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浄化槽の貴婦人 #67

’11年、フィリピン
原題:The Woman in the Septic Tank
監督 : マーロン・N・リベラ
脚本: クリストファー・マルティネス
製作総指揮:マーロン・N・リベラ、クリストファー・マルティネス、ジョサベス・アロンソ
撮影監督 : ラリー・マンダ
美術 : ノーマン・レガラド
編集 : アイク・ヴェネラシオン
音楽/作曲 : ヴィンセント・デ・ヒサス
キャスト: ユージン・ドミンゴ、JM・デ・グズマン、キーン・シプリアーノ、カイ・コルテス、ジョナサン・タジョアン

フィリピンのインディペンデント映画の映画祭である、シネマラヤ映画祭にて、ニュー・ブリード部門(新鋭監督作部門)グランプリ、他4作品受賞。

ちょっと変わったキテレツな物語と言えばいいのか、ベタな展開と言ってもいいのか?なんだか懐かしいような、それでいてイキの良い感じのする、好感の持てる作品でした。「いいぞー、シネマラ屋!」などと言いたくなる気分に。今後もチェックしよう。

似ていると言えば、パン・ホーチョンの『AV』。映画を作る映画で、新進気鋭の映画監督たちが、「フィリピンの現実を伝える、今こそ見るべき、本当の映画!」を作ろうと奮闘する物語。というのは設定で、やることがちょっぴりズレてたり、思うような方向にどうも行かなかったり、アイディア一発で空回りしたり。映画の中でもその辺りが映像として組み込まれていて、「じゃあ、こうしてみよう」といきなりシーンが変わる。ミュージカル調になってみたり、設定がガラっと変わって少女が少年に変わったり、主演女優を取っ替え引っ替えしてみたりもする。

面白いのは、主演女優を獲得する部分だ。フィリピンで有名なコメディ女優である、ユージン・ドミンゴに役を依頼する。パン・ホーチョンの『AV』同様に、本当の女優さんがこれを演じている。ユージン・ドミンゴは、スラム街で悲惨な生活を行う、リアリティ溢れる役を演じさせる予定であるのに、実際はものすごい豪邸に住んでいて、「ドミンゴ邸」の豪奢さはハンパない。小太りな彼女の全身写真が貼ってあったり、彼女の3種類の演技テクニックを披露する部分などは、途方もなく可笑しくて、笑い転げる。この辺りから、この映画のコメディっぽさが上手いこと回っていく感じがある。これがラストに繋がる辺りも見事だ。

要は、本物の映画を作ろうとする、ってそのこと自体が難しい。資金も足りなかったり、頑張ってやっていこうとする中で、全くこうしようという方向からはズレてしまったりもする。その中で、何とかやっていこうとする、そういう若いパワーが弾けているところが面白い。

ユージン・ドミンゴも、よくあるTVの出演に飽き飽きして、「本当の映画に出たい」という思いはちゃんとある。ところが、彼女が「こうしてはいかが」、と投げかけるアイディアの全ては、完全に映画をダメにしてしまう。お涙ちょうだいの、ソープオペラも甚だしいお寒いものになってしまう。インディペンデント映画が好きな人たちであれば、きっとこの辺りも笑えるはずだ。愚痴るばかりでなく、ここを笑い飛ばそうという感覚がなんだかいい。

 

※ストーリー・・・
本作は、野望あり、情熱あり、だけど勘違いの多い3人の監督たちのある1日を描いている。彼らはスターバックスで手早くプリプロを始める。そして、主演女 優のミラ(ユージン・ドミンゴ)に挨拶に行き、主要ロケ地であるごみ捨て場脇の不法占拠地へ視察に行く。自分たちには素晴らしい脚本と、夢を実現させるエ ネルギーとパワーがあると信じている。彼らが知っているほとんどの監督と同様、彼らも自分たちの文化の本質である“貧困”を描く脚本を考えていた・・・

浄化槽の貴婦人@ぴあ映画生活

 

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コメント(2件)

  1. とらねこさーん。
    何かblog新しくなりました?
    これシンプルでいいですね。

    TIFFではなかなかお会いできず残念~(同じの観てたこともあったみたいですが)。 またぜひぜひ。
    TIFFで面白いのは、その人が鑑賞しようと選ぶ作品とか感想がほんとに人それぞれってことですよね。 本作なんかは都合悪かったり他とかぶったりで見なかったのですが、こうして拝読するとなかなか面白そうじゃないですか。 この作品日本にも来るといいなあ。

  2. roseさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    そうなんです、ブログのテンプレート新しくしたんですよ〜。気づいてくれてありがとうございます!これ、サッパリしていて見やすいでしょう?気に入ってま〜す。

    ねー、本当、roseさんとTIFFでお会いしたかったですね!また機会があれば是非!
    TIFFの映画選びは、本当個性が出ますねえ。私は結構、今年のコンペは気に入りました。サクラグランプリの『最強のふたり』は公開してくれるといいなあ。
    そうそう、これ結構良かったですよ。特にラストはすごく面白いんです、場内爆笑してました。ただ、個性が強いので、人によってはイマイチに思えてしまうかも・・。途中中ダレもありますし。でもそれも含め、手入れがあまりされてない感じがして、新鮮でした。




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