85★未熟な犯罪者
’12年、韓国
原題:Juvenile Offender
監督/脚本:カン・イグァン
エグゼクティブ・プロデューサー:カン・イグァン、ヒョン・ビョンチョル
プロデューサー/脚本:パク・ジュヨン
撮影監督:ピョン・ボンソン
音楽:カン・ミングク
キャスト:ソ・ヨンジュ、イ・ジョンヒョン、チョン・イェジン
この作品、結構満足度高いです。それほど韓流映画の好きでない私ですらこう思えるのだから、この作品が大好き、という人はたくさん居そう。「アジアの風」部門でなく、「コンペ」作品にあったから行ったようなものだったけれど、見て良かったと思える作品でした。これは配給付きそうだし、されたら人気出そう。この作品は、TIFFのコンペ作選出を信じているからこそ見たようなもの。浴びるようにTIFFで映画を見ていて、正直TIFF疲れが出てきた頃だったけれど、こういう軽いタッチの作品で気分転換になりました。普通のベタな展開の物語のようで居ながら、ほんの少しのヒネリを効かせていて、これが味のある佳作へと昇華される原因になってるというか。
未成年の犯罪者・主人公の少年は、アホな窃盗で捕まって少年院行き。死んでいたと思っていた母親が現れるも、この母親も息子に負けず劣らずの馬鹿っ母。美人というほどではないけれども、愛嬌があるタイプ。親子がまるで友達みたいにフラフラ、人生舐めた感じで生きていく・・といったストーリー。
『風水』同様に、共感を呼ぶことはなく、人の神経を逆なでするタイプの主要人物。だけど、笑うと意外と可愛かったり、馬鹿すぎるけどそれほどの悪人でもないから、見ている内に何となく許せるような気持ちになってしまうんだよね。騙される方も悪いけど、騙す方も同レベルというか。二人の馬鹿な親子が、「友達みたいな関係で、何となくいいなあ」なんて思えた辺りから、策に落ちてしまう。この辺から物語のドライブがギュンギュンと巧いこと働き出していく感じが、嫌じゃない。
子供を捨てた母親は馬鹿だけれど、馬鹿な男に引っかかってしまったからこそで。再会を果たした息子も、女の子を出産させていたことにショックを受けたりする。もう何が何やら、どっちもどっちで、どうでも良くなってしまう。二人とも人間的な可愛げがあって、自分を棚に挙げて、下手に相手を憎んだり恨んだりしないからこそ、何だか爽やかなんですよね。親子二人が上手く仲良くなればいいなあなんて、いつの間にか応援しちゃったりして。微妙なところでバランス感覚が非常に優れた、結構可愛い作品。
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