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72★シージャック

’12年、デンマーク
原題:A Hijacking / Kapringen
監督/脚本:トビアス・リンホルム
プロデューサー:ルネ・エズラ、トマス・ラドアー
撮影監督:マウヌス・ノアンホフ・ヨンク
音楽:ヒルドゥル・グズナドッティル
キャスト:ヨハン・フィリップ・アスベック、ソーレン・マリン、ダール・サリム

ドキュメンタリータッチの、リアリティを感じさせるドラマでグイグイ進んでゆくシージャック。閉塞感を感じる船内の密室劇で、息詰まる緊張感が持続する。なかなか上手く出来た、楽しめる作品。

普通であれば、政府が介入するのかと考えてしまうけれど、一切国は関わりなく、企業と海賊との一騎打ち。この辺、リアリティはどの位あるのかな?と思ったけれど、Q&Aの際の質問に答えて曰く、実際にこうした際に国の介入無しに、企業と海賊だけのやり取りというのは普通にあることだそう。ヨーロッパではこうしたシージャックが問題になっているとか。ただ、私としては交渉の仕方に少し疑問を感じてしまった。料理人とベンと船長の3人だけしか映像には映らないが(他の4人は隔離された状態)、社長は全員の無事を確認しない。料理人一人だけの声しか聞かずに、全員分の値段を交渉しようとする。本来、人質の内誰か一人でも殺していれば、値段の交渉は安くなるはずなのに。まず人質全員の安全を確認して、それから交渉となるのでは?と疑問に思った。それなのにこの社長は、人質全員の安全を確認しないで、まず値段交渉に入る。ここがどうしても気にかかってしまって、私としては評価がかなり下がってしまった。

この作品では、素人を大胆に起用していて、オフィスの中では本物の役者は2人だけだそうだ。特に交渉人は自裁に交渉人を普段やっている人を起用したとか。彼にインタビューをし、演技をしてもらったところ気に入り、出演してもらうことになったらしい。実際に彼は、デンマークの企業の社長がシージャックされた時に事件を担当したとか。(実際にはアジア沖で起こった事件。)海賊役の人たちもアマチュアで、街に居たケニア系ソマリア人の素人さんなんて言う話も聞けた。

この作品は見た人の評価がとても高いみたい。私も密室劇のサスペンスフルな物語は大好き。だけど舞台背景が極めてコンパクトな密室劇だからこそ、どうしても湧く疑問に関しては、脚本中で解決されていないと、納得が出来なくなってしまう。思わず厳しい目線になってしまったけれど、全体的にはなかなか迫力があって面白かった。

 

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コメント(5件)

  1. とりあえずTIFFの記事を溜めたくないんで、順不同で書けるものからどんどん上げてきますね~。
    これは割とあっさりとした印象でしたね。

  2. rose_chocolatさんへ

    こちらにもありがとうございます〜♪
    roseさん本当UP早くてすごいわー。私のトコは、旅行記事はまだ終わらないわ、そうこうする内にホラー特集は始めるわ、さらにTIFFも手をつけて、なんだか混沌としちゃってます・・。

    この作品は面白かったですね。上手くまとまっていたような。




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