出るんだよ。『電話占い紫魂』とかいう。。。
ウラヤマさんへ
こんにちはアゲイン!
ハロルドとモード、君も好きだったのね。さっくり忘れててごめんごめん。
そっか、白夜、君の見たのはヴィスコンティの。ねーこれってさ、一昔前のシネフィルの会話みたいだね。
別のとこにもコメントくれてたのね。もしかして、IEから?
なんかIEだと調子悪くて。
こっちの方にうまくTBでけません すんません
志麻さんゲストの ぼっけえ、きょうてえを観れたなんて羨ましいかぎりでやんす
でも ぼっけえ、きょうてえよりこっちの方がわかりやすくってヨイです
「13人の〜」の吾郎>あすみん>「告白」の岡田将生>「ちゅらさん」の山田孝之 かなと思います 山田君のドラムソロは唐突で面白かったです
でも やっぱし染谷将太君の拷問シーンが一番ヨカッタです
よしはらさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
TBちゃんと来てましたよ!反映されるまでに少し時間がかかるようです。
いやーこの間ちょうど友人と、「あの時の志麻子面白かったねー」って話してたところでした!三池さんも来てたんですが、完全に三池さんよりしゃべってましたねw。
私は『インプリント ぼっけえきょうてえ』が大好きだったんですよ。
ごめんなさい、「あすみん」と「ちゅらさん」が分かりませんでした。
これも、狂気の話でした?^^; あすみんて何のこと?
山田孝之はなかなかいいですよね。クローズZEROでもなかなか良かったですよ。クローズZEROでようやく『電車男』のイメージから脱出しましたw
染谷将太!彼の拷問シーン、確かに良かったですよね!確かに、ああいうシーンに三池らしさを見なければいけませんでした。
確かに特別扱いの拷問でしたね!彼が拷問で喋らなかったからこそ、あの二人が助かり、ハスミンが捕まる、ということにも繋がってましたね。
作者の悪意たっぷりの殺戮ショー、お腹いっぱいです。
ハスミンの過去はBeeTVのドラマ「悪の教典-序章-」として既に放送されているらしいです。
ハーバード時代のエピソードなども描かれてるみたいですよ。
監督は三池さんじゃないみたいですが、DVD化されたら見てみたいですね。
ノラネコさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
あ、なるほど。すでに彼の過去はドラマでやってたんですね!じゃあ、もうこの辺が描かれることは無さそうですね。
そしたら、このシリーズもドラマだけで完結する可能性も充分ありそうですね。
私は三池さんじゃなければいいや。
私もこれ言いたいこといっぱいあるんですけど(笑)、もうまとめ箱行きです。もういいや(笑)
>『十三人の刺客』の吾朗の方が弱冠良かったかも
はい、そう思います。若干どころかかなりゴローちゃんの方がいい。
これ、生徒が殺しちゃったらただの話になっちゃうから、先生にしたんでしょうかね。
そういう推測が一切できない所が私は不満だぁーーー♪ 序章観ませんよ~。 おしまい!
rose_chocolatさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
まとめ箱ゆきだったのですね。twitterで、roseさんがこの作品が大ッ嫌いだ、というつぶやきはさんざん見ました−。
いやー実は、私は『殺し屋1』以来の三池ファンで。それも、外道系作品をピンポイントにこよなく愛す筋金入り。でも、三池作品はつまらないものもあって、当たり外れが激しいですので。roseさんでなくとも、三池作品をガツンガツン貶す人を今までたくさん見て来ていますw。
大島優子の反応を見ると、roseさんもこんな気持ちだったのかなーなんて思いました。
確かに伊藤英明だからか、怖くもなんとも無かったんですよね。悪役で2面性のある役となるとやっぱり、相当実力がある人で、かつイメージがぴったりな方が良かったと思っちゃいますね。
「十三人の刺客」でも、一徳と伊勢谷のアレなシーンでふざける三池ですが、今回、林君のアレなのもふざけてませんでしたね。ある意味、海老蔵の映画なみに真面目な演出です。
ああ、あれはバスケットケース兄のオマージュですかね。
で、わたしは、「フルメタル極道」が一番好きです。
バラサ☆バラサさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうそう、今回はあんまりフザケてなかったんですよねー。
時々三池さんは真面目な時がありますけど、今回もそうなのかなあと。林君のアレな時、ちょっとだけフザケモード入ってるかな、と思いました。
バスケットケースのオマージュは実は二度目で、一度目は『インプリント ぼっけえ、きょうてえ』でした。
フルメタル極道・・いいなあ、これ私まだ見たことないんです。DVDで見れないんですよね、これ。『牛頭』見ましたか?もしまだだったら、バラサ☆バラサさんには是非見て欲しいです。これとか、『殺し屋1』は。