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J.A.C.E ジェイス #68

’11年、ギリシャ、ポルトガル、マケドニア、旧ユーゴスラビア、トルコ、オランダ
原題:J.A.C.E.
監督 /脚本: メネラオス・カラマギョーリス
プロデューサー:メネラオス・カラマギョーリス、フェニア・コソヴィツァ
撮影監督 : ヨルゴス・フレンジョス
美術 : イリアス・レダキス
編集 : タキス・ヤノプロス、ラビス・ハラランビディス、パノス・ダウルジス
作曲 : フリストス・デリヤニス
音響 : マリノス・アサナソプロス
キャスト:アルバン・ウカズ、ステファニア・グリオーティ、イエロニモス・カレツァノス、アルギリス・クサフィス、コーラ・カルヴーニ、アキラス・カラジシス、ディオゴ・インファンテ

こんなに象に熱い思いを込めちゃう映画は、『マッハ!!!!!!』の次にはこれしかない。

ギリシャの中でも複雑な政治上を抱えた、バルカン半島を背景に、裏には臓器売買などを扱う大きなマフィア組織があり、孤児になってしまった孤独な運命の主人公を中心にしたミステリー。複雑この上無いプロットの上に成り立つ、主人公の激動の人生。目の前で殺された叔父(J.A.C.Eにとっては父親だと思っていた人)の遺言により、言葉を一言も喋らないまま大人になる少年。途中、サーカス団に所属してみたり、ゲイクラブと親交を持ったり、様々な人の手を介して成長していく。彼は一切喋れないのだけれど、寡黙であることは逆に、少年の辿る運命の行き先で、彼が生き長らえるための武器であるかのように感じ始める。

一切喋らない彼が、どうやってそこまで大きな組織に対抗していくのか、姿の見えない組織の黒幕は何者なのか、それらが少しづつ分かり始めるところが異常に面白い。何がどう複雑に絡んでいくのか、終盤になるまで全体像が見えない。少年も行き当たりばったりに生きていながら、拭い切れない哀しみを抱え込んでいるような、何かを超えてしまったような、そんな表情が印象深い。特に、J.A.C.Eの意味が「Just Another Confused Elephant」であると分かる瞬間を描いた後、泣けるんですよね!!物語の色彩がより濃く、深く感じさせる。

物語は社会の闇の部分を描いているけれども、エグい描写が多いかと言えば、そんなことは全くない(ので安心して!)。マフィアが臓器売買を扱っている辺り、最近多いなあ、と思える部分もあるけれども。よくあるタイプの物語であるかのように感じさせず、どこか新しい感じを思わせるのは何故だろう?

ティーチインでは、監督のメラネオス・カラマギョーリス氏と、製作のフェニエ・コソヴィツァ女史が来ていた。監督が若いのに驚き。
監督曰く、バルカン半島は第二次世界大戦後、ギリシャとアルバニアに分かれてしまった。J.A.C.Eもいつもどこに行っても外国人であるけれど、そうしたアイデンティティの不安定さというものが、バルカン半島を象徴してもいる、という。そして、ここまで複雑な物語が、一体どこから着想を得ているのですか?という答えに、「ホメロスやオデュッセイア、またはギリシャ悲劇のような、複雑な物語に慣れ親しんできているのがその理由かも」と答えていた。

この作品は、どうにか公開にこぎつけて欲しいな。でも、ここまで複雑なプロットだと、観客がついていくのは難しいのかしら。シネマライズとか、イメージフォーラム辺りでかかったら結構入りそうだけどなあ。

※ストーリー・・・
ギリシャ系アルバニア人の子供ジェイスは、里親家族が虐殺される現場を目撃する。そして、物乞いから臓器売買まで様々な目的で子供たちを海外に“輸出す る”残酷なギャングに捕らえられる。その後、アテネに辿りつき、暴力で殺されるのが運命だと思わざるをえないような世界で、通りの隅で物乞いをしたり、少 年院で恐怖を味わったり、裏世界のパトロンに仕えたりする。この映画は虐待、殺人そして恐怖が蔓延する暗黒の世界で、必死に“家族”と自分の居場所を探し 求めるジェイスの生き様を追う・・・

J.A.C.E./ジェイス@ぴあ映画生活

 

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