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16★人生はビギナーズ

’10年、アメリカ
原題:Biginners
監督・脚本: マイク・ミルズ
製作: レスリー・アーダング、ディーン・ベネック、ミランダ・ドゥ・ペンシエ、ジェイ・バン・ホイ、ラース・ヌードセン
撮影: カスパー・トゥクセン
音楽: ロジャー・ネイル、デビッド・プラマー、ブライアン・レイツェル
キャスト: ユアン・マクレガー、クリストファー・プラマー、メラニー・ロラン、ゴラン・ビシュニック

この作品以上にセンスのある映画って、そうはないかも。人生について一番重要なエッセンスを、こんな風にさりげなく、かつポイントを突いて上手に語るなんて。とってもハートウォーミングな映画でした。たくさん大切なことを教えてもらった気がする、でも、全く説教臭くなく。絶対に忘れてはいけないことを、等身大の物語に載せて。

タイトルが出るラストは、分かっていたはずなのに、思わず「あっ」とむせび泣きそうになってしまった。ギュッと心を掴まれた!最後まで、憎たらしいほどセンスがいいんだから、参っちゃうな。このラストの上手さのおかげで、「今年大好きになった映画」の殿堂入りに、余裕で繰り入って来た。

末期がんを宣告された父の、突然のゲイ・カミングアウト。どうやら、残りの時間を精一杯生きようと努めているらしく…。自分らしく生きる素敵な父を、クリストファー・プラマーが本当に魅力的に演じていて、本当に見事!この役が彼でなかったら、ここまで素敵な物語に思えたかどうか?というぐらいの目ざましい脇役ぶり。(今年のオスカーは彼が獲りました。念のため。)

時間軸はほんの少しだけ交差している。父を無くす前とその後と。主人公は純粋だけど、器用なタイプではなく、しかし決してスレている訳ではない。変人な訳でも。気づいたら少し周りに取り残されてしまっていた、というような、ほんの少しだけ内向的なタイプ。恋人は出来るけれども長続きしない。誰しもがオリヴァーになる要素を持っている、ぐらいの等身大さ。

恋人のメラニー・ロランがまた、本当に魅力的なんだ!!元々綺麗な人ではあるのだけれど、今まで見た彼女の出演作の中で、一番魅力的に思える。主人公が「38歳にして恋に落ちるなんて」と言わせしめるぐらい、彼が夢中になる気持ちも分かる。余計なクチを叩くことは全くないのに、言うべきことは不思議と印象的。ミステリアスでもある。彼女の品の良さと個性を感じさせる。思わず私まで恋しそうでしたよw。こんな人になりたいなあ。彼女の台詞も好きだ。

一番この映画で好きだったのは、その行間の描き方かもしれない。主人公の感じる父の恋人だったゲイに感じる、距離感。大好きな恋人に対して抱く、恋を恐れる気持ちからつい取ってしまう、ほんのわずかな距離感。父親が亡くなって初めて感じる、寂しさと喪失感。人と人との距離感、微妙な「間」を、絶妙に描き切っているところが心にグッと刺さる。

誰しもが「人生の初心者」。みんな後悔しながら、間違えてしまった時は軌道修正しながら、それでも後悔だけはしないように精一杯生きる・・。当たり前なことをここまで素敵に描く、最高に素敵なお話でした。

 

P.S….気になった字幕。laryngitisは「咽頭炎」じゃなくて「喉頭炎」でした。

 

※ストーリー・・・
38歳独身のオリヴァー。彼はある日、末期の癌を宣告されている父・ハルから「私は、ゲイだ」と告白される。その日からどんどん変わっていく父に、オリヴァーは不安を抱きつつも、感化されていた。しかし、ふたりの理解が深まる中、父の死が訪れてしまう・・・

人生はビギナーズ@ぴあ映画生活

 

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