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1★永遠の僕たち

’10年アメリカ
原題:Restless
監督: ガス・ヴァン・サント
製作: ブライアン・グレイザー、ロン・ハワード、ブライス・ダラス・ハワード、ガス・ヴァン・サント
製作総指揮: エリック・ブラック、デビッド・アレン・クレス、フランク・マンクーソ・Jr.
脚本: ジェイソン・リュウ
撮影: ハリス・サビデス
音楽: ダニー・エルフマン
キャスト: ヘンリー・ホッパー、ミア・ワシコウスカ、加瀬亮、シュイラー・フィスク、ジェーン・アダムス、ルシア・ストラス、チン・ハン

 

これは去年のベスト3に入れた、大好きな作品。何と言うか、自分の感性にピターっとハマるものがあったから。「あー、いいよね、こういうの」っていう、センスに満ち溢れてる感じ。狙ってド真ん中を射抜かれてる訳なんだけど、それが少しも嫌ではなくて。もう少し下手くそにやられてたら、鼻白む部分があったかもしれない。でもそうじゃない。この透明感にはヤラれてしまった。

もし自分が何か作品を作るとしたら、こんなのがいいな、というものの中に、「自分の初恋の話」ってのがある。すごいいっぱい語りたいのだけれど、数分で語れるものではなくて、数時間ぐらいかかってしまう、そんな話(笑)。自分のその頃の世界観や悩みや、言葉に出来ない数々の感情や、上手く説明出来ないこと全て。それらついて、いつか語ってみたいな。大事な友だちにすら、上手く伝わるか心配で、どこから話していいかよく分からない、そんな話を。

思春期の頃って、自分と気が合う人に出逢えたらもう嬉しくて、途方もなく感激してしまわなかった?周りには分かってくれない人が多かったり、鈍感だったり馬鹿ばっかりでウンザリする一方、自分の気持ちが通じる人に出逢えたら、もうそれが奇跡みたいに感じれる。自分の感性というものだけで生きているみたいな思春期。誰か特別な一人と気が合うのが嬉しくて、自分の世界みたいになってしまう。そういう出会い。自分も彼らと同じように、死についてばかり考えて居たんですよね。人より敏感な感性のせいで、そうそう気の合う人が現れない。熱心に本を読んだりして、自分の世界に居るのが好きだったりした。

この作品をね、「難病モノ」と分類するのは本当にやめて欲しいなと思っちゃう。ああもう!そんな陳腐なものじゃないってば!いや、「青春映画ですから」って言ったら「それ陳腐じゃないの?」って言われちゃうのかな。自分にとってはジュブナイル・恋愛映画は、とことん純粋であって欲しい性質(タチ)。それを考えたら、その若いままの恋で終わらなければいけない。大人の時期を迎えたりしないからこそ、未熟な愛が完成する。

で、そういうものって何か、って考えたら、『ロミオとジュリエット』なんですよね。あれもやはり、未熟だが完璧な恋は、家と家とのしがらみという障害によって盛り上がり、完成する。その後の時代が彼らにないからこそ、「完成された愛」といえるんですよね。そもそも、愛という「壊れやすく移ろい易いもの」は、その完成を迎えたその瞬間に終わることこそ、美しい。こう考えると、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を超える恋愛モノは、未だに無いんですよね。この作品でもアナベルが似たようなシーンをイーノックに演じさせようとするシーンがあるでしょう?

これ以上話を逸らすのはやめておこうっと。登場人物に戻ると、イーノックは死についての考えに取り憑かれた男の子だけれど、アナベルの方は死に至る病を抱えていながら、ものすごく今を精一杯に生きている女の子。人生の意味を彼女なりに一生懸命掴もうとしているし、その最後の時を楽しもうとすらしている。女の子ならではの、不思議な感性やみずみずしさがいっぱいで眩しい。

イーノックの髪がクシャクシャだったり、定まらない表情の幼さを見て、あーさすがガス・ヴァン・サントだなあ、なんて思った。若い男の子ならではの愚鈍さを感じさせるタイプの子はNGだし、かと言って綺麗すぎるハンサムな男の子には持ってなさそうな内面を感じさせる、微妙な顔。イーノックをどんな顔の俳優に選ぶかはきっと悩んだんじゃないかな。ミア・ワシコウスカはすごくドンピシャな透明感がいいけれど、彼女と並んでこの作品の雰囲気を浮き立たせることが、このデニス・ホッパーの息子、ヘンリー君にも出来たと思う。

加瀬亮もなかなか良かったな。この世界にとてもよく馴染んでいた。彼は帰国子女だったんですね。知らなかったけれど。ただ、広島長崎のアメリカ人の扱い方には、初めは相変わらずカチンと来るものがあった。チェスの際に「ヒロシマの報復ね?」などと軽口を叩いたり、ハロウィンの仮装で、日本の特攻服に目に×印(死亡を意味する)なんかのブラック・ジョークにはギョっ。でも、ああいったものは、わざと描いていると思っていいのよね?

ガス・ヴァン・サントは、『ドラッグストア・カウボーイ』からリアルタイムで見て来たし、『グッド・ウィル・ハンティング』以降は途中少し飽きた時代もあったけれど、この作品で完全に自分の中では決め打ちでしたよ。『ミルク』も大好きだったなあ。この作品のラストの描き方に、『ミルク』同様涙を誘われてしまった。

 

※ストーリー・・・
両親を失った交通事故で臨死体験をした少年イーノックには、彼にしか見えない青年・ヒロシという話し相手がいた。死に囚われ、他人の葬儀を覗く日々を送るイーノックは、ある日、余命3ヵ月と宣告された難病の少女・アナベルと出会う。3人は不思議な絆で結ばれていくが・・・

永遠の僕たち@ぴあ映画生活

 

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コメント(13件)

  1.  こんばんは!

     えっ、加瀬亮って帰国子女だったの??全然知らなかった。
     それはさておき映画自体は観終わった後から少しづつジワジワと込み上げてくるような感じだったなというのが個人的な感想です。
     で、これは完全に余談話なんですが、この映画のエンディングの直後に自分の頭の中に流れた音楽がCoccoの『遺書。』なんですよ。まぁ、好きな曲なんで似た雰囲気を持つ映画を観ると勝手に頭の中が一人有線放送状態になってしまうのですが(笑)
     イーノック君もこの映画のラストのあとにきっと誰かを好きになることもあるのでしょう。でもきっとアナベルやヒロシとの出会いは将来忘れないと信じております。
     『遺書。』の歌詞の中にあるイーノック君にとって、彼女との想い出に浸るために彼が一人で泣く場所はどこなのかな?葬儀場?両親の墓?それとも山の中にある小屋?
     個人的にはあのチョークで地面に二人の人型を書いたあの場所であってくれれば良いななんて勝手に夢想した次第。何だかまとまりのない話ですいません。 

  2. 蔵六さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    気に入ってもらえて良かった!私は一気に気に入っちゃうタイプではありました。今まで何度も見たことのある展開なのに、それでいて個性がちゃんとあるっていうか。不思議な魅力のある作品でした。
     Coccoの「遺書。」という曲は知らなかったので、早速Youtubeで見て歌詞も読んでみました。すごい、ぴったりですねこれ。Aメロのメロディラインや雰囲気のままだったら、このままこの作品に使えそうなほどじゃないですか?私だったら、この曲は全編アコギとかでやって欲しかったような気もする。一人有線放送状態ってなんか分かる気がしますw。彼女のことを思って泣く場所・・ああ、いいですね、そういう発想。チョークで型を書いた場所、それ賛成!あのシーン大好きだったんですよ。
     うん、イーノックは今後きっと、ヒロシとアナベルの分を背負って生きていくんでしょうね。。アナベル一人ではなくて、ヒロシの分もっていうところが、とても意義深い気がしてなんだか切なくなる。
     とりとめのない話大歓迎です!こういう映画でいろいろ話せるのって嬉しいなあ♪

  3. やー。これよかったね。じつは初見ではなんだ 『難病もの』 じゃんって思っちゃったんですけどね。あぶねー。いっしょに見にいってたら喫茶店で大ゲンカですよ。なんかもう1回みてみようかなって、みてみたら 『難病もの』 じゃなかったという。初見に弱すぎ。

    ロミオとジュリエットごっこは、急に切腹しだすとこでしょ。もう、ぜんぶのシーンがいいわ。小屋で寝てるとこ見つかったときにいうセリフとか。

    余談ですが、青山真治監督の 『東京公園』 との類似点は誰か考察してるのでしょうか? あれはあれで凄まじいミステリー映画だったわけですが(シベ超ばりの)。。。

  4. ウラヤマさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    ハハハ!確かに難病モノには違いないんですけどね^^; いやあ、君と喧嘩をしたことは今までもないじゃないですかw。まあ、意見が割れることはありますけど。。
    今回は珍しく気が合ったなあー^^* って喜んでたのにぃ。良かったでしょ。
    そうそう、私も小屋で寝てるとこ見つかった時に言う台詞好き。「助かったぞ」って言うのw。二度見ても超ウケた!で、次のシーンが仲よさげに朝帰ってくの。あの馬鹿馬鹿しいカッコで。すげーいいよね。
    葬式のあと、外でバッタリ会った時に、アナベルが片目つむったような表情するのも好き。まだ心を許してなくて、お互いちょっと緊張感があるってのを演出するためか、しきりとミア・ワシコウスカが片目つむってる演技するのよね。あれは、ガス・ヴァン・サントの細かい演出と見た!こういう風に、全てのシーンが計算されつくしてたね。素晴らしい映画だったな。




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