82★ティモール島アタンブア39℃
’12年、インドネシア
原題:Atambua 39 ⁰Celsius
監督/脚本:リリ・リザ
プロデューサー:ミラ・レスマナ
撮影監督:グナル・ニンプノ
音楽:バスリ・シーラ
キャスト:グディーノ・ソアレス、ペトゥルス・ベイレト、プトゥリ・モルック
ニュースでしか目にしない東ティモールの映画を見る事のできる、貴重な機会だもの。国名だけで選んだTIFF作品。
’02年の独立後、東ティモールとなった新しい国の、インドネシアとの国境近くの町、アタンブア。とにかく東ティモールの映画ということで観に行った。
「リリ・リザ監督」の名前を聞いて、思わず目元の涼しげな微笑の美しい女性を思い描いていたけれど、出てきたのは、長いカーリーヘアで、頭をクルクルさせた若い男性でした。スクリーン7を「ドデカいスクリーンですね!」なんて驚いていて可愛い。こんな大きなスクリーンで自分の映画が掛けられることは、自分の国では全く無いそうだ。
詩情豊かな東ティモールの美しい自然を捉えた、淡々と進む物語。東ティモールとインドネシアとで2つに分けられてしまった家族の姿を、怒りよりは静かなタッチで描く。言葉中心でなく美しい自然に寄せて描くビデオレターのよう。母の思いも録音されたテープで聞くなど、ナレーションや説明的な台詞でぶち壊しにすることなく描き切ったところが良かった。もう少し政治面を描いて欲しいと私は思ってしまったけれど、監督曰く、そうしたことは喫茶店で皆が毎日のように語っているため、自分の描きたいのはそうしたことではない、との思いが強くあった様子。
それにしても、アダルトDVD(ビデオだった?)を見るとなると、近くの男どもがわんさか集まってしまうのか、とにかく皆で上映会を開いていたところが微笑ましかった。一人でオナニーも出来ない国(笑)。
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コメント(3件)
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あ、確かに。「リリ・リザ」って女性を連想させますね。
この作品、監督がお考えのように政治に走り過ぎなかったのがよかったのかもしれません。どことなく幻想的だったりしましたし。
rose_chocolatさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございます。
社会派作品ではないにしても、東ティモールに関する今が分かる作品だったら良かったのになあ、と思ってしまうのは、芸術作品に対して要求しすぎなのでしょうか?
私は実は仕事で東ティモールのことを扱ったことがありまして、東ティモールの国の映画、というと見てみたくなってしまいました。
自分のお客さんに「東ティモールの映画にこんなのがありますよ」とオススメ出来るような作品ではなかったのが残念です。