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41★ヘルタースケルター

’12年、日本
監督: 蜷川実花
製作: 和崎信哉、豊島雅郎
エグゼクティブプロデューサー: 那須野哲弥他
プロデューサー: 宇田充他
原作: 岡崎京子
キャスト:沢尻エリカ、大森南朋、寺島しのぶ、綾野剛、 奥村伸一、水原希子

見終わった感想は正直なところ、「ああ、壮大な排泄物のようだった」と思ったけれど。 こうして作る作品が茶の間の話題にのぼり、賛否両論を巻き起こすって事は、さぞかし小気味がいいだろうなあ。と思ったりする。沢尻エリカの「役に全身体当たり!」という様は、自分の女優生命をかけたかのような気迫に満ち満ちていて、それは天晴(アッパレ)と言わずにはいられない。よく言われるような、「彼女が自分自身を演じているかのよう」かどうかは分からないけれど。(沢尻エリカがどんな人かを知ってる訳でもないし。)ただ私に関して言えば、「別に」発言は、特にムカついたりはしなかった。つまらない映画に出て、その映画の出来が良くないからと、ふてくされた態度を取るなんて、女優として誇りがあるからじゃないですか?なんであんなに皆が怒ってたのか分からない。でも、「エリカ様」と実家で母や姪にリアルに呼ばれていたのには、閉口しちゃったな。

今回のこの作品、やたらと世間を騒がしているようだけれど、『さくらん』を撮った蜷川実花監督でなければ、私は見に行かなかったと思う。観客目線で娯楽映画を作るっていうのは、こういうことなんだろうか。「見たいものを見せてあげる」。これは映画の中にある台詞だけれど、蜷川実花のこの騒々しい大作のコンセプトであったかもしれない。冒頭でバーンとオッパイを出し、後半では忘れた頃に尻が丸見えになる。確かに沢尻エリカの胸も尻もとても綺麗だ。男性から見ればそれだけで「見た甲斐があった」ということになるのだろうか。

私は、’90年代に岡崎京子の原作漫画を読んだことがあるので、内容について知っていたためか新鮮さを感じなかった。そのため点が辛くなるのかもしれない。元々漫画である原作にリアリティを付け加えるのは難しいのだろうか。せっかく上映時間が長いのだから、もっといろいろ盛り込んで欲しかった。そうすれば、物語の随所随所で襲ってくる「嫌というほど長い中だるみ」ぐらいは防げたかもしれない。やりたいことは分かるのだけれど、足りない部分がたくさんありすぎる。

角度を変えるなら、せめてファッションが見て楽しめるものであれば、また自分の印象が違ったかもしれない。ずっとコギャル風メイク、これではさすがに見てる方が飽きるよ。コギャルが出始めた時代であれば、目新しかったかもしれないけれど。現代にこれでは・・・。たとえばレディ・ガガのような、人が見ていて楽しめるファッションやアートっぽいファッションだったら、他何も変えずとも映画はずっと退屈しないものになっていたかもしれない。なんて。どう?

この作品の描こうとしていた「女たちの持つ美に対する執着心」。これだけでもきちんと描けていれば、絶対面白くなっていたはず。勿体無いと思う。せっかくもっと表現出来そうなテーマなのに、この辺をもう少し考慮することは出来なかったんだろうか?女性の影の部分を色濃く打ち出す、原作の持つ感触とはこの映画はちょっと違っていた。同じ台詞を使えば同じ作品が出来上がるとは限らないんだなあ。

ただただ薄く引き伸ばしたような物語に、話題性のスパイスを足した、それだけのレシピにしか思えなかった。辛口で申し訳ないけど。前作『さくらん』同様、色とイロの洪水ではある。相変わらず映像美はほとんど感じなかった。カメラの動きは以前と同じく死んでいて、動かせたいものだけ動かしているイメージ。せっかくの沢尻エリカの体当たりが可哀相だとすら思った。主人公のキャラクター造形があまりにも浅いため、泣き叫んだり、機嫌が悪そうに終始イライラとする、この演技の繰り返しで飽きてしまうのだ。彼女はもっとちゃんと演技の上手い人なのに、この作品を見た限りでは「寄り目が上手い女優だ」としか思えなくても仕方がないのでは(笑)

 

※ストーリー・・・
芸能界のトップモデルに君臨するりりこは、その美貌で金・名声・愛を好きに手に入れてきた。しかし実はすべて全身整形によって作られたもの。決して知られてはいけない秘密と手術の後遺症、そして芸能界のストレスによって、りりこは次第に追いつめられ・・・

ヘルタースケルター@ぴあ映画生活

 

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コメント(2件)

  1. ボク、見る前に原作を読み返して、、、と思ったらいちばん下に積んであったから断念。映画を見てからひっぱりだして読み返したら、まあ、原作に忠実でしたね。タイガーリリーとか。

    原作にはなかったあの記者会見のシーンのバカらしさ。つーかマンガっぽさ。マンガ脳。

    あと水族館のシーンも、ふたりの会話のいちばん盛り上がるとこで、うしろの魚群をブワーって動かさないとダメなのに。黒澤明の時代ならあたりまえのようにやってるちゅーの。黒澤明になれないのなら、おとくいのCGつかえちゅーの。

    それはそうと、原作マンガに 『りりこハリウッドへ!』 ってニュース記事があって、そこでチョイスされている映画監督の名がロマン・ポランスキー!! そこらへんに岡崎京子先生のセンスのよさが。。。 

    『R・ポランスキー監督の新作にりりこが出演するらしい』 沢尻、がんばって、それ実現させろ!!

     

  2. 裏山さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    あ、君も原作読んでたのね。私は友人の彼氏が、「これすっごい面白いよ!」っつって、岡崎京子の本を3,4冊一気に貸してくれたのでした・・。
    記者会見のシーンは、沢尻にとってはさすがに、記者会見て嫌な思いでのものなんだろうなー。と勝手に推測。確かに、すごく漫画っぽいね・・・。
    水族館のシーンで魚が動く、っていうのなかなか面白いかもね。ねーあそこってさ、どこだっけ?品川だったっけ。私行ったことあるんだけどさ。八景島かサンシャインじゃないよね。
    へえ、原作の漫画にポランスキーの名前が出てきてたんだー。沢尻は確かに、もう日本を出るべきかもね!




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