64★リヴィッド
’11年、フランス
原題:Livide
監督・脚本:ジュリアン・モーリー、アレクサンドル・バスティロ
撮影:ローラン・バレ
音楽:ラファエル・ジェスクア
キャスト:クロエ・クールー(リュシー)、カトリーヌ・ジャコブ(ミセス・ウィルソン)、マリー=クロード・ピエトラガラ(デボラ・ジェセル)、クロエ・マルク(アナ)、フェリックス・モアティ(ウィル)、ジェレミー・カポーヌ(ベン)、ベアトリス・ダル
『屋敷女』のジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロ監督と言えば、フレンチホラーの最前線。『屋敷女』の与えたインパクトは相当なものだった。
ところが、「まだまだ引き出しはありますよ」と言わんばかりに、前作とは打って変わってイメージの違う今作を出してきた。私はこれを見て、この人達の才能を確信した。前作はまぐれ当たりでは無かったな!と。
今回は、吸血鬼を扱ったダークファンタジー。ゴシックテイストな豪邸の中で繰り広げられる、忘れられた夢のような物語。これを一体、どっから語ればいいのでしょう。ホラーとファンタジーを合体させておきながら、よくある定型的な物語からは随分と離れて、極めて斬新な印象を与えるのは何故なんだろう。おそらく前回と一緒で、同じストーリーでも別の人が撮ったらまるで違う印象を与えそう。演出の仕方と映像の魅力でもって、見たことがないような画を作り上げているといった具合。
屋敷へと誘う丁寧な冒頭部分のわざと凡庸な部分から出発して、屋敷の中に一旦入り込んでしまった後は、いよいよ手腕の発揮どころ。古典的な館の美しさに、蜘蛛の巣と壊れた人形で味付けを加え、さらに奥へと進むうちに見てはいけない呪われたものを発見してしまう。手練手管で全く退屈させず、それなのに眠気を誘うような悪夢と幻想の境目。こんな境地にいつのまにか落とし込まれていて、何度も悪夢と現実を彷徨い続けた。
一つひとつの映像が美しくて、匠の技と言った感じ。うっとりするようなホラーが存在するなんて。ただのホラーというイメージは皆無。こんなにまで魅力的な、妖しいまでに人を惹き付ける世界。
前作は一言で言えば、スプラッタの程度が常軌を逸していた。それだけで見れなくなってしまう人がいたと思う。そのため評価されないかもしれない、そこが私にとっては残念に思えた。あんなにミニマムなシチュエーションを面白く生かした脚本はないのに、スプラッタぷりが常人にはとてもついていけないほど凄まじいものであったから、そこだけの印象になってしまう。逆に言えば、ホラー好きの中でもさらに間口を狭める、カルト度を高める作品だった。今回はそれの逆をやっていて、間口が広がった分、奥へ奥へと誘い込まれた先で、パックリと悪夢が広がる世界。何よりも美しくて、どのシーンもゾッとするほど怖くて、とっても魅力的。
何度でも見たい、魅力満載の悪夢的カラクリ世界。
※ストーリー・・・
母の自殺を忘れるために、介護ヘルパーの仕事を始めたリュシーは、仕事で指導役のミセス・ウィルソンと共に森の奥にある荘厳な古屋敷を訪れる。そこで彼女は、かつては名バレエ教師だったが娘に先立たれ、現在は寝たきりとなった老婦人ジュセルに出会う・・・
2012/10/22 | :ホラー・スプラッタ アレクサンドル・バスティロ, クロエ・クールー, ジュリアン・モーリー, ベアトリス・ダル
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コメント(9件)
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>間口が広がった分、奥へ奥へと誘い込まれた先で、パックリと悪夢が広がる世界。
私のようにホラーを日頃観ない人にとっては、この作品とても理解しやすかったですね。
スプラッタだけだとちょっと厳しいじゃないですか。そこから少し世界を違う所にシフトして、人間の不条理に迫っていた所が好きでした。
>何よりも美しくて、どのシーンもゾッとするほど怖くて、とっても魅力的。
あまりホラーを観ない人にとっては、どぎついのはやっぱり拒絶反応があると思いますので、こういう耽美的な世界観の方が入れますね。
リュシーは単に魅入られたコというだけの設定じゃなくて、彼女自身の心の空洞もまた、この世界を生みだしていたと思いました。
rose_chocolatさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そかーなるほど。私もとっても気に入った作品でした。初めにroseさんがこれ面白かった!っておっしゃってたんですよね〜。私はこの監督コンビの作品だったら絶対見に行くのですが、roseさんの大絶賛は意外で面白かったですよw。嬉しかったし。
そうなんですよね。不思議な視点から描いたホラーで、こんなやり方があったんだ!って驚きました。
本当、耽美的で良かったですよね♪ 彼女自身の心の空洞、なるほどです。ラストのところをおっしゃられてるのですよね。怖いのに美しくて。素敵な作品でした。
こんばんは★とらねこさんコメありがとう!
これね、私はものすごく期待しちゃってたのと、
眠気がきたのでイマイチという判断です 笑
実は私の父の仕事が人形なのと、人形作家の知り合いも多く以前私も仕事に携わってたので人形?出てくる映画にはうるさいです。
でも雰囲気は良かったんですけどネ、、、
デパルマの悪魔のシスター今観直したらやっぱり面白かったですー
今度とらねこさんとぜひホラー談義したいです♪
migさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございます。
眠くなっちゃったんですねー。お父さんの仕事が人形を扱う仕事なんですね!へえ〜。なるほどそれで人形にこだわってしまうというのは納得ですー。
この作品は、あんまりホラーっていう感じではなかったですよね。でも、私としてはホラーっぽくないところが逆に気に入りました。この監督コンビって、相当ホラー好きなはずなのに(元はホラーの評論家)、こういう作品作れるんだなあ、というところに感心してしまって。フランス人ぽい柔軟性、芸術性だからこそ、なんて。
migさん悪魔のシスター観てたんですね。私まだ観てないや、それ。
今度観ておかないとー。
ホラー談義・・周りを置いてけぼりにしそうですねw
そうなんですよー、ティムバートンやマリリンマンソンも来てくれた渋谷の
空間で父のギャラリーあって私以前そこいたのでバートンにも会えたのですー^^
悪魔のシスターとバスケットケースのシャム二本立て観ました♪
オススメですよん。
あ、TB昨日きてたけど二度目きてましたよ〜
ではまたホラー話♪
migさんへ
こんばんはアゲイン♪
へえ!お父さんのギャラリーが渋谷にあったんですね。migさん、いろいろなお話を聞かせてくれてありがとうですー。
渋谷のギャラリーって、もしかしてディズニーストアとか現・渋谷ヒューマックスシネマの近くのところですか?私近くを通った時に、勧誘されたことある!
TBは、なんだかgooブログの人には、二回づつ行っちゃうみたいです。それか時々スパム扱いされて反映されないかのどっちかだったりして。こっちは一度しか送ってないんですよ〜。
あそうそう、今日『危険なメソッド』見た時、migさんが「キーラ・ナイトレイがアゴ突き出して頑張ってた」って書いてあったの思い出して、思わず最初のシーン吹き出しちゃいましたよー。誰も笑ってなかったのに(汗)
ではまたホラーの時に!