81★ニーナ ローマの夏休み
’12年、イタリア
原題:Nina
監督:エリザ・フクサス
脚本:エリザ・フクサス、ヴァリア・サンテッラ
製作:シルヴィア・パトリツィア・イノセンツィ、ジョヴァンニ・サウリーニ
撮影監督:ミケーレ・ダッタナスィオ
キャスト:ディアーヌ・フレーリ、ルカ・マリネッリ、アンドレア・ボスカ、エルネスト・マイエ、ルイジ・カターニ
とにかく全編お洒落さが漂う。物語の展開は特に無く進んでゆくのだけれど、切り取られたようにカッチリとしたフレームが楽しい。この中に住んでいる、瞠目すべき美貌の主人公を見て楽しんでいるうちに、あっという間に時間が経ってしまった。まるでデザイン系アートの展示物がポツリポツリと飾られている、暇な美術館に来たみたい。夏休みで人の居なくなったローマ郊外、とのことだけれども。まるでどこかの裕福な人達だけが住んでいる、デザイナーズハウスの精神病院。人間的な匂いがしない代わりに、絶望も希望もない場所。
主人公の女性が何者なのか、どういう苦悩を抱えているのか、あまり分からないままに物語は進むけれど。心のどこかで旅立ちを予感していて、いつか来る何かを心待ちにしている若い女性。おそらくこの後に、彼女は成長するのだろう。計算され尽くしたフレームは私は嫌いじゃないし、アートっぽいセンスも嫌味な印象は受けないし、そこそこ楽しめた。ただ、私は方向音痴なせいか、建物内部の構造が分からないような映し方は、あまり好きではないのよね。ここの回廊はここに繋がっていて、ここを行くとこの部屋になる、といった連続性が無いと、映画の中で迷子になってしまうw。ここの猿のお部屋はやたら白く映していて、だけどここはどこに繋がっているの?みたいな疑問がいつもいつも湧いていた。非人間的宇宙空間を目指すので無ければ、出来るだけ建物内部が空間的連続性を持った場所であることを、忘れないような撮影の仕方を欲しい・・なんて思ってしまうんですが。それは私が極度の方向音痴であるせいかしら。
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