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42★おおかみこどもの雨と雪

’12年、日本
監督・原作: 細田守
脚本:細田守、奥寺佐渡子
製作指揮: 城朋子
製作: 藤本鈴子、齋藤佑佳他
エグゼクティブプロデューサー: 奥田誠治
音楽:高木正勝
キャスト:宮崎あおい、大沢たかお、黒木華、西井幸人、大野百花

夏休みの大本命!と言ってもいいかも。爽やかな感動作で、胸がいっぱいになる。忙しいママたちも小学生を連れて、こういう作品を観に行って欲しいなあーと切に願う。

丁寧に描かれた物語が、とても好印象。お母さんがお父さんに出会った時の話。大学に入ったものの勉強せずに遊んでばかりいる日本の大学生とは、全く様子の違う若い頃の父。冒頭に語られる二人の若い頃の話も、キュンとする素敵なもの。

母の苦労が本当に苦しそうで、誰もが応援してあげたくなる。人里離れた山奥で暮らす必要があるとは言え、廃屋を改築して自ら心地いい家を作り、作物の実らない土地を一から起こして、作物が実るまでにする・・・。どれも、都会育ちの私達にはとても出来そうにない。おおかみ母の底力。

母も子供も、一緒に成長する。そうだよ、子育てって、子供だけが成長するものではないんだよね。それをこんな風に瑞々しく描いた作品て他にあったかしら?子供を育てるために、本来母親はこんなに苦労するものなんだよ‥。子供から見れば、こんな風に見て取れるはず。一方、母からしてみれば、「親の心子知らず」。そう思えるストーリーかもしれない。学校に行くと、急に物の見方が変わる。そう、子供は、親の知らないところでこそ、真の意味で育っていくんだ。これもまた事実だと思う。

この作品が描いたことの中で、観客にとって受け入れることが難しいのは、何よりラストの「子離れ」かもしれない。「きちんと育てる」ことよりも、ずっと難しいのが「子離れ」だ。日本社会では「見事に子離れしましたね」と褒めてくれる人は誰も居ない。赤ちゃんの頃は過保護に育てることが良しとされる(通常の育て方をしていないということで“育児放棄”と見做される)。子供も独身を理由に、いい年をして親元にパラサイトしている人も。「可愛い子には旅をさせろ」。昔の人は賢かったなあと思う。親から離れることで、子供は立派に育っていくけれど、子供にべったりの母親には目を離すことが本当に難しいと思うんだ。

動物たちよりずっと長く、子育てをする人間たち。私たち人間にとっては、いつ子供から離れるべきか、その時期をよく分からずにいる。子供は知らず知らずのうちに、勝手に成長していっている。保護者とは全く無関係のところで。

モンスターペアレントに送る、「子育てはむしろモンスターに学べ」(?)という話。

「子育て」。きちんと育てるより、「子離れ」の方こそ、今や人間にとっては大変。
そんな現代の我々へのメッセージ、しかと届きました。

映像も素晴らしくて感動に拍車をかける。「実写ではなく、アニメだからこそ描けるもの」。これらをきちんと表現出来ているところがまたすごい。人間になったり狼と人間のハーフになって駆け回ったりは自由自在。こういうおかしな設定は、日本のアニメならではだと思う。何故か私も、子供の頃は「半分人間で半分獣で」というものに憧れた。なんでだろ?私の想像の世界の原点は、うる星やつらだったり、ときめきトゥナイトだったりするんですけどねw。(半分鬼の見た目とか、半分吸血鬼とか、本当に憧れたなあ〜。)

 

※ストーリー・・・ 人間の姿で暮らす“おおかみおとこ”に恋をした大学生の花。やがて妊娠し、雪の日に女の子の、雨の日に男の子の《おおかみこども》を産む。姉弟は雪、雨と名づけられる。ところが、ある日突然“おおかみおとこ”が帰らぬ人に。遺された花は子供たちを人間として育てるか、おおかみとして育てるか悩み、山奥の古民家に移り住む。日々成長する快活な雪と内気な雨。小学生になった2人にそれぞれ転機が訪れる・・・

おおかみこどもの雨と雪@ぴあ映画生活

 

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コメント(6件)

  1. ども♪
    よそん家の本棚が気になるひとには見応えある作品でしたwww
    花の本棚にシュタイナー本あったのは、わたくしも、ん?と思たんですけど案の定こんな感想の方もいたりして面白ぇなぁと
    http://inspirace.expressweb.jp/wp/
    いぁー、ひとの本棚見るのは楽しいですけど、自分ちの本棚はひとには見せられませんねwww

    「子離れ」クライマックスで終わるとこが作品としては絶妙なんですが、行く末に思いを馳せると、ちとビターかなぁと思ったり…
    人狼の血は雪の方が繋いでいくんですかねー
    雨の方は配偶者という点では絶望的じゃないかと思うんすけどね

  2. みさんへ

    こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
    へえ、このブログの記事すごく興味深いですね!さすがみさんが教えてくれることは面白いなあ。おおかみ母、花の解釈に当たり、本棚の中身が必要とのこと、なるほどーと思います。
     私も実はメモに残していたんですよ。ルドルフ・シュタイナーの『神智学』、エンデ『モモ』、『ぐりとぐら』、『100万回生きたねこ』、『小さいおうち』。!特にシュタイナーの『神智学』に関しては、大写しでハッキリタイトルが映り込んでいましたね。私は育児本は全く興味がないので覚えなかったんですが、その他の本に関しては映画館の中でわざわざメモりました。でも、シュタイナーを読んだことなかったのと(一般教養程度にしか)、高野文子の『黄色い本』は知らなかったので、ブログに書くのは省略してしまいました。私最近、余計な文を書かずに綺麗にまとめることばっかり考えてる。私の感想は、マトモになり過ぎました。ここ近年の傾向ですよね。うーん、反省しなければ。

     「愛書婦人会」さんの記事本当に面白かったです。こういう何も囚われてない自由な感想いいですよね。完全にファンタジーの世界を現実に置き換えて反論している部分なんて、私だったら絶対書けないと思います。↓

    >とりあえず信頼できる周囲に打ち明けたほうが生き残れるのでは?」ということ。医療も受けやすくなるし、貴重なサンプルとして、少なくとも生活は保障されるはず。1人で子供2人抱え込んで予防接種や健診、現代医療を全部拒否するほうがよほどリスキー。

     彼女が自身でも下の方で書いておられるように、人狼との婚姻は、花の絶対的孤立状態を創り出すための状況設定ですよね。花は、本からの知識のみで、現代社会生活の全てを否定した生活を体現している。同時に彼女が究極的に無垢な母親存在として描かれていることに、世の母親たちは複雑な思いを抱くのでしょうね。まあ、無理もありません。子育てを一から捉え直してみようというのは物語の核心でもあるのですが。
    上記の文は、彼女が現代社会生活と現代医療を全く疑っていないことを感じさせますね。私だったらたとえば、いじめ問題一つ、学校という制度に自分の教育を託す、それだけをとってみても疑問や不安を感じざるを得ないのです。

     私が花を怖いとは思わなかったり、特別変人と思わなかったのは、私の憧れを体現している部分があるからだと思います。『玄牝』を見て以来、自然分娩で子供を産みたいと本気で思っているし、人里離れた場所で子育て出来るなんて、本当に羨ましい。都会でいじめられっ子に育ったらどうしようとビクビクしながら子育てするより、理想的な環境に思えちゃって。むしろ、公園デビューしてママ友作って・・なんてそっちの方がウンザリ!w

    >雨の方は配偶者という点では絶望的じゃないかと思うんすけどね

    ですよねw。雨の配偶者はもしかしたら本物の狼に出会えたりするのかな。今度は人狼の「狼部分」の血が濃くなっていいかもしれませんね。

  3. ファーストカットからダラダラ涙が止まらなくなったのは初めての経験でしたよ。
    アニメの概念を変える恐るべき映画でした。
    >雨の配偶者・・・紀州犬とか・・・日本狼の血を引く犬ちゃんはダメでしょうか。
    世代を繰り返してまた花みたいな人間の娘を落とすとか。

  4. ノラネコさんへ

    おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
    ノラネコさんはこの作品、随分気に入られたようで!私の場合、ファーストシーンから良く泣いてる、というのは良くあることだったりします。もうウミガメの産卵みたいに良く泣いてるんですよ。

    >雨の配偶者・・・紀州犬とか・・・日本狼の血を引く犬ちゃんはダメでしょうか。
    なるほど!調べてみたら狼と犬の混血って結構居るんですね。「狼犬」って言われてて、全世界に居るんだ。75%以上だとハイブリッドウルフと言われるんですね。『バルト』も狼犬だったのかー。
    日本オオカミは絶滅してしまったし、狼犬で手を打つしかないな。

  5. なるほど。「子離れ」の問題ですか。
    こちらについては先ほど、いただいたコメントのお返事として
    拙ブログに書かせていただきました。
    お時間のあるときにでもよろしくお願いします。

    こういう優れた映画は、
    人によって見方がいろいろあるものですね。
    ぼくの場合は、
    生きとし生けるモノの「育」を描いた映画…、
    そういう気がしました。
    その「育」は「育てる」もあれば
    「育つ」もある。
    その両方に共通しているのは「生命」。
    この映画は、生命の輝きに満ち満ちた映画。
    だからこそ、生き生きと観る者の胸に迫ってくるのではないでしょうか?

  6.  えいさんへ

    おはようございます♪コメントありがとうございました。

    私もこの作品は、「育」をテーマとした物語だと思いました!
    私が一番この作品で感心したのは、「育」の一番最後に、「育の卒業」、つまり親から子への「子離れ」がある、そう描いたところだったのです。
    いざ、子どもについては、教育ということばかり熱心に語られるけれども、そこに「教育の終わり」=「子離れ」について、あまり熱心に語られて来たことはないんじゃないか、と。
    鋭いなあと本当に感心してしまいました。
    子離れに関する問題があるからこそ、その心情を理解出来ない母親もいるのではないか、そう思いました。

    えいさんがおっしゃった、花が雨の失踪のことばかり気にかけていた部分、私もそこが気になりました。
    私もえいさんと同様、母親にとっては、男の子の方がどこか特別だということ、そう思いましたよ。雪に関しては無事なものと勝手に判断して、雨だけを心配する母親の姿に、あの時疑問を感じざるを得ませんでした。
    男の子には、どこかで父親の面影を見てしまうのでしょうね。父親とは死別したままでしたから、余計雨のことを気にかける気持ちがあったのかも。雨はお父さんによく似ていたから、雨にお父さんを思わせる服を着せていたんですよね。




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