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98★アギーレ 神の怒り

’72年、西ドイツ
原題:Aguirre, der Zorn Gottes
監督・脚本: ヴェルナー・ヘルツォーク
撮影: トーマス・マウフ
音楽: ポポル・ヴー
キャスト: クラウス・キンスキー、エレナ・ロホ、ルイ・グエッラ、デル・ネグロ、ペーター・ベルリング、セシリア・リヴェーラ

入江悠監督曰く「イカダ映画」のこの作品を、トークショー付きにて見ました。本当、初めから終わりまで、「イカダに乗ったままの映画」ですからね。入江悠監督がヘルツォーク好きというのは、なんだかピンと来なかったんですが、彼は大学の時に映画を勉強してたんですってねー。そしてこれは、「『フィッツカラルド』の流れで見る作品」だとか。確かに、この辺やら『コブラ・ヴェルデ』の3本は、「ドキュメントタッチな山師シリーズ」てとこでしょうかね。チェックすべきヘルツォーク作品て、『キンスキー、我が最愛の敵』辺りまでじゃないかな。私にとっては、ヘルツォーク作品はクラウス・キンスキーと組んでいるものが好きなよう。でも、今年公開になった『世界最古の洞窟壁画』も面白かった。

こちら、ペルー高地に到着したスペイン征服者たちについての物語、ということなので、ちょうど私的にはタイムリー!リャマに荷物を引かせて歩く征服者一行、あの辺りはインカ道にそっくり!この辺この辺の記事の辺りと似てるんですよね。このウルバンバ川もアマゾン川の源流の一つで、ここから下流へ行くと、それこそペルー・レイルから見える崖や川沿いの風景とソックリなのです。この辺りはまだ手付かずの部分が残っているので、まだまだ遺跡がゴロゴロしているだろう、と言われている部分です。

途中、食人族の集落を見つけてるシーンがあるけれど、ペルーの民族で、生贄で人間が捧げられていた場所もあったらしいし(記事はコチラ)、そうしたことを思い出しながら、勝手に面白く見てました。また他には、出会った原住民の民族に、牧師が聖書を渡すが、彼らは言葉を記す文化ではなく言葉も分からないため、聖書のありがたみが分からずキリスト教徒を怒らせてしまう、というエピソードがあります。これも実際にペルーの教会や博物館で、そうした記述を発見したんですよ。ああ、ペルーのエピソードだ、これ!って勝手に喜んでました。本当にタイムリーなんですよ。スペイン征服者が夢敗れる映画だなんて。見たかったものの一つ!という感じ。

実際、ペルーに行って思ったのが、「ここの土地を征服したところで、高地ばかり。こんな山ばかりの土地で、歩くだけでもしんどいのに、一体征服したところでどれだけの得があったのだろう?」ということでした。エルドラド自体は、実在しない謎のままですが、一方クスコの街中にはコリカンチャがあります。コリカンチャは、金の分厚い層が建物の上層部分を、分厚く覆っていた美しい寺院。この金の部分に、スペイン人は熱狂したらしい。この金の部分は、ソックリそのままスペイン人に略奪されました。現在のコリカンチャはその下の部分だけが残っています。(現在はサン・ドミンゴ教会になっている)。コリカンチャを見てしまったスペイン人が、金にものすごい執着をしたというのも頷ける。鉱山資源が多く、岩がゴロゴロ転がっている土地ではあるけれど、そのど真ん中にあそこまで美しい装飾のものを見てしまったなら。クスコのその他の遺跡なんかは、現在は原型を留めていないので他には分かりませんが。この辺は、標高が3,600〜4,000近くありますから、山道を行くのがとにかく大変なんですよね。征服者も苦労しただろうな。そこでコリカンチャの金ピカを見たら、人間も狂ってしまいますね。それ以外はゴツゴツした石ころばかりの山道のド真ん中に金ピカの寺院があるのですから。

作品自体は『フィッツカラルド』と全く同じ。でもこちらは、ずっと川の上での撮影です。入江悠監督曰く、「今だったら絶対にやりたくない、最も難しい撮影」。今、ハリウッドで撮ると、俳優が水の中に入ることはすごく負担が大きい、とのことで、余分にギャラが発生するそう。今の時代の映画は、もっといい子になってしまい、ヘルツォークみたいに狂ったことはやらなくなった。普通だったら全くやらないことが全て詰まっている、「それがヘルツォーク映画」、などと言うのです。入江監督本当にいいこと言うなあ。

 

 

※ストーリー・・・
ペルーの奥地へ分け入り、アマゾン河の激流、大自然の脅威を空気まであますところなく捉えた本作品は、困難を極めた。映画の中で、未踏のジャングルを行軍する探検隊一行が荷物として馬や人力で運んでいたのは、実は撮影機材や自分たちの食料であり、他に輸送する手段はなかったという・・・

 

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