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59★クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち

’11年、フランス、アメリカ
原題:Crazy horse
監督/音響/編集: フレデリック・ワイズマン
撮影: ジョン・デイヴィ
製作: ピエール・オリヴィエ・バルデ、フレデリック・ワイズマン
キャスト:フィリップ・ドゥクフレ、クレイジーホースダンサー、アリ・マフダビ、アンドレ・ダイセンバーグ

なんて素敵!エロティックなヌードダンスばかりでなく、見ていて惚れ惚れするようなアーティスティックさに魅了されちゃう。

この作品、予告を見て楽しみにしていたけれど、満席続きで毎週のように振られてしまい(サービスデイ狙いだから余計混雑するんでしょうけど)、いい加減DVD待ちにして諦めようかなあ、と思っていた。確か一旦ル・シネマのラインナップから姿を消していたはずなのに、気づけばいつの間にか復活している!(旅行で一時出かけていました)・・・ということで、一応行くかと腰を上げたのだけれど、これは行って大正解!素晴らしかった〜。

私にとって、フランスで行きたい場所のナンバー1が、ムーランルージュだった。(行った際のレポート)それも、映画の『ムーラン・ルージュ』が大好きだったから。ちなみに私のゼロ年代のベスト。バズ・ラーマン監督による、古さと新しさを混ざらないままにミックスした、異常なまでにテンションの高い、現代最後の愛の物語。(あのシェイクスピアっぽさとMTVっぽさが嫌いな人には嫌いだと思うのですが・・)

そんな憧れのムーランルージュだったけれど、 正直、ここへ行っている場合ではありませんでした!ヌードダンスが見たいなら、クレイジーホースに行くべきだった。ああ知っていたらこちらに行ったのに〜!地団駄を踏んで悔しがってしまった。フレデリック・ワイズマンめー、フランスに行く前に『パリ、オペラ座のすべて』を見てわざわざ予習したんだゾ!何故これを早く作らなかったのだ!


感激した理由はいくつもあるんですよ。まず言いたいのは、「ヌードダンスが、 男性に媚びるものでなかった」ということ。ここが一番気に入ってしまったポイント。ヌードダンスは、本来ちょっと馬鹿馬鹿しく陳腐で、場末感が漂っていたりする。何よりも男性を喜ばせてナンボ、というのが第一の目的。

去年公開された『バーレスク』が、好評を得たのは、エロティックなショーが、むしろ女性のカッコ良さを強調するものだったからだと思う。単にポールダンスのようなものでなく、美と音楽で人を圧倒するエンターテイメント。

クレイジーホースのショーは、まさに「アート」と言えるものだった。女性の美を全面に感じさせ、ダンスのコリオグラフの面白さを堪能する。照明や音楽を使った、ただの「ショー」が、ここまで劇的に違うものへと感じさせるものに成りうるとは!総支配人のアンドレ・ダイセンバーグ氏は、シルク・ドゥ・ソレイユで長年働いていたという人ということで、確かにシルク・ドゥ・ソレイユと似た部分が多くありそうだ。同じ「体を使ったアート」でも、シルク・ドゥ・ソレイユはサーカス、クレイジーホースはヌードダンス。2つとも自分たちの劇場を持っている。だがアートのレベルで言えば、こちらの方が上だ。明らかに。

しかし、シルク・ドゥ・ソレイユと比べられたら、クレイジーホースの舞台演出・コリオグラファーのフィリップ・ドゥクフレ氏にはヘソを曲げられてしまうかも。彼は’92年の冬季オリンピックの開会式&閉会式、’07年のラグビーワールドカップの開会式を監督してもいる。

さらに、芸術監督のアリ・マフダビ氏は、「フェリーニとファスビンダーとマイケル・パウエルに影響を受けている」という。「フランス政府は、もっと奨励すべきだ」と。これが、本当に大げさに聞こえない。ショーを見れば見るほど、魅了されてしまった。ショー冒頭「Toxic」(曲のタイトル)一つにしても、原曲はあのBritney Spearsのポップソングとは思えないぐらいのお洒落さ!さすがはフランスだ。何もかもフランス人の手にかかると、こんなにお洒落になっちゃうんだ・・。呆然。

「25歳を過ぎた女性は、自分の美に責任がある」という美術監督、アリ・マフダビ氏。彼の美に対する金言が面白い。名言がポンポン飛び出す。たかが美術監督と侮るなかれ、彼の言葉選びは圧倒的に情熱的。溢れ出すエナジーが凄い。DVDになったらもう一度見たいし、本場のクレイジーホースには、次回、絶対行きたい!

※ストーリー・・
フランス、パリ。高級ブランド店がひしめくシャンゼリゼ通りの近くにある“クレイジーホース“。そこで、行われるのは魅惑のエンターテインメントショーだ。カメラは、舞台が出来上がる過程やダンサーたちの素顔、美麗なショーのすべてを捉えていく・・・

クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち@ぴあ映画生活

 

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コメント(5件)

  1. これは素敵でしたね。というか、可愛らしいのよ。映像が。
    こういうエロかわみたいなのは女性でも楽しそうだし。クレイジー・ホース、行ってみたくなるよね。

    >「25歳を過ぎた女性は、自分の美に責任がある」
    がぁぁぁぁ~~~ん。 ハンセイします。。。

  2. rose_chocolatさんへ

    こちらにもありがとうございます〜♪
    そうなの〜。これ、エロいばかりじゃなくすっごい可愛くって、超ステキでした!この作品、私はすっかりお気に入ってしまいましたね〜。想像以上。

    ヒャハハハ!がぁぁ〜んて、ウケましたw。
    て、笑ってる場合ではな〜い!私も反省しなくっちゃ〜。今からでも間に合うかしらん(無理)?

  3.  こんばんは!
     クレイジーホース、行きたいですよね。今までフランスに行きたいなんて事を考えた事すらなかった。だってフランスワインもあまり好きじゃないし、フランスより南米のチリワインとかそっちの方が好みで・・・と書き始めると変な方向に脱線するので止めときますが(笑)、クレイジーホースでショーは観たい。
     ラスベガスにもあるらしいですけど、やっぱフランスで観たいですね。
     とらねこさんが書いていらっしゃる「男性に媚びていない」という部分、僕もここが好き。別にフェミニストだってことはないけれど、女性の体を美しく見せる。そこに重きを置いたショーだという事にフランスらしいアートな雰囲気を感じると言いますか(笑)
     実際、あまりまな板ショーとかそういったものよりも、天然素材を生かしたショーの方が僕は観ていて楽しいですし。照明などもよく考えられているし、影を上手く使った見せ方で女性の丸みを上手く表現しているのも素晴らしく、おそらく酒呑みながら観るにはこっちの方が良いのかなと。
     やっぱ、クレイジーホースには、一度は足を運びたいですね。
     そう思うって事は、観光映画としては大成功って事なのかな?

  4. 蔵六さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

    行きたいですよね〜!クレイジーホース。観光映画として成功ってことですよね、間違いなく!
    私は、あの美術監督が言うように、この作品が作られたのは、もっと人々にクレイジーホースを知らしめるためだったと思うんですよ。
    だってライバルのムーラン・ルージュの方は、あの映画のおかげで、私のようにムーラン・ルージュに行きたいぃぃぃ!てなった人も大勢居たでしょうし。そうした観光客を全部ムーラン・ルージュに取られるのが、悔しくてしょうがなかったんでしょうね〜。だって実際、ショーの様子をチラっと見ただけでも、こっちのクレイジーホースの方が何倍も素晴らしいですもん、実際にムーラン・ルージュに行った私からすると。あっちは、とてもくだらなくて、正直言ってガッカリレベルでしたw。アート性に関してはゴミ程度、というか皆無でした!ブハw
    今度フランスに行ったら、絶対クレイジーホースに行きたいです!




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