地球の最後の男 #71
’11年、イタリア
原題:the Last man on Earth
監督/脚本 : ジャンニ・パシノッティ
プロデューサー : ドメニコ・プロカッチ
原案/コミック : ネッスーノ・ミ・ファラ・デル・マーレ・ディ・ジャコモ・モンティ
撮影監督 : ヴラダン・ラドヴィッチ
音響監督 : アレッサンドロ・ビアンキ
キャスト:ガブリエーレ・スピネッリ、アンナ・ベッラート、ルカ・マリネッリ、テコ・チェリオ、ステファノ・スケリーニ、ロベルト・エルリツカ
今回のTIFFで、私のベスト3を挙げると、『J.A.C.E ジェイス』、『トリシュナ』、そしてこの作品なんですね。『J.A.C.E ジェイス』は一番ハードでサスペンスフルな物語。『トリシュナ』は一番メジャーになりそうな、文芸派の佳作。で、この『地球の最後の男』はと言うと、一番の変わり種。
映画の説明としても、ジャンルもどう言えばいいのか、よく分からないぐらい。宇宙人が出てきたり設定もだいぶオカシイので、SFとも言えなくもないかな、と考えたけど、それよりはコメディと言った方が近いぐらい。じゃあ、コメディと言い切ってしまっていいか、笑えることを前提に作られたか、と言えば、もっと広義に人間ドラマ、と言った方が近いんじゃないか・・などと、ウヤムヤ、ムニャムニャと、言葉を濁したくなるような。要は、ジャンルの幅にハマり切らない作品なんです!で、そういうものこそ、私の好みだったりする。
TIFFであることを良い事に、多少ネタバレしてしまうけれど、宇宙人はそのまんまの姿で出てくるんですね。「すわ、『サイン』か、『ドリーム・キャッチャー』か!?」とプッと吹き出したくなる瞬間もあって、この二つが好きな人には是非勧めたい。じゃあキテレツだから可笑しいのか、と言えばそうではなくて、あくまでも人間の可笑しみを描いているから、なんだか心にしっくりと来てしまうんです。
宇宙人が来ているというニュースがTVで流れる。じゃあ、世界がひっくり返るのか、と言えばそんなことはなく、人間は意外と普通に生活していたりするんですね。確かにその通りかもしれない、なんて思う。3.11の震災とあれほどの大きな悲劇で、価値観が変わるのが普通だろう、と思ったら、今までと何も変わらないかのように振る舞う人が、東京にはなんと多いことか。放射能の話も人事のような東京人が、たくさん居るんだもの。宇宙人が来ても世界がさほど変わらないという描写は、個人的にはしっくり来た。
主人公のルカは、近所の気になる女性に、猫の死体をゴミ箱に捨てたと言うと、「あなたおかしいんじゃない!?」と言われてしまう。そんな非モテの男が、ゲイのストリート娼婦に、自分は宇宙人かもしれない・・・、などと打ち明ける。このシーンはとてもキュートで思わず噴き出してしまう。実は、この主人公は、驚くほど純粋なんですよね。とてもシャイで、そしておそらくは童貞。ちょっと不器用なだけの、いたって普通の男なのに、そんな人が世間とズレたように映ってしまう世界。
なんだか個人的にすごくハマってしまう部分があって、とても気に入ってしまった物語でした。たぶん、主人公の男が、自分の友達に似ているからだと思う。青森出身の、しゃくれアゴの、図体のデカイ男。友達の彼氏でした。心はとっても美しいのに、おどおどしていて、大人しくてキュートなところがそっくりで。思わず人事に思えなくなってしまったな。
この話がとてもしっくり来る、大好きだ!って人は、もしかしたら私だけなんだろうな・・。なんて考えてしまう辺り、自分も宇宙人的なのかしら!?(笑)
※ストーリー・・・
イタリア。地球に上陸したいとコンタクトをしてきた宇宙人が、あと数日でやってくるというとき。怖がる人、大多数のあきらめている人、ほんの一握りの楽しみにしている人。女性とうまく付き合うことのできない孤独な青年と、地球にさりげなくやってきた宇宙人の訪問を受ける青年の父親・・・
2011/11/07 | :SF・ファンタジー TIFF, イタリア映画, ジャンニ・パシノッティ
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