103★ザ・ウーマン
’11年、アメリカ
原題:the Woman
監督:ラッキー・マッキー
原作:ジャック・ケッチャム
脚本:ジャック・ケッチャム、ラッキー・マッキー
撮影:アレックス・ヴェンドラー
キャスト:ポリアンナ・マッキントッシュ(ザ・ウーマン)、ショーン・ブリジャース(父)、アンジェラ・ベティス(母)、ローレン・アシュリー・カーター(ペギー)、ザック・ランド(ブライアン)、シャイア・モルフソン(ダーリン)
シアターNがもうすぐ閉館。先日、シアターN最後の作品『トールマン』をUPしたのですが、私の記事はまだシアターN上映作品が残っていたのでした。おかしな順番にしているせいで。・・というわけで、私的シアターNラスト作品は、コチラ。
同じジャック・ケッチャムの原作モノ、『隣の家の少女』が全く面白くなかったので、本は家にあるけれどまだ読んでいません。今回のこの作品は原作をベースにしながらも、全く同じ内容のものではなく、1から練り直した感じ。が、脚本のクレジットに原作の“ジャック・ケッチャム”と監督の“ラッキー・マッキー”と、二人の名前があるので、これは良くできたコラボと言えそう!前作があまりに面白くなかったので、原作者自ら作り直したくなったとか?
冒頭で、山から拾ってきた“獣に育てられた少女”の、強烈に強そうな獰猛さ、獣人性。これが強烈に描かれてて、度肝を抜く冒頭。「これから相当キツイ映画が始まるんだな」と覚悟すると、意外に見た目普通の一家が描かれる。この辺りのギャップがまた面白いんですよね。幸せな家族にしか思えないアメリカの田舎の、よくありそうな一家、だけどよく見るとだんだん異常性が露わになってくる。この辺りが面白いし、ハラハラ出来ていい。「どこか、何かがおかしいな、この父親?」という居心地の悪さが、次第に「やっぱりおかしい!」と確信していく過程が、ゆっくり描かれていて見事なのです。父親の表情、母親の表情、娘の表情などから、問題の輪郭が少しづつはっきりとする前半も、微妙な程度の炙り出し。
一方、小さな女の子は天真爛漫で、彼女の姿が映るシーンだけホッと出来る。ところが、彼女が真っ直ぐで純粋な存在だから、余計ホラーにこういうキャラがいることが怖い。この後彼女はどうなっちゃうんだろう?と想像すると恐ろしいんですよね。『少年は残酷な弓を射る』もそうだったけれど、いかにもいたいけな少女の存在は、ホラーには逆に恐ろしいのです。また、思春期の高校生の女の子の憂い顔の理由は、大体想像がつくけど、嫌な予感を濃厚にさせる。こういうキャラの描き分けが上手くて面白いのです。
この先ネタバレ*********************************************************************
一家の異常さが、女性に対する不当な圧力のあり方にある、ということが分かると、早く父親がブチ殺されないかなーと、心の刃がフルモード。しかしまだまだ焦らされるのです。これが長い。一見真面目そうで大人しそうな、ドリカムの中村正人に似た父親の、顔を見ているだけでイライラしてきます。ああ、こういう顔嫌い!!なんて。キャスティングがまた上手いなと思います。彼の普段の仕事ぶりを見せたり、ジワジワとイライラ感を蓄積させられる。母親も、どこか神経質そうな硬直した表情が、出だしからずっと嫌な印象を与えます。彼女がブチ切れた辺りから、物語が加速していく。『隣の家の少女』と、母親の立ち位置を比べながら見てしまうとまた面白い。
この物語をクレバーだなと思わせた理由は、男尊女卑的考えの強い父親の、女性全体に対する蔑視。これが見事なんですよね。吐き出すように本音をぶちまけるシーンは、おお!と思ってしまうような驚くべきシーンでした。本心では女性など好きではなく、ただ生まれの性とセクシャリティから、世間の価値観に合わせただけという理由で、女性と結婚した男性。こういう人って、隠れながらも意外と世間には居るのかもしれない。この父親の例は極端だけれど、多かれ少なかれ、女性を本音では下に見ている男性や、一生女性を理解しようとしない男性というのは、中には居るかも。そういう意味でもなかなかに楽しめる作品で、一概にホラーというジャンルではなく、グラデュエーションのある濃厚な作品に出来上がっているのです。こういう出来のいいホラーもたまにあるから、ホラーファンは止められないんだな。
2012/11/29 | :ホラー・スプラッタ アメリカのホラー, ジャック・ケッチャム, ラッキー・マッキー
関連記事
-
-
『ヒメアノ~ル』 塚本遺伝子の本気汁
今年の邦画ベスト1はこれでしょう。 テンポの上手さに心を掴まれてしまう...
記事を読む
-
-
『アイアムアヒーロー』 邦画ゾンビのイキのイイ傑作!
「邦画にしては、珍しく出来の良いゾンビ映画」との呼び声の高かった今作。...
記事を読む
-
-
『ノック・ノック』 浮気男はとりあえず、ぷっころす♪
時々やり過ぎがちなボクちゃん、イーライ・ロス 前回の『グリーン・インフ...
記事を読む
-
-
『グッドナイト・マミー』 未公開映画特集の中に優れたホラー発見!
こんなに面白い作品が未公開だなんて、勿体無い! マンション内で繰り広げ...
記事を読む
-
-
リア充がセ●クスババ抜き&鬼ごっこ 『イット・フォローズ』
タランティーノ絶賛の声が聞こえてきたが、どんなもんかと。 開けてみたら...
記事を読む
コメント(3件)
前の記事: ミュージカル『RENT』2012に行って来ました!@シアタークリエ
次の記事: 2012年11月の評価別INDEX
とらねこさん こんにちは。
わー、誕生日や仕事でバタバタで
休憩時間にコメしたのはいってなく3回やりなおしてみたけどやっぱり入ってませんでしたね。涙
メールをいれなくてはいけないのでそこでひっかかるのかも、、、
アド覚えてないっていう。
今PCからです。
ホラー仲間♡ホラーへのコメ嬉しいです♪
これなかなか掘り出し物でしたネ、
ラッキーマッキー監督だから
ブラックジョーク入ってて好みでした〜
あのオヤジが最悪で面白かった〜☆
migさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
あ、こっちだけ反映されてたんですね、TB。
コメント何度もトライしてくれてすいません、migさん。migさんて、IEは使ってないですよね?確かMacだと思ったけど