77★ライフライン
’11年、イラン
原題:Lifeline / Galoogah
監督/脚本/編集:モハマド・エブラヒム・モアイェリ
プロデューサー:ジャハンギル・コウサリ
撮影監督:ナデル・マスミ
音楽:アリ・コハンデイリ
キャスト:ハディ・ディバジ、ラダン・モストウフィ、カムラン・タフチ、スィヤマク・アテラスィ、アリ・オウスィヴァンド
電波塔を立てる男たちがドキュメンタリータッチに描かれたかと思いきや、一人の女性を巡り三角関係に。イラン映画はまるでヨーロッパ。堂々と語られるストーリーには、レベルが高くて思わずグイグイ引きこまてしまう。命を賭して仕事に打ち込む二人の男たちが、一人の女性を巡って地上から何メートルも離れた地点で足場のグラグラする中、バチバチと火花を散らしているのだから、見ている方も危険さを一緒になって感じてしまい、ハラハラドキドキ。二人の男たちの争いが熾烈になればなるほど、観客はいよいよ息を殺して次の展開を待つという次第。上手い!
この二人の男たちというのが面白いほど対照的で、一人は無学なガテン系でとても男っぽくて、だけど女心を扱うことに長けてはいないタイプ。イケメンなんだけど不器用そう。もう一人はガテン系の仕事はあくまでもインターンのため、卒論を書きながら将来はホワイトカラーである学生、この職業の従事はそう長いわけではない。いかにも気の合わなそうな対照的な二人が、地上から何メートルも離れた足場の危険な場所で、命を賭けて自分の恋心のため戦う、この構図が見事。ライバルがいるために、恋心よりはプライドの問題にもなってくるのか、お互い引くわけには行かない。彼らの心理描写にも長けていて、思いは嫌というほど伝わってくるし、何より物語の鮮やかさが印象的でした。公開されるかされないかは分からない、だけどとても良く出来た佳作。予想しなかった作品が思った以上に良いと、得した気分。こういうのが見れるのはTIFFの醍醐味だわー。
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