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27★SHAME シェイム

’11年、イギリス
原題:Shame
監督: スティーブ・マックイーン
脚本: スティーブ・マックイーン、アビ・モーガン
撮影: ショーン・ボビット
音楽: ハリー・エスコット
キャスト: マイケル・ファスベンダー、キャリー・マリガン、ジェームズ・バッジ・デール、ニコール・ベハーリー

 

まず、この手のエロを描いた作品て、すぐさまレッテルが貼られてしまうんだなあ、という感想。「SEX依存症の男を描いた物語」という、映画宣伝の説明文で煽られるせいもあるのかもしれない。だけど、私はこれには少し言いたいことがあって。

私に言わせれば、主人公の男は、SEX依存症というよりも、皆が持ってる性的感情を持っている人と、さしたる違いを感じなかった。あるいは、「SEX依存症」という言葉そのものが大げさで、そしてつい『ブラック・スネーク・モーン』のような映画を思い出してしまうせいもあるのかもしれない。あの映画の中のクリスティーナ・リッチのように、ハァハァしながら、「欲しいの!」みたいに変貌してしまうような病気かと思っていたわけです。しかし、ただ本物の「SEX依存症」を見たことがないせいだけなのかもしれない。

私にはむしろ、都会の孤独のジャングルで生きていく、エリートサラリーマンの姿を描いた作品に思えた。それどころか、何となく共感しながら見てしまった。自分が東京生まれで、耐え難い孤独を抱えながら生きてきたからか。誰しも、性生活は見せないものじゃないですか。オフィスでは普通の人の仮面をかぶって、まっとうに仕事をしているのだけれど、一皮剥がしたら・・という奴。誰のどんな生活を描いたとしても、極秘に密着取材したら、ある程度こんな姿になるんじゃないか、と思うんだけど。人間の内面を引っぺがして描いてみたら、普段はオフィスや周りの人間には見せないような「恥ずべき姿」を、誰もが兼ね備えた人間なんじゃないか、と。

だって、性欲って、その姿を思い描いてみると、「愛」よりむしろ「排泄」に近いじゃないですか。
自分には、少なくとも、思い当たるところがありますよ!!セックスなんて、排泄だ!!
でしょ?・・・みんな素直になれば、そんな獣みたいなことやってるんですよ。
大体、オナニーが終わった後に、どんな気持ちでいるか、惨めさを感じたことのない人はいるのだろうか。同様に、セックスした後に、惨めさを感じたことがない人間なんて居るのかなって。

いくつか素晴らしいシーンがあって、それらの一つひとつを思い出している。主人公が、夜突然走りだすシーン。あのシーンて変わってるんですよね。主人公が夜のNYをひた走る姿を追いかけるのだけれど、不思議なことに、カメラは主人公を、画面の20〜30%端っこに映したままにするんですよ。主人公の姿を、真ん中には副えないのね。このカメラワークはむしろ、走る主人公を映しているのではなくて、走っている夜の都会に焦点が合っている。あのシーンを見た時に、おおっ、こういう走るシーンは見たこと無いぞ、と、いよいよ膝を乗り出してしまった。都会、そうだよな。オマエのせいだよ、って思ってしまった。都会に棲息する人間の孤独。人間がすぐそこにいるのに、だからこそ距離感を感じる、あのビルの谷間の棲息者の、どうしようもない寂しさ。

この先、ネタバレなんですが*********





妹との関係、これはサラっと描いているけれど、実は恐ろしい一言がありましたよね。「私たちは、悪い人間じゃないわ。間違った場所に居ただけよ。」終わった時に、あのことについてはそれ以上触れなかったな、とみんなピーンと来る。

女をハンティングして、だがそれ以上人と決して関わらないようにする。まるで何かを忘れるようにストイックに狩りに精を出す。そうした主人公の安寧な生活が、「妹によって」あそこまで、気持ちが脅かされるのは何故なのか。ただ単に自分のマンションに居着いている、それだけが原因ではないのは、当然気づくけれども、その理由が分からない。そして、分からないまま終わってしまう。しかしおそらく、主人公と妹との間に何か不穏なものがあることは明確である。この映画のタイトルの「本当に人には言えない恥ずべき秘密」が何なのか、終わる頃にはもう分かっているという段。

あと、冒頭の映倫のボカシのかぶせ方には、誰もが疑問を抱いてしまうのが、この作品。主人公が素っ裸で部屋の中をグルっと一周する。ボローンとデカイのが一瞬映って、思わず「オオッ!!!」と驚いてしまった割に、他の大したことのないシーンでボカシがかかっていて、全くもって意味不明w。それ大丈夫でこれダメなんだ?っていう。でも、このシーンもなんだか忘れられないシーンなんですよね。グルリと家の壁づたいに主人公が歩く、全くカメラを変えずに一つのフレームで抑えてる。こういうシーンて何か好き。

 

※ストーリー・・・
人との繋がりを一切持たず、喜怒哀楽の感情を排して生きてきたブランドンは恋に落ちることも趣味に没頭することもなく、仕事以外の時間は全てセックスに費やしていた。ところが、恋人に捨てられた妹のシシーが突然転がり込んできてから、日常に変化が訪れる・・・

SHAME-シェイム-@ぴあ映画生活

 

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コメント(4件)

  1.  こんばんは!
     おおっ、またまた過激なことを書いていらっしゃる!
     セックスなんて、排泄だ!!
     素晴らしい歯切れの良さ(笑)!
     確かに自慰行為の後は一寸惨めな感じはありますよね。トイレットペーパーで先っちょを拭っている時なんて、何だか物悲しいものがあって・・・って人様のブログにこんなこと書いていいのかどうか迷いましたが、「またアホなこと書いてるな」くらいで気にせずスルーしてください(笑)

     映画は結構気に入っています。それぞれの解釈が出てくる映画だと思うので、ああだこうだと酒でも呑みながら語り合うのはもってこいの映画ですよね。
     僕ももやもやとしたブランドンがマラソンに出かける件は好きです。とらねこさんのように映像分析はちゃんと出来ていませんでしたが、やっぱ悶々としたら走りたくなるものなのかなと思ってみたり。
     でも、流れゆく夜の町並みは美しかったですね。過去の出来事も夜景同様に流れゆくまま消え失せてしまえば良かったのかもしれませんが、そうはいかないですしね。

     冒頭のオールヌードで電話が鳴り響く部屋の中をブラブラウロウロってシーンもなかなかのインパクトでした。暈しはかかっていたけど、あれって本物なんですかね?
     この手の描写を観ると『ブギーナイツ』のラストショットが頭をよぎってしまい、本物かどうか気になってしまいます。
     別にその手の趣味はないので「暈しなしで見せろ!」って気分にはなりませんが・・・何だか意味のわからないコメントを残して、ごめんなさい(笑)

  2. 蔵六さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

    リアルでは言いたいことをほとんど言えないシャイな子なので、ついついブログでは言いたいことを言ってしまいますw。蔵六さんも、素直にいろいろお話してくれてありがとうございますw。
     解釈的な話をするのは基本的に躊躇いがあるのですが、時にネタバレでいろいろ語り合うのも本当に楽しいことですもんね。そうですね、酒でも呑みながらいろいろ話すのは楽しそう。

    ブランドンが走り出すシーン、いいですよねえ。分析ってほどでは全然無くて、ただ思うがまま書いてるだけだったりもするんですけど。
    冒頭のシーン、いいですよねえ。あそこ、下半身にボカシがかかってないでしょ。その後のシーンはかかってるのに不思議ですよね。蔵六さんの記憶の中では曖昧になってましたか?私は、忘れまいとしっかと目に焼き付けましたw。いやあ、私はあれはきっと本物のミヒャエル・ファスベンダーのブツだと思ってますyo! ブギーナイツのマーク・ウォルバーグのは、CGなんでしたっけ?

    P.S.言い忘れちゃいましたが、悦凱陣、あの後呑みましたよ。教えていただいた2日後ぐらいに、なんとうどん屋にあったんです!新宿の「麺通団」というところでした。まさか、仕事中である日中のランチ時に飲むわけにはいかないから、我慢したんですが、その翌日に別の焼き鳥屋でまた出くわし、ようやく呑めました。

    この映画にわざわざ繋げる必要性はないんですが、あえて言えば、外人の巨根を見て喜んでいたなんて、「喜び外人」じゃないですか。。つまらないギャグで締りが悪いな。。すみません。自分のブログなんで許して下さい!蔵六さんのブログにはさすがに言う気になれなかったw

  3. とらねこさん☆
    TBありがとー
    過激なコメントのやり時も笑える~~

    都会の寂しさを性欲で埋める感覚が良く判らないので、四六時中sexの事で頭がいっぱいな点でもう依存症と言うべきかなぁーと。
    お部屋でブラブラのシーンより、便座を上げずにオシッコしたところで度胆を抜かれた私です(爆)

  4. ノルウェーまだ〜むさんへ

    こちらにもありがとうございます♪
    いつもTBできなくてすいませんw…

    >四六時中sexの事で頭がいっぱいな点でもう依存症と言うべきかなぁーと。

    四六時中頭の中でSEXのことが浮かんでしまうのって、案外健康な男女なら普通のことなのでは…
    なんて思っている私は異常なんでしょうか?!
    まあ、それを無理矢理な形でも実行に移すのと、頭の中の妄想だけで済むのとは違いますし。
    むしろ、精神医学的にはそうしたSEXを、何かの代替行為として行うことが問題と言えるのでしょうね。
    例えば、自分の寂しさ、コンプレックス、子供の頃に受けた精神的な傷…
    自分を大事に思えないからこそSEXをしてしまう人って、案外多いんですよ。
    でも、こういう人が病気扱いをされているかと言えば、必ずしもそうとはいえず。

    SEXを頻繁に行うことで精神的な穴埋めをしたり、そして今度はそれへの嫌悪感を反芻して再び自己嫌悪に陥る…。
    性行為と精神病とが悪循環的に繰り返され、そこから逃れ得ない人。
    それがSEX依存症なのだろうなあ。と、今では思っています。




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